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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第6時限目 内緒のお時間 その9

「さあ、お風呂だ!」


「おー、でっかいねー」


 さっさと部屋を出て行く岩崎さんと片淵さんの後を、私と正木さんがのんびりと歩きながら付いていく。


 ……正確に言うと、のんびりという姿を必死で見せながら、実際は内心ばくばくと心臓がとてつもない音を立てていたりする。


 大隅さんや中居さんとのお風呂だってドキドキはしたけれど、気兼ねなく話せるタイプだったからか、女の子というよりは友達感覚があって、強烈に女性を意識しなくて済んだ。何より中居さんには最終的に男だって最終的にバレたのもあって、色んな意味で精算が終わった気もあった。


 その一方で、正木さん、岩崎さん、片淵さんは素直に言うと“女の子”って感じがあって、凄くどきどきしてしまう。特に正木さんは初対面時に唇を、まあその、奪ったと言いますか、触れてしまったし、不可抗力で傾斜の急なお山にも手を添えてしまったこともあり、まだやはり意識してしまう。


 それはさておき、


「ほら、紀子も小山さんも早く!」


「先に入ってるよーん」


 私たちがお風呂に到着して扉を開けて1秒、目の前にクラスメイトの一糸まとわぬ上に一切隠す気のない姿が目に飛び込んできたので、思わず大仰な動作で視線を逸してしまった。


 しまった、そういえば中居さんに女の子の裸になれないと男バレするぞ、と忠告されていたんだった。は、反省しないと。


「ちょ、ちょっと真帆、片淵さん。せめて前くらいは……もう。すぐにお風呂に入るとは言え、ちょっと開放的過ぎですよね」


 正木さんの苦笑いに対し、首を縦に振って応えた私は着替えを置いて、隣でしゅるしゅると服を脱いでいく正木さんの方を見ないようにしながら服を脱ぐ。もちろん、毎日の日課としてちゃんと女の子変身キットは装着済み。


「何か、修学旅行みたいな気分でちょっと楽しいですね」


 体の前をバスタオルで隠しながら、ほっこり笑顔で言う正木さんの口調も心なしか軽い感じがあったが、


「……でも、あまり浮かれてもいられないんですよね」


 先程の話を思い出してか、すぐに表情が翳ったので、私も正木さんに倣って前を隠しながら、


「なるようにしかならないですから、今はとりあえず忘れちゃいましょう」


 そう言いながら、私が浴室への扉を開くと、


「極楽だー」


「気持ちいいねー」


 悩みとは対極に居るようにだらけきった岩崎さんと片淵さんがお風呂に浸かっていた。人によってはこちらはこちらで危機感が無さすぎる、と思うかもしれないけれど、少なくとも今はこれくらいで丁度良いと思う。


 お風呂に入る前に頭と体を洗う派の私としては、まずシャワーの前に座るのだけど、


「ご一緒しても良いですか?」


 胸元その他諸々を隠していたタオルを、体を洗うためか手桶に浸したことで、全てがあらわになってしまった正木さんが私の隣に座る。白い肌を隠さない正木さんに、私は思わず注意というか視線が向いてしまう。主に上半身へ。


「……あ、あの、やはり……」


 その視線に気づいたのだと思うけれど、正木さんが少しだけ眉をハの字にして困った表情のまま言う。


「あの、申し訳ないです、じっと見てたりして……」


「いえいえ、構わないです」


 両手を左右に振ってから、自分の胸元に付いている豊かな膨らみを持ち上げる。


「中学くらいから急に大きくなってきて……最近はようやく止まったみたいなんですが、まだほんの少しずつ大きくなっているんです。お陰で、最近ホックが……あ、すみません、あの、そういうつもりではなくて、あの……」


 多分、自分の胸の自慢みたいに聞こえてしまって申し訳ない、と言外に表現しているのだと思うのだけれど、私が正木さんの2つの山に注目してしまったのは全く別の理由であり、健全な男子生徒の行動の結果なんです、ということはもちろん言えなかった。


 そういう意味ではまだ私は十分男子としての反応が残っていたんだと胸をなでおろした。そんなことをいちいち確認している時点でそろそろ男女の意識の境を足一歩分くらいはみ出していないかとヒヤヒヤするけれど。


「ホント、高校になっても大きくなるとか羨ましすぎ!」


「わひゃぁぁっ」


 とりあえず、少し空気が沈んでしまって、口ごもった正木さんに助け舟を出した方が良いかな、と思っていたら、目の前の急勾配の2つ山を後ろからがっちり鷲掴みにする人物が1人。


「さあ、サイズを白状するのだ」


 尋問するように言う岩崎さんに、ひえええと言いながら正木さんが答える。


「い、Eの……70……」


「アンダー細っ。てか、70ってあたしとほとんど変わらないじゃん……。てか、それでもキツくなったって?」


「う、うん……」


 聞いて後悔した、といった溜息混じりの表情を浮かべている岩崎さんに、


「にっしっし。アタシなんかもっとちっさいよ。なんせAの65だしね」


 なんて言いながら、立ち上がって控えめな丘陵をぐぐっと押し出す。


「都紀子はある意味ステータスだから良いじゃん。あたしらくらいの微妙なサイズが1番困るんだよねえ。ね、小山さん」


「……え? あ、そう、ですね」


 このネタがある毎に私を巻き込むのは止めてほしいです、岩崎さん。


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