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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第7時限目 運命のお時間 その21

「あれ? でもこやまんたちはジャンプラじゃなかったん?」


「うん、フラワーリバー? とかいうアトラクションで濡れちゃって」


 私の言葉に、くりくり目で顔を見合わせて大隅さんと中居さんが首を傾げた。


「え? あれってただ川下りしながら花見る系アトラクションじゃなかったっけ?」


「だよな? あれで濡れるってどういうことだよ」


 ああ、なるほど。この2人もこのテーマパークのことは知ってるんだ。いや、もしかすると私みたいに知らない方が珍しいのかもしれないけれど。


「確かにそうなんだけど、途中で大きな蜂に襲われて、皆逃げ惑ってたらボートが転覆して……」


「あちゃー、そりゃガチしょんぼり沈殿丸だわー」


「マジかよ。良く生きてたな。いや、実はもうゾンビになってるのか?」


 のんびりと反応する中居さんと、割りと真面目に心配してくれているのかやっぱりふざけているのか良く分からない大隅さん。


「あっはっは、星っちゲームに毒されすぎじゃん?」


「うるせー。晴海だって良く分からん例えばっかするだろ」


「うははー」


 何、その笑い方。


「で、それはさておき……髪留めって、お前ココ来たときには持ってただろ」


「いやー、髪留め何処置いたかなーって」


「は? お前、置いた場所を忘れたのかよ」


 呆れた口調で言う大隅さん。


「ジャンプラでおしおき放水受けたときに1回外したんだよねー。で、その後どうしたかわからんてぃー」


「いや、それは完全にそのジャングルプラネットで置いてきたとしか……」


「マジぽよ? うわー……ま、いっか。どうせ100均で買った髪留めだし」


「ったく、とりあえず風呂上がってから探すぞ」


「ラジャりた! んじゃ、先にお風呂入ってるー」


 ひょこひょこと足取り軽く浴槽に向かう中居さんに、自分の髪の水滴を落とし終えた大隅さんが立ち上がる。


「ちょい待て、あたしも行く。んじゃ小山、またな」


「うん」


「まあ、どうせこやまんも浴槽ですぐに会うぽよー」


 怒涛の会話を済ませて、大隅さんと中居さんを見送ると、


「……小山さん」


 即座に左から不満そうな声が聞こえたから、私はしまったと思いつつも作り笑いを貼り付けつつ、振り返る。


「え、ええっと、ほら、クラスメイトだから……ね」


 そういえば岩崎さんから、あの2人とは仲良くしないほうが良いって言われていたのに、あの2人と目の前で仲良くしているのを見たら、一言物申したいのも確かに分かると思う。


 私は何と言い訳すべきか悩み、やっぱり何も言い訳しないほうが良いだろうと思って素直にそう言ったのだけど、意外にも岩崎さんの口から転がり出てきた言葉は別物だった。


「タメ口」


「……え?」


「小山さん、あの2人とはタメ口なのに、あたしたちとは敬語だよね」


「え、あ、そう……ですね」


 大本の原因は、大隅さんがタメ口にしろ、って言ったからタメ口を使うようにしただけで、そもそもはあまりタメ口を使う方では無かった。だから、正直なところタメ口なんて使う方が珍しい方ではあるのだけど。


「じゃあ、小山さん……いや、準。今から敬語禁止」


「え? えええ?」


 突然、むすっとした表情の岩崎さんがそんなことを言い出した。


「準、良いよね?」


「え、えっと……」


「良 い よ ね ?」


「はい、あ、じゃなくて、うん、分かった」


 有無も言わせない岩崎さんの口調に、私は素直に頷く以外の手段を取る方法は無かった。


「良し! ……で、早く体まで洗ってお風呂入ろーよ」


「そうだね」


 頭からシャワーを浴びた岩崎さんが、私の隣でじっと私の一挙手一投足を見ながら待っている。


「……え、ええっと、何?」


「んーん。何でもない」


「ええ?」


 な、何だろう。凄くやりにくい。


 岩崎さんを気にしないようにして、私がシャワーを浴びていると。


「小山さんってさ」


「へ? あ、うん」


 岩崎さんに声を掛けられて、私の手が止まる。


「思ってたよりも、結構体しっかりしてるよね」


「そ、そうかな?」


「そうそう。スポーツ選手っぽいっていうか、何ていうか。あたしも割りと部活ほとんど毎日やってたときとかは結構筋肉付いてたけど、小山さんほどがっちりしてなかったし、部活無くなって運動しなく鳴って少しお肉付いたから、羨ましいなーって」


 そう言いつつ、私の二の腕とか背中とかお腹とかを遠慮なしに触ってくる。もしかすると、中居さんのスキンシップに対抗しているんだろうか。


「うーん、身長も高いし、羨ましいなー」


「身長高いと地味に大変なことも一杯あるんだけどね」


「服が無いとか?」


「それもあるけど、普通サイズで買った布団が小さくて足が飛び出すとか」


「うわ、確かに地味ぃに嫌」


 地味に、のところをやや強調してそう言う岩崎さん。


「親の実家の鴨居に頭をぶつけたことは何度もあるよ」


「ああ、よく聞くよね。でも、見つける側からすると見つけやすくて助かるんだよね。人混みで探しやすいし」


「そう、だからその分、色んな人から見られるんだよね」


「……あー、確かに大きい人見ると、ついつい見ちゃうよね。身長高いのも大変なんだ」


 岩崎さんがそう笑う。


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