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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第9時限目 旋律のお時間 その8

 その後も先生役である私を取り合う場面が……いや、取り合うというよりからかっているという表現の方が正しい気はしたけれど、それはそれとして、私の説明がある程度実を結んだのか、勉強自体はそれなりに進んだようだった。


「あー、つっかれたー」


 大きな伸びをしてから、後ろにゆっくりパタンと倒れた片淵さん。それを皮切りに私たちは全員集中力を切らして、手を止めた。


 外を見ると既に日は大分傾き、スマホの画面に表示された時間は夜がこんばんわと声でも掛けてきそうな時間帯になっていることを告げていた。


「うー、結構勉強しましたね」


 やや疲労の色が濃い園村さんが机に突っ伏して言う。その姿は凡そ完璧お嬢様的なモノではないけれど、そんな格好を見せても良いんだろうか。


「疲れた……あ、千華留。今日は泊まっていったら?」


「……え?」


 園村さんの向かいで同じように机に突っ伏していた工藤さんの不意打ちのような言葉に、園村さんが顔を上げて疑問符を作った。


「いや、あの、家が隣だから泊まる意味がなくて……」


「寮生になることは出来ないけど、泊まっちゃいけないとは言われてない」


「ま、まあそれはそうかもしれないけれど……」


 工藤さんの勢いにたじたじな園村さん。


「まだお風呂入ってないし、一緒に入る」


「お風呂に入るのは別に良いのだけどね?」


「千華留の家に泊まりには良く行ったけど、寮で一緒に泊まったことは無い」


「そう言われてみれば……」


 園村さんが天井に視線を向けて思い出しながら答えた。


「たまには一緒に寝よ」


「う……」


 少し心が動かされてる感じがある。まあ、園村さんと工藤さん、仲良いから結構泊まりに行ったりしてたのかな。


「お金の問題なら、多分一緒のベッドに寝たらタダ」


「え、そういうものなのかな?」


 工藤さんの言葉に、私は首を傾げた。


「……多分?」


 首を傾げた私を見て、工藤さんもまた首を傾げた。知らなかったんかい! と心の中で突っ込んだけれど、流石に声には出さなかった。


「た、確かにそれは分かるけれど、着替えとかも持ってきて無いし……」


 もごもごと言い訳している園村さんに対し、


「下着は私のを貸す。ちょっと千華留の方が大きいけど、大体同じサイズだし。まあ、もし入らなければ付けなくても良い。シャツは身長同じくらいだから、準から借りればいい。良いよね、準」


 とさらりと言ったので、私は自分に話を振られたと気付かず、


「…………え? あ、う、うん、別に良いよ?」


 と完全に数テンポ遅れて答えた。


 園村さんはしばらくうーんと唸ってから、


「……そうね、分かったわ。前から寮には泊まってみたいとは思っていたし、ゴールデンウィークももうそろそろ終わってしまうからね」


 と園村さんは笑って答えた。


「じゃあ、益田さんに電話する」


 そう言って工藤さんは電話を取り出し、益田さんに電話を掛けたと思ったら、数言だけ言葉のキャッチボールをした後、園村さんに向かって親指をビッ、と立てた。


「オッケーだって。書類は後でも良いけど、家にはちゃんと電話しておきなさいって」


「ええ、分かったわ」


「というわけで、皆でお風呂に行こう」


「そうね。じゃあ、小山さん、服を…………えっ」


 お姉様モードの園村さんが腰を上げかけたところで、工藤さんの提案に体を硬直させた。


 私は園村さんが固まった意味が良く分からず、数回目を瞬かせていたけれど、


「……あっ」


 と察した。


 察したけれど「いや、駄目でしょ!?」とは言うわけにはいかない。この場には片淵さんも居るからね。


「あっ、えっ、そのっ……そっ、そうねっ」


 完全に挙動不審になった園村さんは、顔を私に向けて何か良い案が無いかアイコンタクトを図ってきたけれど、


「アタシは別に良いよー」


 と片淵さんも無自覚に追い打ちをかけてくる。いや、まあ片淵さんは事情を知らないから当たり前だけれど。


「だよね。別に”女同士”だから大丈夫だよね」


 そう、無表情のまま“女同士”を強調して言う工藤さん。このタイミングで女同士と言い切る工藤さんは小悪魔なのか大悪魔なのか。


 考えすぎて頭がオーバーヒートしたのか、


「そ、そうね! 女同士だから平気よね!」


 何故か、力強く握り拳を作ってそう答えた園村さん。いや、良いの!?


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