プロローグ
性懲りもなく書いてみました。お暇すぎる方はのぞいてください。
剣と魔法の世界の存在する大陸の中央に位置するエルシア王国は世界屈指の軍事力を有す魔法大国である。魔法とは火・水・風・土の四大属性を基調とする生物が等しく身に宿した魔力を消費することで一定範囲内に術者の望んだ事象改変を起こす奇跡の業のことをいう。あくまで基調は四大属性だが、雷や氷など多種多様な種を誇る。エルシア王国は魔法の生まれた国と呼ばれている。それはただただ魔法に関する歴史の長さ、歴史の深さに所以するものだ。故にエルシア王国の人間は、大部分が魔法行使能力において他国の人間とは一線を画す。そんな優秀な人材が豊富な王国には、さらに通常とは一線を画す超越した者達がいる。世界史上最強の魔法使いと近しい彼の盟友達の末裔、今代まで脈々と受け継がれてきた純系の血統、魔法の申し子達である。彼らはそれぞれが一属性にのみ特化し、その家系の者は単体で数千の大軍と渡り合うとまで言われる戦闘のエキスパート。彼らの存在は他国への抑止力だ。彼らがいるからこそ王国の大陸内の地位は確固たる物足りえる。彼らの家系の国内的地位は公爵であり、火のガルディアス家、水のウィンディリス家、風のシルフィム家、土のノーマリア家、雷のラルバギア家、治癒のリナティル家、付与のシュバルツ家、氷のアルシルク家、光のヴァラレイ家、合わせて九大公爵家と呼称される。九大公爵家は数百年前から、その地位が揺るがされることなく、王国に深く深く根を張り、そこにあった。
そして、今。光のヴァラレイ家で一人の赤ん坊が生まれる。ヴァラレイ家の人間は皆、自らの属性を誇示するように光り輝く金髪を持っていた。今やそれは過去形であるが。光に反する闇のような黒髪を持ち生まれた赤ん坊の名はフィル。フィル・ランス・ヴァラレイ、彼に光を扱う素質は皆無であった。