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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第8時限目 変身のお時間 その9

 しかし、毎日こんなのを着けなきゃいけないと考えたら、それだけで着替えが憂鬱になってしまいそう。


「あ、あの、もうちょっと緩いのは……」


「ん、あるっちゃある」


「じゃあ……」


「でも、それじゃああまりサイズアップにならねーぞ」


 そりゃそうだよね、と大隅さんとのノリで返しそうになり、


「そり……そうですか」


 と慌てて敬語に戻す。むむむ、最近はそれなりに砕けた喋り方が多かったから、気を付けないと。


 というか着けている状態が疲れるだけではなく、そもそも1人で身につけられない時点で駄目だと思うのだけど。


 ……え、さっき教えてもらったのをもしかして1人で微調整しろって?


 無理☆


 あ、ごめん、無理があるのはむしろ今の台詞の方だった。


「だが、そもそもそこまで気にするサイズなのか? 悪いサイズじゃねーと思うが」


 そう言いつつ、大隅さんのお姉さんは目の前から両手を小山わたし偽山にせやまに手を伸ばして揉みしだく。


「ちょっ……!」


 何というか、大隅家はスキンシップ多めな家庭なのですかね!?


 大隅さんも一緒の布団に入ってきたりと、割りとスキンシップ慣れしてる感じあったし。いや、それとも女の子同士って抱き合うのくらいは通常のスキンシップ範囲内なの? ますます分からなくなってきた。


「まあ、確かに上には上が居るが、上ばっかり見ててもキリがねーぞ」


 そう言いつつ、ふわっと抱きしめられた。


「どうしても悔しかったら、他のヤツの触って我慢しろ」


「い、いえ、別に触りたいわけでは……なくて……」


「無理にサイズアップ図ったり、無理やり着るものを変えてどうこうするより、こんにゃろーっ! って揉みしだいてストレス発散すんだよ、はっはっは」


「それ、発散される側の人、大変ですよね!?」


 というか、つまるところそれは世に言う八つ当たりというヤツでは!?


 何の解決にもなってませんよね!?


 いや、まあ岩崎さんとかやってたけど、正木さんに。意外とその発散方法、アリなのかな?


「俺ので試してみるか?」


「え、遠慮しておきますっ!」


 やっぱり大隅家は危ない人が多い!


「んま、晴ちゃんの話じゃねーけど、今度俺たちのライブに来なよ。胸のサイズがどうとかなんて気にならなくなっちまうくらい、目一杯聞かせてやるから、覚悟しとけよ」


 額を小突いて、美歌さんがそう言う。


「あいたた……は、はいっ」


 サイズがどうこうは置いておくとして、確かに美歌さんのバンドは純粋に興味がある。ピアノは弾けたけれど、ギターとかはやったことがなかったし、歌だって音楽の時間に練習したくらいしか無かったから。


「そんじゃ、このブラはもう要らないだろうし、脱がすぞ」


「はい、お願いします」


 私が素直にそう言うと、上半身拘束具と言っても良いサイズアップブラを外してくれた。


「ふぅ……やっぱり普通のブラで良いです」


「はっはっは、まーな。おーい、晴ちゃん。これ返してきといて」


 カーテンの向こうにそう言うけれど、返ってきたのは、


「げっ、やっぱ姉貴か」


 聞き覚えのある、美歌さんに近しいアルトボイス。


「……ん? 星歌?」


 無造作にカーテンを開けた美歌さんの前に立っていたのは、腰に手を当てて立っている大隅さん。もちろん、さっきのストーキングとはおよそ思えないギャル姿のまま。


「更衣室から声が聞こえた気がしたから来てみたら、何で小山と一緒に居るんだよ」


「何でだっていーだろ? 何だ、羨ましいのか?」


「羨ましくなんかねーよ!」


 肩を怒らせて即答する大隅さん。いや、力んでそこまで否定しなくても。


「つーか星歌、お前だって何してんだ」


「う、うるせえ。単純に買い物だ」


「ふーん? ただの買い物ねえ?」


 ちらり、と私の方を見る美歌さんに、私がたはは……と緩んだ苦笑いを返すと、悪戯な笑みが再度返ってきた。


「そうかそうか、ただの買い物だったら仕方ねーな。んじゃま、仲良く買い物でもしとけよー」


 ポンポン、と大隅さんの頭を軽く叩いて、美歌さんが去っていく背中に向かって、


「子供扱いすんなバカ姉貴! ちげーって言ってんだろ!」


 ふんすふんす、と鼻息荒く、肩をそびやかして言った大隅さん。


「美歌さん、ライブ行きますから!」


「おう、来いよー」


 私の言葉を背中で受け、軽く手を振った美歌さんは自動ドアの向こうに消えていった。


「……さて」


「ぎくっ」


 私が改まってそう言うと、大隅さんがすすすっ、とカーリングのストーンみたいに遥か彼方に向かい始めたので、


「こっちを見なさい」


 と私は大隅さんの顔をこちらに無理やり向ける。


「あ、あたしは別に、ただ単純に、か、買い物を……」


「その格好でストーキングは流石にバレバレだよ」


「そ、そそそ、そんなことして、してねーっての!」


 両手を左右に振って、慌てる大隅さんだったけれど、まあこの行動だけ見たって、動きが全てを物語っているよね。


「ってか、うちの姉貴は下の名前で呼ぶのかよ」


「え?」


「前に呼び方、下の名前にしろっつったのに、また名字に戻ってただろ」


「あ、ああ、そういえば」


 合宿のときにそんなこと言っていた気がする、かな。多分、大隅さんじゃなくて中居さんが。


「姉貴は下の名前なのに、あたしたちが名字なのはおかしいだろ」


 ……岩崎さんもそうだけど、なんだろうか、うちのクラスって結構競争心というか敵愾心てきがいしんが強い人が多い気がする。


「じゃあ、星っち?」


「そうじゃねえ!」

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