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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第9時限目 旋律のお時間 その26

 私は現在の悩み、片淵さんが寮に来て一緒に勉強をしているけれど、本当に今の勉強方法で良いのか分からないという疑問をぶつける。


 私の話が終わるまでじっと目を瞑ったまま聞いていた咲野先生は、深い深い溜息を吐き出してから言った。


「……こう言っちゃ何だけど、小山さんって後先考えないで突っ込むタイプだよね」


「……はい」


 ぐうの音も出ないほどの正論。


 説明しながら、自分自身でもそう思った。


「確かにアタシも助けてあげられるところは助けてあげるって言ったけど、完全に売り言葉に買い言葉で行動した上、自分の力で解決出来ないってことでしょ?」


「……はい」


「反省しなさい」


「はい」


「……ふふ、なんてね」


 うん、と満足げに笑った咲野先生は、


「まーでも、うん。自分がやっている方法が正しいかどうかが分からない、だから誰かに相談したいってのは悩める高校生としてはあるべき……というかあって当然の姿なのかもね」


 また小さく笑ってから、咲野先生は言葉を更に続けた。


「そういえば、小山さんはどういう勉強してるの?」


「えっと……取ったノートを読み返して、分からなかったところは教科書も読み返して……という感じですね」


「なるほどねえ。でも、教えるときはそのままの方法を教えなかったんだ。何で?」


「えっと、それは……片淵さん、記憶力は良いみたいなんですが、集中力が続かないので、長々と教科書やノートを頭から順に読むのはあまり得意じゃないみたいで」


「あー、なるほどねえ。アタシもそうだったそうだった」


 歯を見せて笑う咲野先生に、私は再度言葉を継ぐ。


「だから、まずは勉強に抵抗が無くなるようにって思って、色々工夫しながら勉強に興味を持ってもらおうと思ってたんですが、ちょっと時間が掛かり過ぎているというのもあって……」


 授業中の雑談内容を共有する、という手も授業を真面目に聞いていなければ分からないし、そもそもそのときの授業内容を想起することも無いから、ほとんど意味が無かったなあ。


「確かに、今まで勉強嫌いなコに突然、勉強を好きになってもらうなんてのは難しいからねえ」


「そうですよね……」


「よし、状況は大体分かった。それなら、正しいかどうかは分からないけど、アタシが過去何回か受けた資格試験のときとかに、短期間で結果が出た方法なら教えられるよ」


「本当ですか?」


「ま、学校の勉強だと微妙に適用出来ない教科があったりするし、他の人でも同じ結果が出るかは分かんないけど、今のやり方よりは結果だけなら出るかもね」


「教えてください!」


 どうにかなるかもしれない、と分かった瞬間に思わず私は咲野先生に迫り、


「って、流石に今日からすぐってのは無し無し。明日からねー」


 と答えた咲野先生に押し返された。


「あ……ああ、そうですね」


「もう、小山さん、興奮しすぎ」


 もう何度目か分からないけれど、咲野先生に笑われた私は恥ずかしさのあまり頬を掻いて照れ隠しをしていたのだけど、


「……んぷっ!?」


 完全に不意打ちで、ぎゅっと咲野先生が私を抱きしめてきた。


 もちろん、お風呂の中なので何も付けていないから、坂本先生や園村さんとかから比べれば幾分となく控えめではあるけれど、顔を受け止めるには十分な弾力がある丘陵に私は埋もれた。


「ホント、小山さんは危なっかしいねえ。真っ直ぐなコは嫌いじゃないけどさ。ちょっと心配になるんだよねえ」


 そう言いながら、咲野先生は私を抱きしめた腕に少し力を入れる。


「でも、退学になるのだけは止めてよね。アタシも結構、気に入ってるんだからさ。ほら、あの太田ちゃんとも仲直りしたんでしょ?」


「え? あ、知ってたんですか」


「先生は何でもお見通しよー、にひひっ」


 快活というべきなのか、明るいけれどやや奇妙な笑い声を上げる。


 ……私を男だとは知らないですよね、と脳内で無粋な声がしたけれどその言葉は無視しておく。


「ま、ホントはさっき寮で太田ちゃんと会ったときに聞いただけなんだけどね」


 ネタばらしをした咲野先生は、ゆっくりと腕を解いてから、私の肩を叩いた。


「公香も言ってたけどさ。正論だけでは周りを傷つけたりしちゃうから、行動する前に一呼吸おいた方が良いよ。ま、もちろんその場で行動しなきゃいけないときもあるから、単純に立ち止まるだけが正解じゃないんだけど」


 そう言ってから、咲野先生はざばんと水しぶきを飛ばして立ち上がった。


「んじゃー、明日から真面目にテスト勉強するから、ちゃんと準備しときなよー」


「……はい!」


「良い返事。じゃ、明日からよろしくね」


 ピッ、と指を立ててそう言った咲野先生は満足そうに頷いてから、浴室を出ていった。


 浴室内が静かになって、私はまた1人で考える。


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