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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第8時限目 変身のお時間 その27

「連絡? 私の方には何も無かったけど、どうしたの?」


『いや、まだあいつ、家にも帰ってないみたいだからな』


「それはあのお友達と遊んでるんじゃないの?」


 携帯電話を耳に当てているから正確な時間は分からないけれど、今時の高校生ならまだまだ外を歩いてても別に不思議じゃない気がする。いや、昔の高校生がどうだったのかは知らないけれど。


「というか、中居さんなら遅くまで出歩いてても不思議じゃない気がするんだけど」


『何言ってんだ。あいつは見た目はアレだが、下手すりゃ10時には寝てたりするんだぞ』


「……え? 中居さんが? 冗談じゃなくて?」


 受話器越しに私の言葉に対する溜息が聞こえてくるのが分かる。


『頭はわりーし、若干お調子者なところはあるが、あいつはあたしに合わせてあんな格好しているだけで、基本はバカ真面目だぞ』


「……本当に?」


 再度念押し。


『本当だっての。夏祭りとかでも家に帰る時間言ってて、予定よりもちょっと遅くなりそうってだけで必ず家に連絡ようなヤツなのに、今日に限っては何にもねえ』


 真面目に心配している大隅さんの声色に、私はごくりと唾を飲み込む。


『あたしの方に電話が無かったか、って晴海の親から電話が掛かってきてな。あたしの方は無かったが、もしかするとお前の方になら電話があったかもしれないと思って掛けてみたんだが』


「大隅さんに連絡がないのに、私にあるわけないと思うけど」


『いーや、小山が来てから晴海も変わったからな。まあ、あたしも他人ひとのこと言えるわけじゃねーけどさ』


 少し照れ笑いみたいな声で大隅さんが言う。


 その声に感化されてかどうかは分からないけれど、私も何だか気恥ずかしくなって、慌てて言い返す。


「あ、で、でも中居さん、私の電話番号知らないから、電話掛けてくる可能性は無いと思うけど」


『いや、電話は無くても、コミュー登録してんならそっちで連絡来てるかもしれんだろ?』


「へ? ……あ、もしかして、今大隅さんが私に掛けてるみたいに?」


『そういうこった』


 なるほど、確かに電話番号を知らなくても、こうやって連絡を取るってことも可能なんだ。結構便利な世の中だなあ。


 正直なところ、大隅さんがそこまで言っていても、本当に遅ればせながらの反抗期なのかもしれない、と少しだけ思っていたりする。ほら、今日一緒に遊びに行ったあの2人に感化されて「アタシも悪い子になっちゃうぷー」みたいな。


 ……いや、何が「なっちゃうぷー」なんだと思ったけれど、ノリで何となくそういうこと言いそうな気がしていたり。


 でも、それだけ根が真面目なら、中居さんって何故ギャルになったんだろう。ギャルであることが悪いこととは思わないけれど、世間的には色眼鏡で見られやすいギャルを続けるのは勿体無いって思う。


「電話はしてみたの?」


『してみたが、全然出やがらねえ。一応、コミュチャも送ったんだがこっちも反応無いな』


「コミュチャ?」


 知らない言葉が出てきて、疑問が口をついて出たけれど、大隅さんはすぐに答えてくれた。


『あー、小山は知らねーかもな。簡単に言えば……何だろうな、文章でやる電話みたいなもんだ』


「……?」


 説明してくれたけれど、さっぱり分からなかった私の疑問符が受話器越しに伝わったのかは分からないけれど、大隅さんはそれ以上の説明を放棄して、


『……まあ、なんだ。とにかく、そっちにもし何か連絡とかあれば教えてくれ。じゃあな』


 と大隅さんは急くようにそう言って、電話を切ってしまった。


「あ、ちょっ……」


 中居さんが実は結構いい子だったという事実を知ったことも驚きだったのだけど、それと同じくらい驚きだったのは、大隅さんが、日が暮れても帰ってこないというだけで中居さんのことをものすごく心配していたこと。知らないことって結構あるんだなあ、なんて思う。


「誰だったー? 何か困ったことでもあったのかねー?」


 私が携帯を耳から離すと、少し不安が伝染したみたいな表情の片淵さんがすぐに声を掛けてくる。周りから見ても分かるくらいに、私も慌てていたのかな。


「大隅さんだったんだけど……何か、中居さんが家に帰っていないみたいで」


「えー? でもまだ帰ってないのもフツーじゃない? そんなに慌てるものかねー?」


 私の反応の焼き直しみたいな回答をする片淵さん。まあ、うん、そうなるよね。


 だから、私もそのまま大隅さんの言葉を脚色せずに説明したけれど、


「えー? でも普段結構サボってた感じだけどなー」


 という反応だった。うん、ここも私だって否定出来ない。


 だって、私だって普段から授業に出てないようなクラスメイトが、突然家に帰らなくなったって話だけ聞いたら、まあそういう子だったんだろうなー程度にしか考えないだろうと思うから。


 でも、今は違う。


「繭ちゃんのこと、ちょっと見てて貰える?」


「ん? 良いよー」


 片淵さんの言葉を聞いてから、私は少し髪をバスタオルで拭きながら、コミューで友達登録の申請をしていた中居さんから登録承認が返ってきていたのを確認してから、最新の日記と思われるものを調べてみると、


『カラオケ終わったぽよー。ご飯は近くでファミレスるー』


 と1時間くらい前の書き込みがあった。つまり、もしかするとまだファミレスに居るかもしれない。

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