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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第1時限目 初めてのお時間 その14

 私は正木さんと校門までの道を歩く。ただ、お互いまだ会って間もないこともあって、ぎこちない距離感がひたすら押し黙った空気の道を作っている。ううん、こちらとしてはそれ以外の要因も非常に大きいんだけれど。


 アクシデントとはいえ、さっきはいろいろと凄いことになってしまった相手と2人で歩くというのは、かなり……あ、思い出しただけで頬が熱くなってきた。いやいや、しっかりしなきゃ。


 更にこのぎこちなさを加速させる要因になっているのが、意外と校門までの距離が長くて、戸惑うこと。


 私立だからかもしれないけれど、やけに大きな池があったり、何だか洒落た石畳やベンチが置いてあったりと、とにかく趣向を凝らしたんだろうけれど過剰装飾だよねって思う部分が多々ある学校なので、敷地もかなり広い。確か学校のパンフレットに、元々は公園だったのを学校側が買い取って、今のような学校になったとかなんとか書いてあった気がするから、どちらかというとその公園の名残なのかもしれないけれど、何にしても広いし、道が長い。さっきは咲野先生が居たから、何だかんだ先生が振った話にツッコミを入れていたらいつの間にか着いたけれど、今回はどうやら彼女……正木さんはあまり話をする方じゃないのかな。


 とにかく、意外と長い道中で私の脳内は話題を増産するのだけど、男バレしないように、なるべく話が続くように、っていう理由を考慮して選定すると、全て出荷前チェックで弾かれてしまう。だって、例えば服装の話題とか投げたところで、私自身が付いて行けない。基本、服は母か妹の勧めで買ってただけだから、どこのブランドが良いとか全然分からないし。


「あ、あの……この辺りは花菖蒲とか、梅雨時期になると綺麗らしいですねっ」


 突然のか細い声が、数歩後ろくらいから割り込み上等なスライディングしてきたので、思わず私はその声を見送りそうになったけれど、何とか右から左に受け流さないで聴きとった。


「え? あ……えっと、はい? そうなんですか?」


 言いながら横を向くと、誰も居ない。そのまま視線を少し後ろに向けると、必死に距離感を掴もうとする声の持ち主が見える。


 ずっと、正木さんの隣を歩いていたつもりだったのに、いつの間にか昔の夫婦よろしく、正木さんは私の影を踏まない程度に離れていた。


 そっか。身長が頭1つ分くらいに違うから、歩幅が違うのね。更に考え事をしていたことと、早くこの無言の緊張感を払拭したいという思いも重なって、少し早足になっていたのもあると思う。


 彼女の視線が「並んで歩いても大丈夫かな?」とやや不安げだったから、私も出来る限りでの笑顔で答えた。「大丈夫ですよ」と思いを込めて。


 私の視線の意図に気づいてくれたのか、たたたっ、と私の隣に小走りで来て、正木さんは話を再開する。


「はい。ここが昔は公園だったことはご存知かもしれませんが、その頃から花菖蒲が植えてあったそうで、寮の名前が『菖蒲園』という名前になっているのも、実はその名残だと言われています」


「そうだったんですか」


「はい、そうなんです」


 正木さんの言葉に、私は素直に驚く。寮の名前が『菖蒲園』だったことも知らなかったけれど、そんなことを知っている正木さんが素直に凄いと思った。それとも、昔からこの学校に通っていると、その辺りは当然の知識なのかな?


「寮の名前も含め、知りませんでした。教えてくれて、ありがとうございます」


「いえ」


 でも、それ以上、話が続かない。正木さんも話題を振るのが得意ではないようで、またお互い押し黙りそうになったから、私はふと、こんな時間に2人で歩くきっかけになった理由について、疑問をぶつけてみた。


「そういえば、正木さんは何故こんな時間に学校に?」


 私自身も突っ込まれて当然の話なんだけれども、ちょっと気になった。それも、校舎中にこっそり隠れていたなんて、まさか忍者の末裔……!?


 私の脳内妄想はさておき、正木さんは照れるとまではいかないけれど、少しの気恥ずかしさを湛えながら教えてくれた。


「ええっと……さっき先生たちには話したんですが、実は明日のクラス割りを見たいと思って、こっそり入ったんです」


「クラス割りってことは……つまり誰と誰がどのクラスか、っていうのを確認しに行ったということですか?」


 確かに学校のクラス割りというのは、教室の席順と共に学校生活の約6割くらいを決める、気がするくらい重要だと思うけれど……そのためだけに?


「ええ。いつも前日の夕方に先生たちが昇降口に貼って行くことを知っていて……それで、真帆、あ、えっと、友達が同じクラスになれたか見てきて欲しいって」


「なるほど」


 忍者の末裔じゃなくても、この子は意外と肝が据わっていると思う。


「学校の通用門の鍵は友達が寮に住んでいる他の子から借りて、コピーキーを作っていたので、それを借りて入りました」


「用意周到ですね……その友達」


 こちらはこちらで、ルパンか義賊の方の石川五右衛門辺りの末裔かもしれない。


「あはは。まあ、私とは違って、凄く元気な子ですね。それに、色々な部活から助っ人を頼まれたりしても断らないし、活動的だから私もいつも元気を貰っています。中学の頃からのお友達なので、付き合いが長い方ではあると思いますよ」


「ちょっと会ってみたいですね、その子」


 ルパンや五右衛門の末裔じゃなかったとしても、


「大丈夫です。もう1人の友達も含めて、同じクラスだったのですぐに会えますよ」


「そうなんですか。じゃあ、正木さんに会いに行けば会えるのかな?」


「いえ、一緒なのは小山さんもですよ?」


「……え?」


8/20 文章見直し

初っ端から文章が少しおかしかったので修正しました。歩くが2回重なっていました……。

ただ、他には細かい地の文修正以外、修正はなしです。

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