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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第7時限目 運命のお時間 その12

「さて、これ食べたら次はどうしよっかねー?」


 ラブラブパフェとかいいつつ、実際に注文してみたらどう考えてもラブラブなカップル向けではなく、女子会用みたいな5、6人用の大きなパフェを皆で取り崩しながら、片淵さんが机に広げた地図を取り出す。


「占いの館は恋愛運と金運と……」


「えー、占いはもう良いよ」


 読み上げる片淵さんの言葉に、椅子の上でとろけてだらけている岩崎さんが言う。私も今日は結果を含めて嫌な予感しかしないから、同意を示すように頷く。


「ありゃ、よっぽど大変だったんだねえ、2人共」


「そうみたいですね……私もちょっと……疲れました」


 正木さんも少し眉をひそめる表情で疲れを表している。


「そういえば、正木さんたちのアトラクションは何だったんですか?」


「あー、アレアレ」


 片淵さんが指差したのは、フードコートからそれなりに離れた場所にあるけれど、大きくうねった線路が見えるジェットコースターだった。


「……アレですか」


「紀子、ジェットコースター苦手だもんね」


「うん……」


「お、お疲れ様でした……」


 今度は私が労う番だった。


「うーん、じゃあどうしようかねー」


「んじゃあ、アトラクションを好きに選んで乗ってみる?」


「え? そんなこと出来るんですか?」


 あくまで占いの結果でアトラクションを選ぶことしか出来ないと思っていたのだけど。


「出来るよー」


 疲れを癒やすように甘いものをせっせと取り込んでいた岩崎さんが答えてくれる。


「それなら最初からアトラクションだけで良いような」


「いや、まあそうなんだけどさ。というか、元々はただの遊園地だったよね?」


 岩崎さんの言葉に「うん」と反応した正木さんは私に向き直って説明してくれる。


「元々は単なる遊園地だったんですよ。ただ、あまり特徴が無いこともあって、客足が遠のいていたので、解決策として占いと遊園地を掛け合わせたテーマパークにしたとか聞いてます」


「そういえば、丁度上手い具合に占いブームとかもあったよねー」


 岩崎さんの言葉に、私の頭の中に疑問符がぴょこんと立ち上がった。


「占いブーム?」


「はい。あ、もちろん、占い人気自体は昔からあるんですが、テレビとか雑誌で頻繁に占いの話題が取り上げられたりして、それ以降は人がかなり増えたみたいです」


「あれ、小山さんはあまり見ない? テレビとか」


「いえ……部屋にテレビが無いので」


「「「えっ!?」」」


 私の言葉に、同時に3人がこちらをまんまる目で見る。


「え、ええっと、やっぱりおかしいですか?」


「テレビ見ないの?」


「はい、全然。あ、ニュースなんかは寮のテレビで見てたりしましたが、それ以外は……」


 私の答えに甚く驚く3人。ううむ、これ大隅さんと中居さんの2人と同じ反応だって言ったら……ううん、やめておこう。


「なるほどー。まあ、そういう人も居るんだなー」


「寮の部屋ってテレビ無かったっけ? あ、確かに無かった、そういえば」


「じゃあ、ドラマとかも見ないですか?」


「はい……」


 何だか悪いことをしているような気分になってくるけれど、


「……よし、この話は終わり! 次のアトラクション選ばないとねー」


 と強制的に片淵さんが話を打ち切ってくれたから、他の2人もそれに乗ってくれた。


「んじゃ4人で出来るやつやろうよ。あ、ほら、ジャングルプラネットとか」


 岩崎さんがアトラクション名を出すと、怪訝な顔をする正木さん。


「真帆、ああいうアクション的なの好きだよね」


 正木さんのやや拒絶が混ざった反応に、私がどんなアトラクションなんだろうと脳内で名前から連想ゲームをしていると、


「船でジャングルを回って、襲ってくる野生動物を撃退して得点を稼ぐゲームなんだよねー。まあ、ジャングルの風景はデジタル映像で、船もその場で映像に合わせて揺れるだけだけど、占い結果でアトラクションが決まった場合は、友情運とか愛情運がどれだけ上がった、なんて結果も出るから結構グループでワイワイするのには良いかもねー」


 と片淵さんが補足説明をしてくれた。ありがとう、片淵さん。


「でも紀子、ジェットコースターはあまり好きじゃないでしょ? かといって、カップルならまだしも、この年になって女4人でメリーゴーランドとかコーヒーカップとか無くない?」


「そうかもしれないけど……」


 煮え切らない反応の正木さんに、私が質問する。


「正木さんはどんなアトラクションが好きなんですか?」


「え、あ、そうですね。フラワーリバーっていう、左右に花壇がたくさん並んだ中を小さなボートでゆっくり流れるアトラクションが好きなんです」


 正木さんらしいと言えばそういう気はするけれど、


「えー? ただ乗ってるだけじゃん、あれ」


 とやっぱり岩崎さんが不満を漏らす。


「どれもちゃんと手入れされているし、色合いとかも考えて配置されてるから見てて楽しいよ」


「でも――」


 正木さんと岩崎さんが喧嘩というほどではないけれど、言い合う姿を見て、むしろ何故この2人の方が友情度が高いのかなと思ってしまう私が居る。


 いや、さっきの友情の館で測ったのはあくまで”友情運”であって、単純な友情とはちょっと違うのかもしれないけれど、それでも友情度は高くならない気がしないわけでも……。


「よし! じゃあこうしよう!」


 やいのやいの言っていた正木さんと岩崎さんに、満開笑顔の片淵さんが言う。


「どっちも乗ろう! オッケー?」


「あ、はい。それなら……」


「んまー、やっぱりそれが1番早いよね」


 案外あっさりと両者譲った。なるほど、このお互いの身の引き合いが仲が良い理由なのかな? それとも、この辺りは片淵さんの人柄なのかな。


「よしっ。で、準にゃんはどこ行きたい?」


 3人のやり取りを見ていたら、突然話を振られ、私は少し考え込んでから、


「皆に付いていきます」


 と当たり障りのない回答をした。


「自分が無いなー」


「良いんです。私、ここ初めてなので、どれでも新鮮ですから」


「あ、そっか。んじゃ、これ食べ終わったら移動で!」


 片淵さんの言葉に頷く私たちだったけれど、ふと何やら思い立った片淵さんは、


「そういえば、このパフェってさ、ラブラブパフェとかいうんだっけねー?」


 と言いつつ、スプーンをざっくりとパフェに差し込んだ。


「ああ、まあそうらしいね」


「じゃあさ、せっかくだからパフェもラブラブな感じで食べないといけないんじゃないかなーとか思うんだけど、どうだろ?」


「ラブラブって言っても……女同士でどうするんですか?」


 正木さんの言葉に、片淵さんがパフェに刺さっていたポッキーを引き抜いたかと思うと、


「小山さーん、ポッキーゲームとかしてみないー?」


 と言いつつ、チョコレート側を私に咥えて口を突き出した。


 ……えっ?


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