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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第7時限目 運命のお時間 その11

「で、このパフェは奢りってこと? ってことは食べちゃってもオッケーな感じ?」


 もしゃもしゃ、パフェに伸ばしたスプーンを口に運んで片淵さんが言う。


「いや、もう食べてるし!」


「にゃっはっは。いやー、ちょっと甘いものが欲しくなっちゃってねー。スプーン4つ付いてたから良いのかなーなんて」


 ごめんなさい感一切無しの片淵さんがそういうけれど、まあでも正直疲れて甘いものを脳も体も欲しているから、私もとりあえずスプーンを生クリームとアイスが積層されたところに差し込む。いただきます。


「でも、ほんっと疲れた。ねー、小山さん」


「ええ、本当に」


 私と岩崎さんが同時に肩を落としたのを見て、


「お疲れ様でした」


 正木さんが、今食べてるパフェみたいな甘い声でねぎらってくれる。


「でも、まさかクラスメイトのお母さんと会うなんて思わないよねー」


「そうそう! びっくりしたよ、小山さんが桜乃のお母さんだって言うから」


 片淵さんの言葉に対する岩崎さんの反応に、


「そういえば、岩崎さんは桜乃さんのお母さん、知らなかったんですか?」


 と尋ねた私だったけれど、返ってきたのは、


「当然じゃん。あたし、別に桜乃と仲良くないし。っていうか、桜乃自身、クラスで浮いてるし」


 と身も蓋もない返しをした岩崎さん。まあ、ちょっと変わった性格はしていると思うけれど、そこまで言い切ってしまうのは可哀想だと思う。


「というかあれだねえ。準にゃんって、そういうちょっと浮いた子とか、クラスに溶け込めないタイプの子を構っちゃう系女子なんだねえ」


 にゃは、と笑い声を上げながら、片淵さんが言う。


「あー、確かに。工藤とか大隅とか中居とか、あの辺りとも案外仲良いし。ホント、誰とでも仲良くなれるんじゃない?」


「いえ、そんなことは……」


「小山さん、優しいですからね」


 奥さんが旦那さんを褒められたみたいな表情の正木さん。何となくだけど、正木さんって私に肩入れしすぎなんじゃないかなって思うことが偶にある。私の考えすぎかな。


「あ、ほら、太田さんとは……」


「あー、そういやなんか太田と何かやりあってたらしいじゃん?」


「え、その話って……」


 あの時は私と大隅さん、中居さん、太田さんの4人しか居なかったような。太田さんが喋ったのかな。


「情報入手経路は言わないけど、ゴールデンウィーク入るちょっと前にある子から聞いたんだよね、小山さんと太田と喧嘩してたって。……ま、太田はアレでしょ。小山さんの逆パターンで、多分誰とも仲良くなれないタイプだよ、うん」


 ばっさり肩口から切り捨てるような言葉で岩崎さんが言う。私が否定語を選んでいたら、


「まあ、ちょっと太田さんは何でも厳しすぎるからねえ。アタシもスカート短すぎだとか、このツインテール作るのに使ってるゴムの色が明るすぎるとか、結構言われたなー」


 片淵さんも岩崎さんの言葉に相乗りする。そういえば、あまり友好関係で好き嫌いが無さそうな片淵さんも、太田さんは苦手って言ってたっけ。


「まー、ほほたはさてほき、ひゃさしふぎるのもふぁめだよ」


「あの、岩崎さん。ちゃんと口のものを飲み込んでから喋ってください」


 全く何を言っているか分からないです、はい。


 岩崎さんはもごもごとしばらく咀嚼をしていたけれど、ようやく口を止めてから、


「太田はさておき、優しすぎるのも駄目だよ、小山さん。存在感がない工藤とか桜乃とかはまだ良いけどさ、大隅とか中居と仲良くすると、教師に目付けられるかもしれないから」


 と言い直した。


「まあ、準ちんが仲良くしたいのも分かるんだけどねー」


 再び返す言葉を選んでいると、先んじて片淵さんがそう前置きをしながら、言葉を続けて発した。


「それまでの素行が悪かったから、仕方がないんだよねー。先生たちもあの2人は生徒指導の範疇を超えてるとか言ってたりするし。あ、ただし咲野先生は別だよ? 担任っていうのもあるけど、ちゃんとあの2人も生徒として見てくれてるみたいだからねー」


「ま、いくら小山さんでも、太田と大隅と中居の3人は絶対まともにならないって。他にもヤバイの居るけど」


 まだ居るんですか、と心の中で呟く。


「分からないですよ?」


 私の答えに、んーと考えて岩崎さんが考える。


「まあ、どうしてもって言うなら、先生が居ないところ……まあ、寮とかで仲良くすればいいんじゃないかな。あたしは無理だけど」


 きっぱりという岩崎さんに一抹の寂しさを感じるけれど、


「私も、あまり大隅さんと中居さんとは仲良くしない方が良いと思います」


 優しさの塊のような正木さんまでそうはっきり言うから、私はもう二の句を継げなくなった。


 きっと、自業自得な面もあるんだろうし、うちの妹にカツアゲしようとしたとか、もちろん悪いところもあるけれど、話してみれば良いところもあるんだって分かると、もう少しくらいは認められないかなって思うのは考えが甘すぎるのかな。


「ま、もしあの2人が真面目に授業出るようなことがあったら、あたしも真面目に授業受けようかな」


「つまり、普段は真面目に受けていないということですね」


「あっはっは。まあ、眠気には勝てないし」


 そう言いながら、スプーンを動かす手は止めない岩崎さん。


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