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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第8時限目 変身のお時間 その6

「じゃあ、他のも着てみてちょー」


「あ、うん、分かった」


 店員さんが持ってきてくれたものだし、折角だからと残りの服にも着替えることにする。


 ただ、色々着替えてみても、中居さんからは、


「うん、良いんじゃなーい?」


 という反応しか返ってこなくて、本当に良いのかどうかちょっと首を傾げる。


 自分としては明るい赤とかピンクとかの系統が多くて派手さを感じるのと、やっぱり胸元が緩やかなのが非常に落ち着かないのが気になるところ。多分、同じものを買った人は結構社交的で、かつ私と近い身長な上に、胸が豊かだったんだろうと思う。


 良いんじゃないを繰り返す中居さんの代わりに、岩崎さんと片淵さんが私の服装チェックをしてくれる。


「うーん、やっぱり準は背が高いし、体がっちりしてるから全体的にタイトで体の線が出るよりも、ウエストだけきゅっと締まってて他は少しゆったりした方が合うかもね」


「確かに、準にゃんはタイト過ぎるとムチムチに見えるねー」


「後は落ち着いた色の方が合うかも」


「んじゃ、こっちの黒のワンピにしてみよー」


 岩崎さんたちの反応に合わせて、再度中居さんが服を選定して、私を試着室に押し込む。


 ま、まあ別に構わないのだけど、何というか……着せ替え人形みたいな扱いをされている気が。


 着替えてみると案外胸の部分の空間が他のものより少ない。さっき言ってたウエストがきゅっとしているから、胸辺りの布が引っ張られてそう感じるのかも。


「お、これじゃね? マジ良くね?」


「うん、準に結構似合ってるかも」


「準にゃんに合ってるかもー」


 今まで着ていたものに比べ、3人の反応が揃って良好だから、私も鏡を見ながらくるりとゆっくり1回転。


 うん、確かに悪くないかも。あまり派手なタイプよりは少し落ち着いた色の服の方が安心するし。


「ありがとうございましたー」


 ……というわけで、私はその黒のワンピースを購入。まあ、ちょっとお高かったけれど。


「んじゃあ、次はリンダ行こっか」


「別に良いけど、リンダ高くない?」


 さっきの服屋でそれなりにテンションが上がったのか、普通に中居さんに話し掛ける岩崎さん。


「コミューで3割引きだし、普段よりは安いっぽー」


「いや、でも3割引きでも、松越内の下着売り場の方が安いと思うけど」


「ノンノン、駄目ぽよ」


 ちっちっ、と中居さんが指を振る。


「今日はこやまんのサイズアップをするために来てるんだから、ちょっと高くてもリンダに行かなきゃいけないのだ」


「あー、そういやそんなこと言ってたっけ」


「てか、岩崎も使ってみれば?」


「うっ。……試着だけにしとく」


 岩崎さんの今の反応はもしかすると、心が揺らいだけれど、プライドが許さなかった的なものかもしれない。


「んじゃ、リンダへれっつごー」


 中居さんに先導された、私たち一行はしばしの時間歩いてから、話題の下着屋さんに到着。


 ……もちろんこういうお店には初めて入ったのだけど、何というか普通の服屋とは全く雰囲気が違う。それがこのお店だからなのか、こういう下着というものを扱っているからなのかは分からないけれど、えも言われぬ……というと何だかいかがわしく聞こえてくるけれど、とにかく男1人ではまず間違いなく入れない雰囲気というか空気がある。もちろん、男1人でそもそも入ることなんて無いけれど、女の子に混じって入るだけでもとにかく落ち着かない。


「こやまん、しゃんとしないと駄目じゃん?」


 こっそり、小声で中居さんが私に耳打ちする。やっぱりバレてた!?


「で、でも……」


「普通に服を決めんのと同じなんだから、変にそわそわしてたらバレるって」


「うう……」


 それは分かっているつもりだし、大分慣れたつもりだったけれど、あくまで積もり積もった“つもり”の感覚でしか無かったんだなあ、と謎の言葉遊びをしていないといけないくらいにはテンパってます。


「それにほら、誰かが履いているものを買う訳じゃないんだし、自分の下着買うだけって考えるぽよー」


 軽く背中をとんとん、と叩いてくれる中居さん。


 ……うん、よし。確かに誰かの下着を見ている訳ではなく、自分の身につける下着を買いに来ただけなんだから恥ずかしくないもん! の精神でいこう。


「んじゃあ……こやまんはコレね」


 お店に入ってすぐ、中居さんが白の上下ペアの下着を私に手渡す。さっきの服屋でも思ったけれど、中居さんって本当に行動力あるなあ、こういうとき。


「それじゃあ……」


 私は何も考えずその2着? 2組? を持って試着室に入ろうとしたけれど、よく見ると全ての試着室のカーテンが閉まっていた。ありゃ、全部使われてる?


「……あ」


 中から人が出てくるまでしばらく待とうかと思っていたら、1つだけカーテンは閉まっているけれど、前に靴が置いてないところが。もしかして、出た人が間違ってカーテンを閉めちゃったのかな。


 とにかく、空いてるなら待つ必要もないとカーテンを無造作に開けると、


「……あ?」


「……」


 丁度、目の前で豊かな2つの山が束縛から開放され、鳴動していたところだった。


 ……いや、中居さん風に言うと「違くて」。


「何だお前、人が入ってんのに試着室開けてくるとかふざけてんのか?」


 抜群のスタイルで、茶色短髪な超怖いお姉さんがカーテンを開けた私を撃ち抜くような視線で睨みつけていた。


 え?


 足元を再度確認しても靴はないのに、中には人が居たのは何故?


 ……いや、よく見たら靴が無いのではなく、隣の試着室に転がっていた。この人、入ったときに自分で靴蹴飛ばしたんじゃないの!? とはもちろん言えず、下1枚以外は全て肌色の状態をばっちり見てしまったからあわわわわわ、と慌てるしかない。


「あ、ああああ、あの、あのの……す、すみすみ、すみま、」


「ちょ、こやまん、中に人……あれ、美歌姉みかねえ?」


「んあ? ……あれ、はるちゃん、どうした?」


 私の目の前でほぼ全裸のお姉さんと中居さんが名前を呼び合っている。


 ……え、もしかして、知り合い?


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