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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第10時限目 融解のお時間 その10

「それでですね、あのパッドの特長はですね――」


「あ、ああ! ええっと、よ、良いものということは良く分かりましたので!」


 このままだと、学校の授業よりも講義が長引いて、いつまで経っても話が終わらなさそうな気がしたので、申し訳ないけれど、強制的に話を打ち切る。


「あ、そうですか? まあ、胸のサイズアップダウン、下半身用に限らず、人工皮膚というか、何かしらパッドとかを合成する必要があるものがあれば、お手伝いは出来ますよっ。もちろん、出来ないものもありますが……」


「あ、ありがとうございます」


 この人、良い人なのだろうけれど、ちょっと暴走するタイプなんだなあと思うと同時に、周りを見ずにやりすぎてしまう辺り、桜乃さんのお母さんなんだなあというのはよく分かる。


 ……私自身もあまり他人ひとのこと言えないけれど。


「あっ、長居してすみませんねっ。そろそろ研究室に戻りますので、また何かあればご連絡ください」


「はい、よろしくお願いします」


 私がそう言ってから、後で登録しておこうと私が先程受け取った電話番号に視線を落とすと、その視線を何故か意味深に捉えたらしい桜乃母は、恐る恐るというか、聞きづらそうに質問してきた。


「あ、えっと、やっぱり若い人はあれですか、連絡はコミューのチャットの方がいい感じですかっ?」


「え? コミュー……あ、ああ、あれですか」


 そういえば、中居さんや岩崎さんたちと買い物に行ったときにそんなのに登録したっけ。


 中居さんを探すときには役立ったけれど、あれ以降一切活用していないなあ。


「……というか、あの、コミューってそんなこと出来ましたっけ?」


「はい、出来ますよ? あれ、小山さん、コミューって使ったことないですかっ?」


 目をぱちくりさせながら、桜乃マザーが疑問を投げかけてくるので、私は否定する。


「いえ、してはいるんですが、あまり利用していなくて……というかまだ登録して1、2ヶ月とかそんな感じです」


「そうなんですかっ。若い人は全員使っているものだと……あ、でも華奈香ちゃんもまだ登録してないみたいですし、若い人でも案外使っていない人は使っていないんですねっ。あ、あっ、えっと、悪い意味でじゃないですよっ」


 慌ててフォローの言葉を、語尾にくっつけた桜乃母は、 


「もし良ければ、若い人とのコミュー仲間はあまり居ないので、登録しちゃいましょう、そうしましょうっ」


 と私にスマホを出すように言って、結局その場で桜乃さんのお母さんの番号を登録した。


 なんというか、控えめなのか積極的なのか、良く分からない人だなあ。


「あ、オッケーです、オッケーですっ。じゃあ、コミュチャで送ってみますねっ」


 完全にコミュチャとは? という疑問符が立ち上がっていたのだけれど、


『どうですか?』


 スマホ上部に新着情報がぺこん、という音と共に表示され、その表示を触って開いたところで、ああそういえば片淵さんと繭ちゃんが教えてくれたアレか! と思い出した。


「どうですかっ?」


 ただ今回は今までと違い、なんと書かれた通りの言葉が発声までされた。


 ……いや、単純に目の前の文章作成者が同じことを喋っただけなのだけれど。


「大丈夫です。ちゃんと受信されました」


「良かったですっ。今後、こちらからの連絡はコミューで送りますねっ。そちらの方が、小山さんもいつでも確認出来ますしっ」


「あ、はい」


 正直なところ、電話でもこのコミュチャでも不都合は無いのだけれど、確かにこの方がいつでも見られるから都合は良いのかも。


「それではーっ」


 手をひらひらさせながら、桜乃さんのお母さんは足取り軽く帰っていった。


 う、うーん……桜乃さんもそうだけれど、中々に個性の強い感じの人だなあ。


 さっきのコミュチャというアプリを閉じつつ、私は思い出し苦笑いをしたけれど、ふとさっきみゃーちゃんから桜乃さんのお母さんにも連絡がないという話を思い出し、ちょっと表情が引き締まる。


 みゃーちゃんがもし本気で引きこもっているのであれば、責任の一端は私にもあるかもしれない……いや、間違いなくある。


 そもそも、園村さんと接触してしまったのは私の行動が迂闊だったことが原因だし、むしろ終着点としては良い方向に働いたのもあるけれど、みゃーちゃんにとっては自分が呼ばなければ、とか吸血鬼探しをしようなんて言わなければ、なんて思っているのかもしれない。


 正確な年齢は分からないけれど、どうやらみゃーちゃんは見た目通りの少女であることは、あの天才少年少女特集の話題を出した際の不機嫌そうな表情でほぼ確認済みと言っていい。


 だとしたら、彼女が賢い分だけ自分を責めてしまっているおそれは十二分にある。


 私だって、転校してからだけでもいっぱい失敗しているのに、あの子が1人でそこまで背負う必要なんてない、心配しなくたって良いんだって言ってあげたい。


「うーん……」


 どうにか、彼女と連絡を取る方法が無いかと考えるけれど、私よりも付き合いの長いと思われる桜乃さんのお母さんすらみゃーちゃんと連絡が取れないというのに、せいぜいここ1、2ヶ月で知り合ったばかりのみゃーちゃんに連絡を取れるわけもない。


 ……いや、あのクラスメイトロボットの月乃ちゃんに尋ねてみたら?


 ちゃんと受け答えのプログラムが作り込まれていたら、もしかすると……。


「よしっ」


 

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