表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

195/961

第9時限目 旋律のお時間 その16

 何とか坂本先生に対する男バレ危機を脱した私は、暗がりに残っていた下半身用のパッドを回収して、自分を落ち着けるように大きく深呼吸した。そして、自分の緊張感とかその他諸々の感情ごと箱に蓋をして、至って平常心を装って部屋に戻った。


「あれ、今回は早いねー?」


 私が帰ってくると、テーブルの前で工藤さん、園村さんと共に机を囲んで座っていた片淵さんが、振り返りながら言った。


「あ、うん。坂本先生が荷物、持ってきてくれたから」


「ありゃ、そうだったんだ」


「それで、みんなは何してたの?」


 3人はローテーブルを囲んで女子会的な雰囲気を醸し出している様子だったから、私は尋ねてみた。


「恋バナ」


 私の質問に片淵さんがそう言ってから、


「……しようと思ってたんだけど、誰もこう、ハッキリしてくれなくてねー」


 呆れ半分、弄り半分の笑顔で片淵さんがそう言った。


「てか、本当に園村さんとか相手居ないのー?」


 うりうり、と向かいの長身でグラマラスなクラスメイトにちょっかいを掛ける片淵さん。


「い、居ません、居ませんっ!」


 赤い頬を隠しながら答える園村さん。


「この反応は居ると思うんだけどねー。準にゃんはどう思うー?」


「えっ?」


 そこで私に振られても! と思いつつ、


「ど、どうだろうね。でも、園村さん、凄く美人だしモテそうだよね」


 と思ったままを答えたら、目の前で爆発する長身少女。


 あ、爆発というのはもちろん物理的なものではなく、頬が一瞬で朱に染まったのがそう見えただけということね。


 ……で、それは何故に?


「……! ……!」


 何か言いたいみたいだけれど、園村さんは何か感情が高ぶり過ぎたのか、一切の言葉を発せずに居る。


「準が変なこと言ったから、千華留が壊れた」


「え……えー?」


 私、そんなに変なこと言ったかな?


 自分の言葉を思い返してみても、変なことと言われても園村さんに美人って言ったことくらいしか思い出せないけれど、別にそんな言葉が言葉にならなくなるほど嬉しいとも思えない。じゃあ、更に前……?


「じゃあ、華夜ちんはー?」


 片淵さんの言葉に、謎のニヒルな笑いを返し、


「内緒」


 と工藤さんが言った。


「え?」


 意味深な反応、だけど工藤さんだからからかっているような気もする。


「……という感じで、皆中々口を割ってくれない訳だよー」


 片淵さんが私にヘルプを求める表情を向けてくる。いや、私に言われましても。


「そういう片淵は居るの?」


 工藤さんが片淵さんに尋ね返す。


「えー? アタシ? んー、居るっちゃ居るかなー」


「ええええええ?」


「ほ、本当に!?」


 私と園村さんは思わず大仰な反応を、そして工藤さんはさほど興味なさそうに見えて、それでも少し眼光が鋭くなったのを私は見逃していない。工藤さんも何だかんだでそういう話、好きなんだなあ。


「あっはっは、いやまー、好きっていうかアレだ、憧れっていうか」


「だ、誰ですか!?」


 完全にいつものおっとりお姉さんモードを忘れ、思わず身を乗り出して尋ねる園村さんだったけれど、


「えー、千華留ちんが答えてくれたら答えるかなー」


 とはぐらかす片淵さんに、


「ぐぬぬ……」


 という言葉と共に元の位置まで戻ってしまった。


「まあ、そもそも男じゃなくて女の子なんだけどねー」


「女……の子?」


「そーそー。だから恋愛感情とかそういうのではなくて」


「あ、ああ、そうだったんですね」


 落ち着きを取り戻した園村さんは、再びスイッチを切り替えて丁寧な言葉遣いに。


「アタシが困ってたときに颯爽と登場して、さっと手を差し伸べてくれたっていうかねー。ずっと、鳥籠の中でぴーぴー泣いてた……泣いてるだけで自分で飛ばなかった情けない雛鳥を助け出してくれたっていうか」


 あのお母さんの前みたいな、しなを作るというか、上品な振る舞いを少しだけ取り戻して、


「アタシ1人じゃ、一生あの場所から飛び立てなかったところを助けてくれたから、今アタシはここに居るんだけどね」


「……」


 おや、この話。何処かで聞いたような話だなあ。


「まあ、実際のところは準にゃんなんだけどね」


「…………あー」


 えっと、はい。やっぱりそうですか。


 まあ、女同士だと思っているだろうから、私のことを好きと言っても「超ラブ! 愛してる!」みたいなのではなく、部活の先輩に憧れるとかと同じパターンだろうとは思うけれど。


「…………なるほど」


「えっ、あの、つまり、片淵さんは小山さん、が好きと」


 私以外2人の反応は私が男だと分かった前提での反応だと思うけれど、少なくとも好ましいというような反応というよりはただただ驚いている様子と言うのが正しかった。


「あーあ、準にゃんが男だったらなー」


 残念そうに言う片淵さんに、工藤さんが尋ねる。


「もし、男だったらどうするの?」


 意地悪質問としか思えないけれど、片淵さんはにひひ、と笑いながら答えた。


「そりゃあ、もちろん嫁に貰ってもらうさー」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ