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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第9時限目 旋律のお時間 その12

「え、ええっと……み、見つからないです……」


 探しても探しても出てこない、ということは忘れたか何処かで落としたかだと思うけれど。


「あ、そういえば昨日リムーバーを入れた後に、鞄の奥に入り込んでた鍵を取り出すため、1回中身を全部出したから、そのときに出しちゃったような」


 たはは、と困ったように笑う桜乃さんのお母さん。あちゃー。


「どうする? 流石に研究室に戻ってからは遅くなるだろう?」


「うーん、そうですね……。まあ、リムーバーはまた別日に持ってきます! 使うのには支障ないので」


 そう言って、桜乃さんのお母さんは立ち上がった。


「綾里さん、お茶ごちそうさまでした」


「ああ、お粗末さま、智恵子。また来ると良い」


「そうします! 次に来る口実もできたので! じゃっ、小山さん、また!」


 くっつけたら中々剥がれないという接着剤だけを置いて、桜乃さんのお母さんは足取り軽やかに帰っていった。


 なんだか良く分からないけれど、とりあえず使っといてってことなのかな?


 閑話休題。


 さっきの桜乃さんのお母さんと益田さんの様子に疑問が。


「というか益田さん、桜乃さんのお母さんに綾里さんって呼ばれてましたけど、知り合いなんですか?」


 私の言葉に益田さんは「ん? ああ」と短く一度言葉を切ってから答えた。


「知り合い……と言えばそうだが、高校以来はずっと会ってなくてな。さっき久しぶりに会ったってところだ」


「おおぅ……」


 私は思わず妙な声を出してしまった。


 先生ズ同士は結構友達関係が学生から繋がっていたみたいだけど、まさか桜乃さんのお母さんまでもそうだとは。世界は狭いなあ。


「まさか智恵子の子供がこの学校に通っているとは知らなかったよ。まあ、智恵子自体も高校くらいからほとんど変わっていないからすぐに気づいたが」


 確かに桜乃さんのお母さんはやや子供っぽく見えるけれど、娘さんが高校生ということは既に年齢は……いや、やめておこう。それ以上いけない。


「……はっ! いや、それよりもだ!」


 懐かしみモードに浸っていた益田さんは何かを思い出したように表情を変えて、


「小山さん! ちょっとそこに座るんだ!」


 と急に真剣な声色で言う。その勢いに気圧されて、


「え……えっ!? あ、は、はい!」


 と私は慌ててさっき桜乃さんのお母さんが座っていたソファに座った。


 膝先をぴったり合わせて、真剣モードの益田さんは私をじっと見つめ、


「自分が何をしたか、分かっているな?」


 と詰問が始まった。


「え、ええっ?」


 全く理解が追いつかない私は戸惑いを含んだ疑問系で返すしかなかった。


 何がいけなかったかな……寮のご飯をちょっと大盛りにしすぎだとか、そういうこと?


 ……いや、待って。


 益田さんに連れてこられたということは、もしかして工藤さんとか園村さんに男だってバレたことがバレたとか!?


 い、いや、でもあれはある意味チートスキルみたいなもので気づいたパターンだし、あまりに変則的すぎて……ああ、でも中居さんにもバレてるし……。


 あれ、冷静に考えると転入してからまだあまり経っていないのに、結構な人にバレてる気が。


 それでも、男バレしてしまったのはこう、不可抗力とか相手の尋常じゃない察し力さっしりょくによるものであって、私は無罪だと思います。


「え、ええっと……そ、園村さんとか工藤さんは、何というか仕方がないというか……」


 私が言葉を濁しているのは、園村さんにバレたのは実は彼女が吸血鬼で血を吸ったときに、なんてことを言うわけにいかないから、バレた理由をどう誤魔化そうか考えながら喋っているから。


「園村さんと工藤さんとはさっき入っていた女の子か?」


「そ、そうです。片渕さんも居ましたが……」


「そうか……確かに3人居たな」


 言いながら、益田さんはふう、とため息を吐いた。


「……彼女たちとあまりに仲良くなりすぎたせいか」


「そう、ですね」


 仲良くなりすぎた、と言われれば確かにそうなのかもしれない。


「だが、拒絶することも出来たはずだ」


「でも、折角仲良くしようとしてくれているのに……」


「それでも断らなければならないことはあるだろう!?」


 がしぃっ、と私の両肩を掴んで、益田さんが睨めつける。


「うう……そ、そうです……か」


 そうですね、とはやはり言えなくて、私はそう答えた。


 確かに、中居さんだって園村さんと工藤さんだって、一切関わらなければ男バレしなかったかもしれない。


 分かっているけれど、一応女の子として普段生活しているのに、クラスメイトを拒絶して生きていくなんてことはしたくない。


「今後、君から……いや彼女たちからかもしれないが、誘いを拒絶は出来ないか?」


 益田さんの質問に私は首を静かに横に振った。


「……どうしても駄目か」


「……はい。今後も彼女たちとは関係を続けます」


 そう答えた私の言葉に、


「はあ……分かった。まあ、遅かれ早かれこうなるとは考えていたが……それでも1ヶ月程度しか経っていない状況でこうなるとは。やはり、見た目には依らないんだな」


 と益田さんは観念したような声でそう言い、こう続けた。


「……見た目は女の子でも、その、やはり年頃の男の子なのだな。同じ年の女の子の、う、生まれたままの姿を見たいなんて……ハレンチな」


 なんて再度溜め息を吐きつつ、少し頬を染める。


 ………………えっ!?


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