第8時限目 変身のお時間 その37
「さて、どう落とし前つけてもらおうか」
美歌さんは不敵な笑いというには意地悪成分が強い笑顔で2人のギャルを見下ろしている。
「ゆ、許してほしいじゃん……」
視線を合わせたら取って食われるとでも思っているのか、視線を明後日の方向に向けながら黒い方のギャルがそう言う。
「そ、そうそう……反省してるからさ……」
白い方もやっぱり視線を泳がせながら、そう言う。
「美歌姉、2人共反省してるみたいだから……許してあげようよ」
やはり友達だから許してあげたいという気持ちがあるんだろうと思うのだけど、被害者であるはずの中居さんが同調した。
ただ、そんな様子を見ていた美歌さんは一切の妥協を許さず、ギロリと足元でびくびくしている2人を見ながら言った。
「いいや。こういうヤツはそう言って、今さえ切り抜ければ何とでもなると思ってるヤツらだから一切反省しねえよ。野放しにしていたらまた同じようなことをしやがるぞ。さて、どうすっかな……」
うーん、と腕を組みながら悩んでいる様子だった美歌さんは、ふと何かを思い出したように顔を上げて、私にこう言った。
「小山、お前に選ばせてやる。晴ちゃんだと優しすぎるからな」
「……え? 私?」
唐突な言葉に、私は思わず口をぽかんと開けてしまった。
「そうだ。お前だって巻き込まれた側だろ。だから、お前には決める権利がある」
「……そ、そうなのかな……ってそれより何を決めるんですか?」
恐る恐る美歌さんの言葉を待つ。まさか、私に彼女たちを殴れとか言い出すのかな、と思っていたのだけれど、内容自体は大方その想像通りだった。
「こいつらに反省させるための方法だ。こいつらの顔が変形するまでボッコボコにするか――」
そう美歌さんが言った瞬間、2人のギャルは首を竦め、
「い、いや、ちょ、ちょっと待って……」
「ぼ、暴力反対……」
即座に死刑……ならぬ私刑宣告者2人が反応したけれど、美歌さんはそれを無視して、
「後はそうだな……ひん剥いて、ハレンチなイメージビデオでも撮ってみるか?」
と言いつつ口角を上げた。
……あれ?
その話は美歌さんたちが来る前に私たちが聞いていただけで、美歌さんは知らないと思っていたけれど。
私の不思議そうな顔を見て、くっくっくと笑った美歌さんは、
「実はな、さっき外で捕まえたそこに寝転がってるのとその仲間含め、色々教えてもらったわけだ。これから何をしようとしてたかってのをな」
「あー……」
なるほど、そこも含めての”オハナシ”だったと。
「ちなみに、2人共何もされてないか?」
「あ、アタシは何も……」
中居さんがしどろもどろに答えたから、私も続いて、
「え、ええっと……」
どこまで話そうか、少し考えたのだけど、
「小山、嘘言うなよ。ちゃんとされたこと言え」
黙っていた大隅さんが私の肩に手を回してそう言った。
大隅さんの視線は真剣そのもので、嘘を言わせないぞという責めるような表情というよりは、私を心配しているからこそ全てを吐き出せと言っているような表情なのかな、なんて勝手に思った。
……良く考えれば、私だって許してあげる理由はないし。
「う、うん……えっと、頭を殴られて、気絶したところを縛られてた」
「ほーお……?」
「へーえ……?」
大隅姉妹がほぼ同時、私の言葉を聞くや否や冷水みたいな視線をギャル2人に浴びせかけた。
正直なところ、あの2人の態度は到底許せる内容ではなかったと思うけれど、かと言って殴られたことは事実。そこは誤魔化さないようにした方が良いかな、と思ったけれど。
「なら、尚更小山に選ぶ権利が有るな。じゃあ選んでくれ」
やっぱり私が決めることになるのね、と私は少し困った表情を作る。
確かに殴られはしたし、そこでボコボコにされて伸びてる白い方の彼氏? を呼んだ時点でさっき白ギャルが言っていたことは本気だったのは間違いないけれど、あくまで未遂であって私たちは何もされていない。
そう考えると、さっきの2択はどちらもちょっとやり過ぎかなと思わなくも……としばらく脳内談義をしていたところ、美歌さんは、
「んじゃ、小山が決められないなら俺が決めてやろう。顔が変形するまで殴る方な」
と言いつつ、肩を回しながら更に2人に近づいていくから、私は慌てて、
「は、ハレンチな映像の方にしましょう!」
と口走ってしまう。
そうすると、肩を回すのを止め、待ってましたとばかりに美歌さんが再び笑顔を取り戻す。それも特大の意地悪な笑顔。
「やっぱそうだよなあ、小山。よく分かってんじゃねえか」
「……あ、あれ?」
……これ選択肢選び間違えたかな。




