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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第8時限目 変身のお時間 その17

 友達登録云々はさておき、私たち3人はそれぞれ注文したものを口に運びながら、今後の計画を立てようとするのだけど。


「折角集まったし、どこかこれから行く?」


「そうですね……」


「…………」


「…………」


 私がたまたま注文したピザトーストをもぐもぐやり始めたタイミングでの質問だったから、飲み込むのに時間が掛かって答えられなかったのだけど、お互いに口をつぐんでしまった2人の会話が目の前で途切れていた。


 ううむ、前から気にはなっていたけれど、やはり正木さんと片淵さんの間は距離感がある。私が上手く仲を取り持てればいいのだけど、私自身そんなに人付き合いが上手な方ではないから、こういうときどうすればよいか分からずに、図体のでかい沈黙人形が1人分増えるだけ。


 片淵さん自身もああいう姿……あの家でのお嬢様風というか、真面目を十二単じゅうにひとえにして着たような自分を隠しているのも要因の1つなのではないかと思う。


 まあ、私の軽率な行動で、断片的に片淵さんのお家事情を暴露してしまったから、もしかすると正木さんも岩崎さんも片淵さんが隠している内容に少しだけ気づいているかもしれないけれど。


 沈黙ばかりで何も決まらない会議で、やはり最初に沈黙を破ったのは片淵さんだった。


「あ、そうだった」


 片淵さんがハンバーグを切る手を止めて、何かを思い出したように言葉を発した。


「どうしたの?」


 ナプキンで口を拭いてから私が尋ねると、片淵さんは頭に手を当てて朗らかに笑った。


「いやー、良く考えたら、家から出てくるときに着替えとかは持ってきたんだけど、ハンカチとかリップとか細々したものって持ってくるの忘れちゃったんだよね。だから、ちょっとドラッグストアに寄りたいんだけど、いいかねー」


 片淵さんの言葉に、私と正木さんはほぼ同タイミングで頷いた。拒否する理由もないから、と思ったときに私はふと別のことが頭によぎった。


「そういえば、ドラッグストアのすぐ近くにホームセンターもあったよね?」


 私の言葉に片淵さんが「そーだよー」と軽く答える。


「どうしたんですか?」


「テオの猫砂が無くなってしまったから、買い足しておこうかなと」


「ああ、なるほど」


 正木さんが私の言葉に頷く。


「あ、でもそれであればうちの猫砂を持っていっても構いませんよ?」


「気持ちは嬉しいですが、正木さんに頼りっきりではダメですから」


「大丈夫ですよ? そんなに気にしなくても」


 正木さんはそう言うけれど、私は笑顔で首を横に振る。


「いえ、私が気にしてしまうので」


 金の切れ目が縁の切れ目、とまで言うつもりはなくても、そういうことを繰り返しているとその内に“貰って当たり前”になってしまう気がして、物の貸し借りやあげる貰うは出来るだけしない方が良いかなって思ってる。全力で拒否するほどではないけれど。


 ……勉強が友達の私が、物の貸し借りその他諸々が出来る友達なんか居たのか、なんて言わない。友達が出来たときにはそうしよう、って決めてただけだから。


「んじゃ、お水飲み終わったら行こっかー。思ってた以上に混んできたしねー」


 片淵さんの言葉に、お店の入り口の方を見ると、待っている人で結構な行列が出来ているのが見えた。おおう、気が付かなかった。こういうところで気遣いが出来る片淵さんって凄いと思う。


 私たちは支払いを済ませ、入り口に集まっていた人波をかき分けてお店を出る。


 場所を変えたからといって、やっぱりメンバーに違いがないからドラッグストアとホームセンターでもあまり話は弾まず、まだ日は高かったけれど、私たちはそれぞれ帰路に就いた。


「あははー、ごめんねー。あまり話題がなかったねー」


 正木さんと家の前で別れて、片淵さんと寮に向かう道の途中、苦笑いと共に片淵さんが言う。


「ううん……私もなんというか、全然良い話題が見つからなくて……」


「なんというかさ」


 私が買った猫砂の袋を1個持ってくれていた片淵さんがぽつりと言葉を漏らす。


「前にも言ったっけ? 紀子ちんと真帆ちんは中学から友達同士だったけど、アタシは高校に入ってから友達になったんだよねー。真帆ちんはほら、ああいう誰にでも分け隔てなく接するタイプだから、アタシもすぐに仲良くなれたんだけどさ」


 猫砂をよいしょっ、と抱え直してから片淵さんが言葉を続ける。


「友達の友達は友達……と簡単にはいかなくてねー。アタシも紀子ちん、大人しいし、やっぱり真帆ちんを経由しないと中々話が弾まなくてねー」


「そうですね」


「……ってアタシは大人しくないじゃん! って突っ込むところじゃん?」


 あはは、と自分で笑う片淵さん。いや、実際は大人しい……かはさておき、本当はお淑やかなのは知ってます。


 片淵さんと正木さん、岩崎さんは高校で知り合ったというのは正木さんから聞いた覚えがあるけれど、片淵さん本人からまだだったと思う。


「だから、アタシは準にゃんが羨ましいんだよねー」


「……えっ? な、何故?」


「だって、転入してきてすぐ、紀子ちんとも仲良くなってるし」


「あ、ええと……」


 仲良くなったとは言っても、それまでに色々と事情があったわけですが。


2017/10/26 主語修正

「岩崎さんは頭に手を当てて朗らかに笑った。」

「片淵さんは頭に手を当てて朗らかに笑った。」

キャラクター名を間違えていました。

ご指摘いただきましたので、修正しました。

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