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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第8時限目 変身のお時間 その36

「……くっそ重いじゃねえか、この扉!」


 重厚な扉を開けて現れたのは、白黒ギャルが熱望していた人物にしては、随分と胸部装甲のみ厚く、それ以外は年頃の娘らしくほっそりとしていて、やや言葉が荒々しい少女だった。


「え、星っち!?」


「ん? は、晴海っ!? 大丈夫だったか!」


 さっきまで扉に向かって悪態も付いていた態度から急変し、部屋に入ってきた大隅さんは中居さんの姿を見るや否や、駆け寄って抱きしめた。


「晴海っ……、ああホントに良かった……」


 ほとんど泣き崩れるようにして、大隅さんが中居さんを抱きしめながらその場にしゃがみ込む。


「ほ、星っち痛いよ……あはは」


 抱きしめられる側の中居さんは少し恥ずかしそうな笑顔で、それでもただただ大隅さんのされるがままだった。


 大隅さんが抱きしめ欲を充分に満足させ、腕の力を緩めたのを見計らった辺りで、


「私よりも、こやまんが……」


 と中居さんが顔を上げて、私に向く。


「ああ、そうだ、小山! お前も大丈夫だったか!?」


 あっと言う間というのはこのことか、なんて思うくらいに今度は私に駆け寄ってきた大隅さんは何故か私も目一杯抱きしめる。急に抱きしめられたせいでバランスを崩した私は、大隅さんを押し倒すような形になったけれど、大隅さんは意に介さず、そのまま豊かな谷に向かって私の顔を収めた。


「お前を1人で行かせて悪かったな……」


 目一杯の安堵の溜息と共に、大隅さんが一段と私を抱きしめるから、柔らかいやら温かいやら恥ずかしいやら息苦しいやらでもう何が何だか。もちろん嫌な訳では無いのだけど……あ、でも後頭部をぎゅっとされるとさっき殴られたところがしくしくと痛む。大隅さんが満足そうだからちょっと言えないけれど……うう、痛い。


 大隅さんとの再会を喜んでいる人物も居れば、それを面白くないと思う人物も居る。


「な、何だよ……何でここに来てんだよ!」


 待ち人来たらず、という結果に苛立ちを隠さないし、地団駄を盛大に踏んで下着も隠さない、白い腹黒ギャル。


 その様子を見て、大隅さんが私に向かって一言。


「……あいつ誰だ?」


「え、知らない?」


「知らん」


 今日は確かに、直接顔を合わせては居ない気はするけれど、中居さんの友達だから知ってるものだと。知らないんだ。


「……えっと、中居さんの友達……?」


「何で疑問形なんだよ」


「だって、今回の首謀者でもあるから」


「なんだと……!?」


 目に見えて、額に青筋が立った……ような気がする大隅さんに強がる美白ギャル。


「ま、まあ別に1人くらい増えたところで変わんないし。ウチの彼氏が来れば――」


「その彼氏とやらは、このボロ雑巾のことか?」


 勝ち誇ったような白ギャルの言葉に被せるように、大隅さんよりももう1回り荒々しい言葉で扉を蹴飛ばしてきたのは、鎖っぽいアクセサリーがじゃらじゃらしている、如何にもパンクとかロック風の服装をした女性だった。


「……み、美歌さん?」


「おー、小山か。元気してるか?」


 白い歯をニヤリと見せる美歌さんに、何故ここに居るのかという疑問は脇に置いておき、しっかりと首を縦に振る。


 あれ、もしかして大隅さんが連れてきてくれたとか?


「えっと、それで美歌さんの手にぶら下がってる人は……」


 狩猟で仕留めた獲物みたいに、美歌さんが襟元を掴んで引きずっているのはとりあえず風貌からは男だろうと推測出来るけれど――


「ん? ああ、コイツか? いやなに、さっき晴ちゃんと小山を探しに来たとき、丁度コイツらがここに入っていこうとしていたから、事情を聞いた後に”オハナシ”しただけだぜ」


 と美歌さんが言うように、その顔面は”オハナシ”した痕が残っており、多分スマホの顔面認識機能を使ってもロック解除は出来ないんじゃないかな、と思う程度には酷い有様になっていた。


 バイクの音が止まった後にしていた声は、もしかしなくても建物の入口で”オハナシ中”の声だったということですね。


「オハナシですか……」


 まあ、まず間違いなく拳と拳の語り合いというヤツですね。顔のボコボコ具合を見ると、語り合うレベルでも無かったんじゃないかと思うけれど。ほら、争いは同レベルでしか起こらないとか何とか。


「な、何だよお前ら……!」


「何だもクソも有るか。テメエらが何しようとしてたかは、コイツと外に居るお仲間から聞いたぞ」


 手に持っていた男の人をその辺に放り投げる。ああ、白ギャルの彼氏とその愉快な仲間たちという話だったから……つまりそういうことか。


 ああ、可哀想だけれど、自業自得だから仕方がないね。


 いや、しかしこの人、どれだけ強いんだろう。幾ら何でも1人で男数人をボコボコにするとか。


「ご、ゴリラかよ!」


 私も若干の同意をしてしまいそうになる発言を、色黒ギャルの方が放ったけれど、


「あぁん? 誰がゴリラだぁ?」


 バキリ、ボキリと指の関節を鳴らしながら近づく美歌さんに、何も言わなくて良かったと思った。美歌さん、美人だけど超怖い。


 ……やっていることはさっきの私と同じはずなのだけど、威圧感のレベルが違う。ヤバイ、この人を敵に回すと死ぬ! と思うくらいに。


「う、うわ、く、来るな! 来るなぁ!」


 ギャル2人が、ゾンビ映画で行き止まりに逃げ込んでしまった生存者みたく、恐怖の声を上げて立ち竦み、ついにはへたり込んでしまった。


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