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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第6時限目 内緒のお時間 その11

「ふーぅ」


 ようやくお風呂に浸かって、私は肺の底から息を吐く。少し熱めのお湯が体中に染み渡る。


 予想はしていたけれど、視界のあちらこちらに肌色と桃色がフレームインとアウトを繰り返している状況は全くと言っていいほど落ち着かない。


 でも、大隅中居ペアとの混浴後だからか、まだ少しだけ心に余裕がある気がする。たまに思わず反射的に目を背けてしまうのはまだあるけれど、比較的落ち着いて見ることが出来るようになった。いや、積極的に見ようとしていないけれど、視線の前にクラスメイトの素肌を見ても少しは大丈夫になった。少しだけ。


 それでも、やはり男子としては、その、若干落ち着かないところはある。顔、また赤くなってないかな。


「そういや、明日は何時に出る?」


「結構混むから早く行かないとヤバイよねー。優待券とは言っても、別にショートカットパスじゃないし」


「ショートカットパス?」


 聞いたこと無い言葉に首を捻る私。


「何千円か多めに払うと、アトラクションの利用予約が出来るチケットのことです。ショートカットパスを持って利用したいアトラクションの受付でチケットを渡すと、優先搭乗時間を印刷したチケットが貰えて、そのチケットに記載された時間に行くと並ばなくてもアトラクションを使用出来るみたいです」


 正木さんが詳しく質問に答えてくれているのを横でうんうん頷きながら片淵さんが補足してくれる。


「並ばなくて良いのは魅力だけど、とにかく高いんだよねー。アタシが持ってるチケットだとショートカットパスは1割引きとかだった気がするから、ほとんど割り引かれてないようなもんだし。確か普通のチケットは3割引きだったかな」


「とすると、やっぱ普通の1日フリーパスかあ」


 残念そうに言う岩崎さん。


「うーん、じゃあ早めに出た方が良いんですね。そうすると、8時とか?」


「開園が9時だから、もうちょい早い方が良いねー」


「とすると7時起きで7時半出くらい?」


「うー、7時か……あたし多分起きられないから誰か起こしてぇ」


「もう、真帆ったらそんなこと言って……」


 甘え声の岩崎さんを諌めるような口調の正木さん。


「だって、いつもならお母さんが起こしてくれるけど、今日はここに泊まるから無理だしねー」


「まあ、でも誰かしら起きると思うよー」


「都紀子、それフラグじゃない?」


「にゃっはっは、誰も起きないパターンは確かにあるかもねー。ま、そんときはそんときでゆっくりでも良いんじゃないかなー」


 ゆるーいノリの片淵さんに対し、


「とりあえず目覚まし掛けよう、目覚まし。携帯のアラームでも良いから、絶対起きる! ってことで、さっさとお風呂上がろう!」


 と意気込み十分の岩崎さんは湯船から上がり、早足で浴室を出ていく。


「おー、元気だねー。んじゃ、アタシも上がろうかなー。あ、準にゃん、ご飯もそろそろだよね?」


「あ、ええ。もう食事は準備終わってると思うので、食堂で食べられると思います」


「おっけー。きょーおのご飯はなんじゃろなー」


 片淵さんは脳天気な歌を歌いながら、岩崎さんを追うように自分もお風呂を出ていった。


 うーん、2人をあまり待たせるのも良くないかな。既に何度も寮に泊まっているなら、先に食堂へ行ってもらって、食事を済ませておいてもらうのも手かと思うけれど、今回が初めてだから、食堂のシステム……というと大げさだけれど、教えてあげないといけないだろうし。


「私たちもそろそろ上がりましょうか。明日も早いですし」


「そうですね」


 私の言葉に呼応するように、正木さんが頷いて立ち上がったから、私も腰を上げたのだけれど。


「……ッ!」


 立ち上がろうとした私は、逆動作で腰をそのまま下げた。


「どうしました?」


「い、いえ、あの、そういえば洗顔をわ、忘れていたなと思ったので、あ、正木さんは先に上がっていてください。顔だけ洗ってから上がります」


「? はい、分かりました」


 少し訝しむ様子はあったけれど、正木さんは頷いて先に浴室を出て行く。


 一方、私は予測していなかった……いや、予測しておくべきだったのだけれども、兎にも角にも緊急事態に思わず腰を落ち着ける。


「や、ヤバイ……外れる……!」


 肩までしっかり浸かっていたのもあるけれど、今日はお風呂がいつもよりやや熱かったのと、それなりの時間お風呂に入ったままだったからか、女の子変身セットが上からも下からも外れそうになっていた。下は履くタイプだから少し余裕があるけれども、上半身にある桜色トッピングの肌色まんじゅうは首の皮一枚とでもいうべき状態で、歩く振動ですら落ちるんじゃないかという状況。


 大隅さん、中居さんと混浴したときは何で大丈夫だったんだろうと記憶を呼び起こすと、緊張感があったせいかほとんどお風呂に浸からずに浴槽を出ていたから、外れなかったんだと思い出す。


「お湯じゃなくて、何か別の方法で剥がれるような接着剤にしてもらわないと駄目かな……」


 この辺りはみゃーちゃんに相談してみるしかないかな。貼り付ける肌色接着剤もそろそろ残り少なくなってきたし。

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