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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第7時限目 運命のお時間 その30

そして、こういうときに限って、


「よし、小山。随分、あたしのを触ってくれたからお返しだ」


 などと大隅さんが私ににじり寄ってくる訳です。貴女、分かっててやってるでしょ! と心の中で叫んでいたり。


「い、いや、基本的には塩を塗り込むのが目的で……そ、それに最後のアレは不可抗力と言うか」


「問答無用だっ」


 私が言った言葉を返すように、大隅さんが私の上半身に付いている2つの偽山に手を伸ばすけれど、


「こ、これは触っちゃ駄目ってゆーか!」


 腕で覆い隠すようにして、事情を知っている中居さんが援護してくれる。


 でも当然事情を知らない側の大隅さんの次の質問は、


「ん? 何だ晴海、何で触っちゃいけねーんだよ」


 となる訳で。自明の理。


「えっと……あー、アレだよアレ、こやまんのコレは、えっと、アタシのっていうか……いや、そーゆーのと違うんだけど」


 などと手榴弾級の話題を肩に担ぎかけた中居さんが、慌てて否定しながらごにょごにょと言い淀む。何ですかね、この女の子グループの子たちは話題暴発系女子ばかり集まってるんですかね。


「は? 何だ。小山が大きいの好きなら、お前は小さいの好きだったのかよ」


「ち、違うぽよー」


 疑惑の視線を送る大隅さんと必死に否定する中居さん。


「違わねーだろ」


「そうじゃなくて、こやまんのコレはその……」


 言葉に窮していると、


「だー、うっせ。とにかく! お返しだ!」


 そう言いながら大隅さんが、中居さんの手を払い除けて、私の胸のそれに掴みかかり――


「あっ」


 ポロリ、と取れた。


 ……取れて、しまった。


 ああ、終わった。これで全てが終わってしまった。小山先生の来世をご期待下さい!


 脳内で『小山転生~女装男子が生まれ変わって本当の女の子に!?~』などという現世転生系小説の題名が脳裏に浮かんだ辺りで、


「…………小山」


 大隅さんが私をめつけてきたから、現実に引き戻される。


「あ、あの――」


「そんなに胸、小さいこと気にしてたのか……」


 深い溜め息と共にぽんぽん、と肩を叩かれた。


 ……あれ?


 私の想像していた反応と違いますね?


「準、仲間だから大丈夫だよ!」


 岩崎さんも、いつの間にか私の手を掴んで、がっちり握手を交わしているし、


「いやー、ほら。控えめなのはステータスだと思うから、気にしちゃ駄目だよー?」


 片淵さんも目を細めてそんなことを言っているし、


「わ、私も小さくても好きですから!」


 正木さんに至っては、やっぱり謎の爆弾発言をしているし。


 ……ああ、そっか。


 もしかすると股間の方のはまだ張り付いているから、単純に上半身が真っ平らなのを気にしている系女子だと思っているのかもしれない。下着型だったことが救いだったのかも。


 つまり、助かった、と?


 いや、でも本当に気づいていないの?


 あんぐりと口を開けていた中居さんは、わたわたと話を合わせる。


「しかし、晴海。お前がさっきこの胸があたしのだとかなんだとか言ってたのは、お前の嵩増し用のパッド渡してたのか?」


「ち、違うじゃん! このこと知ってたから、隠してあげようと思っただけだし。うーん、でも……」


 ニヤリ、と良いことを考えついたみたいな中居さんは、


「こやまん、胸がコンプレックスだって気づかれちゃったんだから、折角の機会だし、サイズアップブラとか買いに行こうじゃん?」


 なんてことを提案してきた。サイズアップブラ?


「お、何だ、面白そうだな。あたしも混ぜろよ」


「いやいやー、星っち考えてみなよ」


 話をしながら冷静を取り戻したらしい中居さんは、大隅さんにチッチッと指を振る。


「なんだよ」


「何でこやまんがこんなの付けてたか考えてみそ」


「ん? そりゃあ……」


 言いにくそうに私の表情を伺いながら、


「小さいからだろ」


 と鼻息と共に言葉を吹き飛ばした。考えた割には随分とストレートですね。


「いやあ、結構ストレートに言ったね、星っち」


 どうやら同じ感想だった中居さんは、こほん、とわざとらしく咳払いして、言葉を続けた。


「それだけ胸を気にしているこやまんが、ブラを選ぶところを星っちとかのりぴーとかみたいに大きいコたちの横で選ぶ悔しさ、考えたことある? アタシに謝るべきじゃん!」


「お前にかよ! ってかお前もそういうもんなのか?」


「いや、アタシは別にどーでもいいけどさー。こやまんみたいな気の小さいコはそういうもんなの! 星っち、デリカシー無さすぎじゃん!」


 大隅さんが、悪いことをしたという表情をこちらに向けてくるのだけど、もちろん言うまでもなくそんな気は一切ない。


 ただ、そういえば岩崎さんが正木さんと一緒に下着を買いに行くときに気にしているみたいな話をしていたから、やっぱり女性同士でもそういうのあるのかもしれないので、


「あ、あはは……ま、まあ、そういうのも、無いわけでは……」


 と誤魔化し笑いをしておいた。


 ……というかのりぴーって正木さんのこと?


「ということで、こやまんはアタシと買い物に――」


「ちょっと待ったーっ!」


 大仰な動きで待ったを掛けたのは、件の控えめサイズを気にしているから正木さんと一緒にブラ買うの気にしちゃう系女子の岩崎さん。


「準とブラを買いに行こうって話をしてたのはあたしが先なんだから」


「何、明日買いに行こうって話してたん?」


 中居さんが私を見るから、素直に首を横に振った。


「べ、別に明日とは約束してないけど、準と一緒に買いに行こうって話はしたよね!?」


 私の肩を掴んで、岩崎さんが激しくがくがくさせるので、


「う、うん、それ、は、話、を、した、よね」


 言葉がコマ送り動画の音声みたいになっていたけれど、そう答えた。


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