第9時限目 旋律のお時間 その13
曲解も曲解。大曲解。
「ち、ちがっ、違いますよ!」
「いや、いいんだ。ハレンチだとは思うが、健康的な一般男子学生であるのだからなっ! 否定しなくてもいいぞ!」
私の過敏反応に、それ以上の過敏反応で返す益田さん。
いや、そりゃあそういう姿を見れることについては役得……じゃなくてラッキーと思ったことはある、あるけど!
「そういうのじゃなくてですね! 友達同士になって、お風呂誘われてしまったら断れないというか……」
「あ、ああ、そうか、そういうことか。そ、そうだな……確かに相手は男だと知らないから、必然的にそうなるか……」
そうですね。
そう言えば良かったのに。
素直すぎるのは良いこととは限らない。
「いえ、知ってる子も居るんですけ、ど……」
言っている途中から、益田さんの表情が変わり、しまったと思ったけれど時既に遅し。
「な、なんだって!?」
ぐぐぐいっと益田さんが詰め寄ってきた。キスでもされるかと思うくらいの距離へ。
「お、おと、男だと分かっていながら、肌を晒していると言うのか!? な、なな、なんとハレ、ハレンチ……いや、そんなレベルではない! 痴女か! 痴女なのか!?」
「違いますよ!?」
クラスメイトのことをハレンチよりも上位互換扱いされたので、私は慌てて訂正する。
というか疑問に思うところは男バレではなくそこですか!? と脳内で突っ込んでしまった。
「そ、それで……?」
何故か頬を赤らめつつ、益田さんが続きを促す。
「それで、と言うのは?」
「そこまでしてくれるような女の子が居るというのであれば、その……更に先も進んで、その、い、致したのだろう?」
「致し…………? ……! いや、だから違いますって!」
一瞬、意味が分からずにぽかんとしてしまったけれど、途中でようやく意図が理解出来たから慌てて、首を千切れんばかりに左右に振った。
「私が男だと他の子にバレないようにと、お風呂でも自然に接してくれているだけで……」
私の言葉に、同じく首を横に往復させて益田さんは言う。
「いや、良く考えてみろ。例えば、自分だけが女の子だと知っている相手に、女バレしないようにと全て脱いだ状態を見せられるか?」
「それは……確かに」
露出狂の人ならむしろ興奮するかもしれないけれど、私はそういうのはないし。
……と思ったけど、それ以前に女の子側の方がリスク高すぎて前提条件が合わない気が。
「いや、でもからかってるとか……」
「からかうためだけに脱ぐのなら、それはやはり痴女なのではないか?」
「う……」
何だか否定できる要素が少なくなってきた。特に中居さんとか工藤さんとか。
ふう、と溜め息を吐いて益田さんは言う。
「まあ、そもそも男だとバレていることにも驚いたが」
あ、やっぱり気づいてたみたい。
「クラスの輪には溶け込めていることは一安心だ」
「それは、確かにそうですね」
何だかんだ流されっぱなしだけど、周りが受け入れてくれていることに感謝かな。
「ただ、これがクラスメイト全員に知られたりした場合、全員が受け入れてくれるとは限らない。この状況がいつまでも続けば、キミが男だとバレたときの非難は免れられないだろう」
「……はい」
それは、一応覚悟している、つもり。
「……とはいえ、今回の件は学校側の不手際もあるのだから、キミ1人で悩むことはない。どうしてもこれ以上は、となった場合は真雪や私を頼ってくれていいのだよ。とは言っても、真雪ほど私に力はないが」
ふふっ、と笑ってから、あ……と付け加えた益田さん。
「そ、それとだが……どうしても、我慢できなくなった場合は、ちゃんと言ってくれ。わた、私も上手くできるか分からないが、協力しよう!」
どういうこと? とまた一瞬悩んだけれど。
「……い、いや、無いです!」
「それは私がオバサンだからか!?」
「いえ、益田さんは十分美人で……ってそうではなくて!」
「まさか、もう枯れているのか!?」
「そういうのでもなくて!」
ああもう! この人は!
「だ、大丈夫ですから!」
「そ、そうか、そこまで言うなら分かったが、学校内や寮内では、その、節度を守ってお付き合いするように」
「はい……はい?」
何か聞き返すの多いなあ、今日。
「お付き合い?」
「いや、見せてくれるくらいだから、致してはいないとしても正式にお付き合いしているんだろう? 責任を取って」
「い、いいえ……」
「責任も取っていないのに乙女の柔肌を!?」
またも食って掛かるような体勢の益田さんに詰め寄られる。だ、誰か助けて! いや、若干自業自得感はあるけれど!




