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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第8時限目 変身のお時間 その14

「ど、どうしました? 正木さん」


「あ、えっと……あの……は、入らないです」


「入らない?」


 消え入りそうな正木さんの返答に、何が? と一瞬悩んだけれど、さっき持って入った下着が入らない、という主語に辿り着くまでに、さほど時間は必要なかった。


 なるほど、サイズが合わなかったんだなあ、なんて額面通りに言葉を受け取って心の中で頷いた私は、直後の、


「いやいや、おかしいでしょっ!」


 という岩崎さんの不服そうな言葉に首を捻った。


「紀子が言ってた通り、Eの70渡したはずだけど」


 岩崎さんの言葉で、そういえば少し前にお風呂でサイズを暴露させられていたんだっけ、という事実を回想した。Eの70……確か数字がアンダーバストのサイズ? だったはずだけど、そんなことはさておき、間違いなく大きい方だと思います。


 岩崎さんの反論に、中からはわたわたした声が聞こえてくる。


「え、ええっと、その、多分、いつも買ってるところとサイズが、微妙に、その、違うからだと……思う、のだけど……」


「……もしかして」


 その反応に、岩崎さんは何かピンと来たらしく、別の下着を持って試着室の中に押し入った。


「え、あ、ちょ、ちょっと!」


 困惑した正木さんの声と、


「お姉さんに見せてみなさい。……やっぱり、全然足りてないじゃん! Eの70とか嘘でしょ」


 と岩崎さんのむすっとした声がカーテンの向こうから漏れ聞こえてくる。


「あー、なるほどねー」


 ここでどうやら片淵さんも答えが分かったみたいなのだけど、未だに私状況が飲み込めていない。


 んー? 単純にサイズが違った、という話ではない?


「う、嘘じゃない……よ」


「過小報告は報告義務違反になるぞっ。さあ、ちゃんとしたサイズを報告したまえ!」


 何故か、会社のお偉いさんみたいな口調になっている岩崎さんに、渋々答える正木さんはさながらOLだろうか。


「え、Fの70……」


「……5も大きくなってるって、何、Eの70はいつだったわけ?」


「こ、高校1年……」


「マジで? あたし、高校入ってからサイズ上がってないんだけど。くっ、羨ましい!」


「ひゃっ、ま、真帆ーっ」


「これか! これがまだ大きくなってるというのかっ!」


 カーテンの向こうで何が行われているのかは想像するに難くなく、私と片淵さんが呆れ顔でアイコンタクトをしていたのだけど、よく見るとお店中の人の視線がこちらに集中してきている。


 しまった、大隅さんのお姉さんの件からずっと騒がしかったせいだよね。少し吊り目気味な店員さんが視線からお静かに! オーラを出しているから、私は慌てて、


「ちょ、ちょっと声のトーンを……」


 と無意識にカーテンの中に頭を突っ込んでそう声掛けすると……目の前に、正木さんの桃色の帽子をかぶった大きな山をその両手に余らせながら手で持ち上げている岩崎さんの姿が。お、おおぅ、想像はしていたけれど、こんな眼前ではまた中々の迫力が……って何を言っているんだろう、私。


「み、皆見てます、ので、お、お静かに」


「はーい」


「……は、はひ」


 桃色な空気を一杯吸い込んでしまった私は顔を引っ込めて、はふーと息を吐く。


「やっぱり中は凄いことになってた?」


「え? あ、うん」


 苦笑している片淵さんの言葉に、私は頷いて答えた。


「まー、サイズが小さい方は小さい方で大変だけど、大きいのは大きいので大変そうだよねー。男の子からも見られるし、女の子からは羨望というか嫉妬というか、そういうのもあるしねー」


「うん、そうだよねえ……」


「準にゃんはあまり気にしない方?」


 突然、というほどではないけれど、そんな言葉を振られて私は少し考える。


「私は……そうだね、やっぱり少しは気になるかな」


 ひとまずは、あの偽山を使っているのはサイズを気にしているからだ、という誤った前提が周知されてしまっているので、話に辻褄を合わせるように、私はそう言った。


「そっかー。アタシはあんまり気にしないなー。にゃはは、まあ気にしたって大きくなんないしねー」


 片淵さんは自分の控えめな山を両手で持ち上げて言う。


「でも、流石にジュニアサイズでも入ったのはちょっとショックだったなー」


「そ、そうなの?」


「うん。というか、下手すると普通のAとかじゃガバガバになるから、ジュニア用のソフトブラの方がよっぽど合うんだよねー」


 少し困り顔でそう言いつつ、


「ほら、今日も実は子供用のソフトブラ」


 と着ていたブラウスの上2つほどボタンを開けて、自分のブラの肩紐から一部胸元まで見せる。


「ほ、ホント……だね」


 女同士だから、と思ってそう見せてくれているのだと思うけれど、身長差があるから、結構おへそ近くまで服の中が見えてしまう。もちろん、既にお風呂の中で下着どころか、生まれたままの姿を上から下まで見たことはあるのだけど、こういう場所で突然そういう対応をされると、ちょっとドキッとしてしまうのは仕方がないことだと思う。


 ただ、何よりもそれが子供用なのかどうかとか、ソフトブラというものがどんなものなのかがあまり良く分かっていない。ソフト……柔らかい布のブラ、とか?


「準にゃんも諦めて、こっち側に来なよー」


 こっち側、というのが”胸のサイズ諦めました組”ということなんだろうと思うけれど、これを外してしまったら、片淵さんのほんのり膨らんだサイズとは違い、完全な断崖絶壁になるので流石にちょっとそれは……と思い、ひとまず笑顔を取り繕う。


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