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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第9時限目 旋律のお時間 その36

「ただ、この方法って数学とか物理とか、ある程度パターンマッチングっていうか、公式とかを繰り返し当てはめるテストで、かつ範囲がある程度狭いテストでは有効なんだけど、国語みたいに読解力が関わる問題はこのままだと難しかったりするんだよね」


「うー、国語かー……国語は現代文も古文も駄目ー……」


 うーうー言いながら岩崎さんが頭を抱える。


「ま、でも国語は先に問題を読んで、どんな質問かを見てから本文を読めば、大体解けるっていうのは昔から良く言われるから、国語は大丈夫だと思うけどなー。あ、後大抵そのままの単語が出てこないことが多いってのも良く言われてたような」


「……良く言われるんですか?」


 小声で正木さんが私に尋ねてくるから、私も小声で答える。


「どうなんでしょう……? でも、確かに私も問題文を先に読むようなことはしてます。その方が重点的に読む場所を決められるので、問題を解くときに楽かなと思って」


「そうなんですね。じゃあ、メモしておきます」


 咲野先生の話はまだ続いてるみたい。


「国語はさておき、さっき言った繰り返し勉強法で1番難しいのは、学力テストみたいな幅広い範囲の問題が出てくる場合なんだよねえ」


「あれ、でも24時間以内に復習しておけば良いって」


 岩崎さんが反論するけれど、咲野先生はいやいやと首を横に振る。


「あくまで24時間以内に復習したら知識が深まる、というのはあるんだけどさ。以降忘れなくなるというわけじゃなくて、その次に復習するまでの期間が非常に伸びるっていう話だけなんだよね。確か24時間以内に復習したら次は1週間後、更にその次は1ヶ月後とかでコンスタントに復習したら、最初に勉強したときと同等の知識がすぐに得られるよ、っていうお話しなんだけど、そこまできっちりしてる子だったらそもそもテストで慌てないだろうし」


「……それはごもっとも」


 それが出来ないからこうやって一夜漬けとまでは言わなくとも数週間漬けで勉強しているわけだし、私だってそこまで過去の復習までは出来ない。


 苦笑した咲野先生は、


「だから、予習復習って大事なんだよね。アタシ的には、折角授業で時間掛けて覚えたんだから復習をしっかりして、知識を定着させた方が良いと思ってるんだよね。もちろん、授業の内容をスムーズに頭に入れるには予習もした方が良いと思うんだけどさ、高校生なら遊びたいじゃん? だったら、どちらかに注力しないと駄目なわけよ。だから、どちらかというと復習に力を入れた方が良いんじゃないかなー。予習はほら、最悪授業始まる直前にぱらぱらっと開いて、何か分からなさそうなところだけチェックしておくとかだけでもかなり違うしさ」


 と立て板に水とはこのことだっていうくらい、ぺらぺらと話を続ける。


「……なんか咲野先生が先生みたい」


「でしょー? ……ってそれどういうことさ!?」


 私が何気なく口から落としてしまった言葉をしっかりキャッチして私に投げ返してきた咲野先生。しまった、思わず心の声が出てしまった。


 一瞬だけ眉を吊り上げたけれど、咲野先生はすぐにまた笑顔に戻った。


「まあ、アタシもテストとかは大嫌いだったし、適当に済ませたいなーって思うタイプだったから、何か効率的に勉強を済ませたいタイプだったんだよね」


「あー」


 ほぼ同時に私、岩崎さん、片淵さんが「それ分かるー」的な声を反射的に出してしまい、


「何、その”あー”って! 今日皆酷くない!?」


 と頬を膨らませつつ、隣に居た私の頭をぐしぐしと掻き乱す。


「ちょ、ちょっと先生! やめっ……」


「あ、パワハラだー、体罰だー」


「違うから! これは愛情表現だから!」


「これが可愛がりというやつだよねー」


「それも違う!」


 確かに先生が先生しているという言い草は酷いけれど、咲野先生もやっぱり色々経験してきたんだなあ。


「んまー、本当は何ていうか、先生というよりはおねーちゃん的な存在になりたいなーっては思ってたんだけどね」


 頭くしゃくしゃ攻撃を止めた先生は、机に肘をついて言葉をまた続けた。


「お姉ちゃん、ですか」


「そうそう」


 私の勉強机に置いていた缶コーヒーを取って、ビールでもあおるみたいに飲む咲野先生は、


「アタシは一人っ子だったからさー。お姉ちゃんとか妹とかに憧れてたわけよ」


 そう言って、咲野先生は思い出すように目を細めた。


「まー、残念ながらどっちも手に入んなかったんだけど」


 あはは、と笑い飛ばす。


「話が長くなっちゃったけどさ。ま、アタシの言うことを信じるか信じないかは皆次第だけど、さっき言ったみたいに同じ問題を繰り返して解法をじっくり覚えて、翌日にやり直す。テスト期間は来週後半だから、出来れば来週頭にもう1回復習した方が良いと思うけど、そこは任せるー」


 コン、と飲み干したコーヒー缶をテーブルに置いて、


「ちょっとコーヒーの缶捨ててくるから、各々勉強始めちゃって。よろしくー」


 ビシッ、と何故か額辺りにピースサインを作って笑いながら、先生が部屋を出ていった。


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