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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第8時限目 変身のお時間 その2

 たどり着いたお店は外観だけ見るとギャル専用店! という雰囲気は無い。でも、中身がどれだけギャルしているお店なのか分からないという不安もあって、私はまだ安堵の息を吐くことが出来ない。


 そんな私が安心出来る要素が思わぬところから飛び出してきた。


「……何、中居も使ってんのHigh-Tamハイタム


 お店の看板を見上げて、岩崎さんが重くなっていた口を開いた。


「あれ、なになにー? もしかして、岩崎も使ってる系?」


「……まあね。安いし、種類多いし」


「だよねー」


 喋る度に頭に少しだけ空白が入るけれど、それでも岩崎さんからは鈍くはあるけれど、ひとまず会話する意思は見られた。その様子からすると、岩崎さんも利用しているお店みたいだから、あまり身構えなくてもよいのかも、とは思えた。


 いや、女子高生のお店に男子高生が入るのはどうなの、という基本的な問題はさておいて。ひとまず、立場上は女の子として入っているということになっているからね!


 ……なんだか泣けてきた。


「んじゃ、こやまん入るよー」


 私に芽生えた心のひとまずの安寧と悲しみを知ってか知らずか、中居さんはお店の自動ドアを開けて中に入っていくので、私と岩崎さん、片淵さんも思い思いのスピードで付いていく。


 お店の中に入ると服屋らしく入ってすぐに『夏コーデを先取り!』とか『今夏のモテカワファッションはこれで決まり!』とか書いているポスターがあちこちに貼ってあったり、マネキンがそのポスターと同じ服装をしていたりするのだけど、あまりファッションに詳しくないし、正直言って興味もない私としては「そうなんだ」の一言で済ませてしまうくらいのものだったりする。うーん……もっと知らないといけないのかもしれないけれど、こういう話には疎いからなあ。


 入ってすぐ、お目当ての服を探そうとキョロキョロしていた中居さんだったのだけど、すれ違いでお店から出ようとしていた茶髪2人の女の子が通り過ぎてから、突然足を止めて中居さんに声を掛けた。


「あれ、ハルじゃん?」


 声を掛けられた中居さんも最初は自分が呼ばれたと思わず、そのまま数歩足を進めていたのだけど、おそらく仇名が自分のものだと気づいたからか、お目当ての服を探すのを中断して振り返った。


 そこからまた数回の瞬きの時間分だけ、中居さんは脳内の人物情報を手繰たぐっている様子だったけれど、ようやく脳内の人物像と一致したのか、


「あれ、もしかしてゆかぴーとぱるにゃん?」


 と目を丸くしながら答えた。


「そだよー」


「おーす」


 中居さんもかなりギャルしていると思ったけれど、この2人は何というか、多分生粋のギャルなんだなと思うくらいにギャルだった。ギャルギャルしいというか。


 かなりキツ目のメイク、本来は太ももくらいまでの長さがあるはずなのにくしゃくしゃにしてしまったからくるぶしくらいまでしかないソックス、罰ゲームなのかと思ってしまうくらい短いスカート、そしてゴテゴテに盛った髪の毛。


 何だろう、こう、住む世界が違うというか、言葉を失うというとはこのことなのかと思った。


 ちなみに片方は日焼けした感じの黒い感じのギャルで、もう1人は中居さんと同じくあまり日焼けしない白系統のギャル。でも、どっちがゆかぴーでどっちがぱるにゃんなのかは良く分からないし、多分知らなくても困らないと思う。


「で、何? 後ろの」


 黒い方のギャルが後ろに居た私と岩崎さん、片淵さんの居る方向を指差す。


「あー、こっちは同クラおなクラのこやまん。後は岩崎と片淵ー」


「ふーん?」


 片淵さんと岩崎さんを謎ギャル2人が一瞥いちべつし、最後に私を見て、


「……いや、デカくね?」


「マジでやべーんだけどマジで」


 ダブルギャルは私の背中を叩いて、あっはっはと大声で笑う。


「あ、あはは……」


 大隅さんと中居さんで慣れたつもりだったけれど、やはり本場のギャルは違うなあと思いました。いや、この2人が本場なのか、大隅さんと中居さんが偽ギャルなのかは知らないけれど。少なくともお近づきになりたいタイプではない感じがあるのは間違いない。


「それで、ゆかぴーとぱるにゃんは買い物ー?」


 提げている袋を見て中居さんが言うと、


「そ。で、ウチらは今からオケりに行くかって話してたとこ」


「そうそう」


 ゆかぴーとぱるにゃんと呼ばれていた2人は、そう言って互いに頷き合う。オケる……はカラオケに行く、とかだったかな。


「あー、良いなー」


「ってか後ろ居なくなってるけどいいん?」


 ゆかぴーかぱるにゃんのどちらかがそう言うから、私と中居さんが同時に振り返ったけれど、確かに後ろに居たはずの岩崎片淵ペアの姿が忽然と……あ、端っこのTシャツコーナーに居た。


「まあ、いいっしょ」


「何、友達じゃないの?」


「こやまんほどではないぽよー」


「こやまん? ってこのでっかいの?」


 でっかいの扱いされてる!?


「そうそう。で、身長に対して貧乳なのが悩み」


「あー」


「確かに」


 どうやらこの界隈の女性陣はズバズバそういうお話をされるようですね!?


 というかそういう白ギャルのかたも適度に控えめだと思いますけど!? って何張り合っているんですかね私は。


 あ、黒ギャルの方は大隅さんや正木さんほどはないけれど……ってそんな情報はどうでもよくて。


「だったら今日、リンダのサイズアップブラ、コミューで友達登録してたら3割引きだし、買ってきたら? ウチもさっき買ってきたし」


 白いギャルがそう言うと、


「そうそう、後で行くつもりー。友達登録はアタシが既にしてるしー」


 と中居さんが反応する。話の流れからして、リンダというのは下着メーカーのことかな?


「あ、コミューやってんなら交換しとこーよ」


「おけ」


 中居さんとモノクロギャルズが連絡先を交換した後、


「そっちのでっかい……えーっとこやまん? はやってないの? コミュー」


 と、黒ギャルの方がこちらを向いてきた。やはりそういう話になりますか……。


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