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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第7時限目 運命のお時間 その24

 意外と塩サウナの方は人気が無いのか、それともたまたまそのときは人が居なかっただけなのか、とにかく私たち以外にお客さんは誰も居なかったお陰で、大隅さんたちは野生感ゼロで日向ぼっこ中の家猫みたいに全身を伸ばしたまま長椅子に寝転がっていた。流石に他の人が居たら……やらないよね?


 機嫌の良し悪しでは間違いなく悪い方だけれど、この2人に会ったからと引き返すのが癪だったのか、岩崎さんは2人と離れたところに、とすん、と音を立てて不満アピールしながら座る。


「おー、こわ」


 鼻で笑うような大隅さんに、盛大な睨みつけ行為を行う岩崎さんだったけれど、


「あー、そだそだ。こやまんさー、ちょっと体に塩塗ってくんない? 汗で結構流れちゃったからさー、塗り直しちょーめんでぃーなんだよねー」


 体を起こした中居さんが、相変わらずの能天気ボイスで両手を広げ、全受けのポーズでニヤニヤしながら言う。


 ……いや、面倒なんじゃなくて、単純に私をからかいたいだけでは?


「ほらー、早くしてちょー。頭から足まで、全部しっかり塗らないと意味ないしー」


 海辺でサンオイルを塗って、的なノリで言う。


 えっと……中居さんの発言からすると、全身に塩を塗らないといけないということは、すなわち全身を隈なく触ることとも同義ってことだよね?


「え、ええっと……」


 状況把握をしたお陰で逡巡する私に、


「はーやーくー」


 駄々っ子みたいな催促をする中居さん。


 それを横目に見ていた岩崎さんは、


「準、相手にしなくていいよ」


 ふんっ、と鼻息荒く視線を逸したまま言う。


 そうすると、黙っていないのが大隅さんで、わざわざ対抗するかのように、


「おい小山。晴海が終わったら、あたしもよろしくな。そういや、小山って女の癖に他人の裸に全然耐性ねーって話だったし、今の内にあたしらで慣れとけよ」


 とようやく全身を起こして言う。


 そうすると、今度はこだまみたく、


「小山さん、そんなことより私たちに塗って貰えませんか?」


「そうそう、準にゃん。折角だし、アタシたちに塗って欲しいんだけどなー」


 なんて正木さんと片淵さんが。ああもう!


 私が困惑しているのを尻目に、


「何だよお前ら。あたしたちが先に小山に塗ってくれって言ってたんだぞ」


「そうぽよー」


「あんたたちみたいな不良人間に小山さんは渡せないだけだし」


「んなことはお前が決める話じゃねーだろ。小山がどうしたいかだ」


「いやー、準にゃんは優しすぎるから、無理やりされた命令でも素直に従っちゃうんだよねー」


「んだと? あたしたちが無理やり命令してるってのか?」


「そうですよ」


「あん? 正木まで、てめーら……!」


 という感じで言い合いがヒートアップ、しっちゃかめっちゃかしていた5人だったけれど、大隅さんが怒りに任せて立ち上がったところで、


「いい加減にしてください!」


 私が最大音量で怒鳴ると、5人がぴたっと動きを止めた。ああ、この場に私たち以外、誰も居なくて良かった。


 全員が私の声に驚愕して思考停止しているのを確認して、私はゆっくりと5人を見回し、大きく深呼吸してから言う。


「大隅さんたちと正木さんたちの仲が悪いのは分かっています。そして、私を取り合っているのは、取り合われている側としては嬉しい面も無いわけではないです。ただ、目の前で露骨に喧嘩されるのは非常に不愉快です」


 全力ストレートで私がそう言うと、


「うっ……で、でもこの2人が……」


 岩崎さんがすぐに言い訳しようとするから、


「問答無用です!」


 私は再度ぴしゃりと言い放つと、岩崎さんはまた静止した。


「仲が悪いのは悪いで結構ですが、このままでは後から入ってきた他の人にも迷惑が掛かります。なので――」


 怒り顔で私は指をコキリと鳴らし、


「――全員まとめて相手します。文句は聞きません」


 と言い放った。


 実に横暴だと思ったけれど、ここまで言わないとこの5人はいつまでも言い合いを続けるだろうから、こうでもするしかない。


 私は盛ってあった塩を掴み、


「中居さんから塗りますよ」


 と言いつつ、中居さんの隣りに座って、肩を掴む。


「…………あ、あー、うん、分かったじゃん?」


 一時的に幽体離脱していたのか、気のない返事をした中居さんだったけれど、


「よし、こやまん、来るがいい!」


 何故か、悪の幹部とかラスボスみたいな感じで待ち受ける中居さんの首筋から順番に塩を塗り込む。


「あ、こやまん。あんま強く擦ったら痛いから駄目だかんね。あくまで、かるーく塗る感じでよろぴくー」


「うん、了解」


 そう言いつつ、私は少し躊躇いながらも2つの丘陵にも手を伸ばす。


「そーそー。胸もちゃんと塗ってよ?」


「分かってる、よ」


 唯一、私を男だと分かっているのに、こういうことに1番積極的な中居さんは実はマゾ……というかこういうのが好きなんじゃないかと思ってしまう。普通、単純にからかうためだけにここまで体を張れるかと自問してみても、私の脳内からは「NO!」と即答されるし。


 うーん、考えれば考えるほど不思議な子だと思う。


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