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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第6時限目 内緒のお時間 その13

「で、結局勉強するんじゃん!」


 机に突っ伏して、ひーん! と半泣きになりながら、岩崎さんが愚痴る。


 お風呂上がり、私たちは食事を済ませた後、また私の部屋に集まったのだけど、ローテーブル周りに集まってノートを岩崎さん除く全員が開いたから、そんな岩崎さんの恨み言が出たという流れ。


「うー、お風呂で今日は勉強無し! って言ってたからパジャマトーク的なのを期待してたのに!」


 不服を申し立てる岩崎に対し、片淵さんが恥ずかしそうな笑いで答える。


「いやー、そう思ってたんだけど、全く勉強しないのはアタシが心配になっちゃってね。申し訳ないけどちょっち付き合ってもらえんかねえ?」


 そう言いながら、ちらりと片淵さんが岩崎さんを見ると、


「……そう言われると断れないじゃん」


 と言いつつ、姿勢を正した。優しい。


「で、何の科目するの?」


「んにゃー、それがね……」


 言葉の最後を濁しながら、私に視線を向ける片淵さん。


「大丈夫です。片淵さんが期待しているパジャマトーク的なのをするだけです」


 片淵さんの言葉を引き継いで、私が言葉を走らせる。


「へ? いや、でもノート開いてるじゃん」


 私は岩崎さんの言葉に答えず、逆質問でこんなことを聞く。


「岩崎さんは、授業はちゃんと起きてますか?」


「え? う、うーん……どうかなー? あはは」


 突然の私の言葉に、視線を空中遊泳させる岩崎さん。うん、大体予想通り。まあ、自分でも寝てるって言っていたし。


「例えば、昨日の山井先生の授業でどんな話をしていたか覚えてますか?」


「え? 数学の? あーいや、全然」


 即答した岩崎さんに、私は変則的な質問を投げ掛ける。


「飼っている犬が脱走して、捕まえるのに苦労したとか」


「……ん? あれ、そういう話?」


 私の回答に目を丸くした岩崎さん。


「そういう話です。授業中に先生が話していた勉強に関する内容はあまり覚えていなくても、雑談とか、直接授業に関係ない雑談って結構覚えているんじゃないかなと思いまして」


「あー、確かにそういや、確かに飼っている犬がどうとか言ってた言ってた」


 岩崎さんの反応を見て、片淵さんが代わりに言葉を続ける。


「で、犬の散歩中に靴紐が解けたからって、公園に刺さってた杭に散歩紐を掛けたら、実は杭が既にボロボロだったから、ワンちゃんに杭ごと逃げられちゃって、山井先生ひいひい言いながら追いかけて捕まえたって言ってたねえ」


「あれ? そんな話までしてたっけ?」


 岩崎さんは、片淵さんが思い出しながら話す内容について、最初でこそ頷いていたけれど、途中から首を傾げっぱなしになっていた。


「山井先生は少し時間が空く度に、そういう雑談を細切れに入れていたので、岩崎さんはもう寝ちゃっていたかもしれないですね」


「ううう……、そ、それと勉強との間に何の関係があるの?」


「ありません」


 私がきっぱりと言うと、ぐでんと再度机に突っ伏した岩崎さん。


「えー」


「正確には、今回は直接関係しない、です。今回こんな話題を持ち出したのは、ちゃんと授業聞いている人だけが出来る話題を増やして、話に入るために授業をちゃんと聞こう、って思わせる作戦です。まあ、だからと言って授業を真面目に聞こうという気になるかは人それぞれなので分からないですが、少しは真面目に聞く気になったらいいなあ、くらいの内容です。ノート開いたのは、私はそういう雑談もノートに取ってるので、それを思い出そうと思ってだったりします」


「むむ……」


「そして、こういう話をすること自体は岩崎さんが言ってたみたいな、パジャマトークとも言えると思うので、一石二鳥かなと」


「むーん……」


 腕を組んで、岩崎さんが何事か悩んだ後、


「つまり、授業中に話していたこと縛りでパジャマトークってことで良い?」


「簡単に言うとそうですね」


「うーん……、ヤバイ。マジでネタが思いつかない」


「まー、真帆ちん、後ろから見てても良く船漕いでるしねー」


「都紀子にまで言われた!」


 ショックを受ける岩崎さんに、じゃあ……と切り出した正木さん。


「真帆、その山井先生が婚約したの知ってる?」


「え? マジで? 山井先生結婚するの?」


「うん。授業中に言ってたよ」


「嘘ぉ!?」


「本当。2日前の授業で話してたよ」


「アタシも何となく覚えてる。近所のおじいちゃんの息子さんだっけ。結構偉い企業に勤めてるとか」


「そうですね」


「うー、この話題は分が悪い! ってか、都紀子の勉強会じゃないの!?」


「いえ、寝てると自己申告している割には、片淵さん結構授業中の雑談とかよく覚えているみたいなので、多分岩崎さんが1番寝ていると思います。ということで、岩崎さんが1番危ないかも」


「ぐぬぬ……」


 唇を噛み締めて岩崎さんが唸る。まあ、もちろん雑談の内容を覚えていたからといって、それが学力と紐づくかどうかは全く別問題なのだけれど。


「よし、決めた」


「真面目に授業受ける気になりましたか」


「皆から雑談内容教えてもらって、全部覚える」


「いや、そういう話じゃないです」


 駄目だこりゃ。


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