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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第7時限目 運命のお時間 その6

 岩崎さんを救出する策を練りながら部屋を足早に見て回る。でも、最初部屋を見て回ったときは、あの宝箱しかなかったし……と心の声で呟いている途中、


「……あれ?」


 岩崎さんの居たところからそんなに離れていない、茶色の壁の一角に青色に光る謎のボタンが自己主張していた。あんなのあったっけ。


 ……もしかすると、何か仕掛けが発動する度にこの部屋の中の別の仕掛けが現れるようになっているのかな。そう考えると、ゲームとしては面白いかも、ってそんな暢気なことを言ってられないんだった。


「えい!」


 ボタンを勢い良く叩く。良く考えれば、罠だったかもしれないとかそういうことを考えるべきだったのかもしれないけれど、そこは結果オーライ、ボタンが沈むと同時にギリギリ……という歯車が回るような音が背後でしたから振り返ると、


「あいたーっ」


 ゴン、という鈍い音と共に顔面から岩崎さんが地面とキスしているのが見えた。地面までロープが下がっているから、さっきのボタンで下りてきたんだと思うけれど、結構な速度で落ちたみたい。い、痛そう……。


「……だ、大丈夫ですか?」


「大丈夫、だよ……」


 岩崎さんが顔面を服の袖でごしごししようとするから、私は慌ててポケットに入っていたハンカチで岩崎さんの顔を拭う。


「ん、ぷはっ、ありがとう小山さん」


「いえ。でも、すぐに降りられて良かったですね」


「ホントにね。っていうか脱出ゲームとか言いながら、頭使うんじゃなくて微妙に体力勝負なのが逆に腹が立つんだよね! 小山さんもそう思わない?」


 あ、今「岩崎さんはさっき頭を使ってましたよね」と言い掛けたけれど、幾らなんでもその話は下らないと脳内会議で全面否定されたので、代わりに、


「そうですね……」


 と同意しておいた。


「後、友情運を上げるアトラクションとか言ってたから、迷路の中を2人で持った大玉落とさずにクリアするとか、相手の好きなものを当てられないと次に進めない部屋とか、そういうの期待してたら、なんか捕まったり吊り下げられたり、変なのばっかりじゃん!」


「それは確かに思います」


 岩崎さんに言われるまで、自分でもさっき言っていたのにすっかり『友情運を上げるアトラクション』ということを忘れていた。


「まあ、片方が捕まっている間にもう片方が助けに行くという友情ゲームなのかもしれませんが」


「男子同士ならそれでもいいのかもしれないけどさ。コレ、どう考えても女子同士でやるやつじゃないよ!」


 確かにダンジョン内で色んなトラップを掻い潜ってクリアする、って考えると男同士なら友情が芽生える可能性はあるけれど、女の子同士でやるものか? と聞かれれば確かに疑問符は付くかも。


「ホント、こんなの真面目にもうやってらんないよね。さっさとクリアしてもうここ出ようよ」


 スカートの砂を払って、忌々しげに岩崎さんが立ち上がった。


「そうですね」


「さっき探したときに出口見つかった?」


「いえ。でも、どうやら1つイベントが進むと新しい扉が出てくるみたいなので、今から探せば見つかるかもしれません」


「オッケー、んじゃ探しに行こー!」


「おー」


 ようやく少し元気になった岩崎さんと共に部屋を探索すると、予想通り新しい扉が部屋の隅に現れていた。


「あ、ホントだ。小山さんの言った通り、新しく扉が出来てる」


 そう言う岩崎さんは、流石に2連続でトラップに引っかかったことから扉に近づくことに対して二の足を踏んでいるようで、むしろ歩くペースを遅めて私の横を完全キープした。


「で、どうしよう?」


 ちらっ、と私の腕を取って言う岩崎さん。うむ、これは……あれですね。


「私が開けましょうか」


 私がそう提案すると、安心した表情で頷いた。


「そうしてもらえると嬉しいな。正直、吊るされたときの痛みもまだ残ってるし」


 足首辺りに残っている縄の痕を擦りながら岩崎さんが言うから、私は頷いて扉のノブに手を掛けて、ガチャリと回す。


 ゴゴゴゴゴ……。


「ちょ、ちょっと何?」


「いや、えっと、分かりません」


 突然の大きな音と足元の振動に、背後に控えていた岩崎さんが私に全力で抱きつく。


「きゃーっ、きゃーっ!」


「ちょ、ちょっと落ち着いてください」


「こ、きょやましゃん……!」


 もう呂律が回っていない岩崎さんを、引き剥がそうかと思ったのだけれども、意外に岩崎さんの張り付きパワーが強く、私が引き剥がす前に振動と音が収まった。


「……だ、大丈夫なの?」


「分かりません。が、まあ行くしかないかと」


「う……」


 両目を瞑って私の左手を握る岩崎さん。もう好きにしておいてもらおうと、左手をそのままに、私は右手で扉のノブを再度回すと、今度は音がしなかった。


 代わりに、その扉の向こうを覗き込むと、小さな電球が上からぶら下がっているだけの薄暗い部屋が見えた。


「何かおどろおどろしい雰囲気のところですね」


「うう……何でこんなことに」


 岩崎さんが半分絶望、半分泣きの状況で私に抱きつく。ええ、私も同じ気持ちです。


2017/10/25 誤字修正

「そうやら1つイベントが進むと新しい扉が出てくるみたいなので」

「どうやら1つイベントが進むと新しい扉が出てくるみたいなので」

初歩的な誤字です。

ご指摘いただきましたので、修正しました。

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