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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第8時限目 変身のお時間 その8

「あ、うん、そうだね」


 怖いお姉さんに目を付けられて、私死ぬわよ! って思った辺りで完全に何しに来たのかが脳からすっぽ抜けていたけれど、落ち着きを取り戻したお陰で、ようやく自分が何故このブラを手に持っていたかを思い出した。


「サイズアップブラ? 何だ、そんなに気にするタイプなのか」


 あっはっは、と笑いながらバシバシ肩を叩かれる。ああ、このノリ、大隅さんっぽい。


「いや、でも割とマジで気にしてるんですよ、こやまん」


「ん、そうか。済まんな、笑っちまって。ふむ……んじゃあ中入れ」


「……え? あ、はい」


 突然、そう促された私が素直に試着室の中に入ると、


「うっし、じゃあ上脱げ」


 何故か美歌さんも入ってきた。


 ……はえ?


「あ、あの……」


「ん? 聞こえなかったか?」


「い、いえ、聞こえましたけど……何故、一緒に入ってるんですか?」


「いや、晴ちゃん、これ着けろとは言ったが、ちゃんと使うには結構コツが必要なんだよ。俺が使い方教えてやる」


「え、あ……あ、ありがとう、ございます」


 多分面倒見が良いんだろうと思うのだけど、2人で入るにはちょっとどころじゃなく狭い。


「こやまーん、美歌姉に色々教えてもらっときなー、にひひ」


 カーテンの向こうから中居さんの声が聞こえてくるけれど、声色と言葉の内容だけで顔を見なくてもどんな顔をしているかがよく分かる。くっ……私があまり女性に免疫が無いことを知っていての狼藉ですね!


「おーい、えっと小山? 大丈夫かー?」


「ひゅい!?」


 狭いせいもあるけれど、結構な耳元でそこそこの音量、そして私の腕辺りを侵食している柔らかいお山のトリプルパンチが脳天直撃したから、


「は、はい、すみません! 脱ぎます!」


 と反射的に服を脱ぎ始めたせいで、


「おっと」


 美歌さんの、何処をとは言わないけれど肘で小突いたりしてしまい、私はまた1対1の近距離謝罪会見を開くことに。


「小山はちょっと落ち着いた方が良いな」


 軽く笑い飛ばす美歌さんはそう言って、私の再度服を脱ごうとした手を止め、


「ほら、バンザイしろ、バンザイ」


 と何だか子供相手みたいなことを言われるけれど、確かに狭いから着替えようにも中々難しい。


 私は美歌さんの言葉に素直に従って、私が両手を天井に向けて伸ばすと、するするっと私の服を脱がしてくれる。


「ふむ……身長は高いが、確かにサイズは俺より小さいな」


 私のフラットボディを見ながらそんなことを言うけれど、そもそもお姉さんにサイズ的に勝てる子はそんなに多くないと思うんですが。というか、本当に私が女の子だったら泣くか怒るかしている気がする。


 大隅さん妹の方もそうだったけれど、大隅家の人は色々思ったことを包み隠して変化球で相手に投げるのではなく、そのままの内容を全力で豪速球のまま投げ込むタイプなのかもしれない。


 大隅さんが素行不良になったのは、単純にこうやってオブラートに包まずに喋ってばかりだから、人とケンカばかりしていたのかなあ、なんて思う。


 ……あれ、それってうちのクラスだと太田さんもある意味そういうタイプだよね。真面目すぎるから、正しいことを全部口に出してしまうというか。


 そういう意味では、少し方向性は違っていても、2人は同族嫌悪というかそれに近しい感覚で嫌い合っているんじゃないかな、って思う。


「おーい、小山―?」


「す、すみません」


「いや、構わねーけど、さっきから大丈夫か? まだ俺が怖いからビビってんのか?」


 私の両の頬を持って、自分の方に顔を向ける大隅さん姉。切れ長な目が私を捉えてくるから、私はすいっとその視線を避ける。


「え、いや……そ、そんなことは」


 単純に意識が別なところで独り歩きしていたことが、大隅さんのお姉さんに悪い印象を与えてしまっていたようだから、私は慌てて首を否定方向に振る。


「いや、別に無理に言わなくてもいいぞ。俺が無理やり入ってきたんだしな」


 美歌さんが、一瞬目を伏せてバツが悪い表情をしたから、再度打ち消しの回答をする。


「いえ、本当に大丈夫です。使い方、教えてください」


「お? 何だ礼儀正しいな。俺ぁ、そういうヤツ好きだぞ」


 ニッ、と笑った美歌さんはそう言って、私に突然抱きついた。


「わわわわっ……」


「こら、動くな。ホック外れねーだろ」


 ……抱きつかれたと思ったけれど、単純にブラのホックを外したかっただけみたい。そうだよね、話の流れから、ロックな人の愛情表現かと思ってしまったのが恥ずかしい。


「で、これを着けるときはだな、まず肩から掛けて――」


 私の腕にくだんのブラの肩紐を通させつつ、


「背中のホックを下から付けて――」


 解説を続けながら、私の背中に手を回し、


「最後は微調整すればオッケーだ」


 と実際に私の肌に触れつつ、私の作り物の山を持ち上げてくれる。


「おし、結構サイズアップになっただろ」


「本当ですね」


 朝着替えるときに見たサイズよりも、目で見て大きくなっているのが分かる……けれど。


「こ、これ、キツイですね」


 今までのは少しゆったりしていたのもあるけれど、結構キツイ、痛い。


 多分、色々と押し上げているからそうなってしまうんだろうなあ。


「まあ、サイズアップブラってのはそんなもんだ。着るだけで寄せて上げて、かつ落ちにくい効果があるっつーだけだからな」


 はあ、改めて……女の子って大変なんだなあ。


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