キスが素敵な理由
恋愛にはシチュエーションが大切です。
夏祭りの帰り道
雪のクリスマスイブ
夜景の見えるレストラン
そして夕陽の沈む海岸
今回は海岸で佇む二人のお話です。
彼女は哀しげな眼差しで僕を見上げた。
その潤んだ瞳はどこまでも透明で、目の前に広がる深い海の色にも似ている。
僕は左手で彼女の肩を抱き、右手を彼女の首筋に当て、抱きしめた。
キスはお互いを求めあう感情表現である。だから言葉はいらない。二人で抱き合えば自然とそういう流れになってくる。
もちろん彼女のことが好きという感情はあるのだが、僕は表現がうまく出来ないため直接的な行動をする。
だから、キスは素敵にしたい。
「まず、キスをするときは目を閉じること」
僕は彼女に言う。
彼女はいつもの元気な笑顔で誤魔化す。
誰だってキス顔を見られらるのは恥ずかしい。
「いいかい。キスしてほしい時は少し上を向いて、目を閉じるんだよ」
笑い声はいつもの通り大きい。
「相手が求めたきたら、その直前に目を閉じる。ただ、それだけでいい」
僕はそう言うと彼女の唇に僕の唇を重ねた。
相手の表情を見れるのは唇が触れる直前まで。
彼女は素晴らしいタイミングで目を閉じた。
それでも僕には彼女にオーダーしたいことがある。
「大切なのは雰囲気とテクニックだよ」
彼女はまだ、ちよっとだけ分かってない。
夕焼けは西の空全体をオレンジ色に輝かせる。
「キスのはじめは唇も閉じること」
少女のままの幼いキスならそれでもいいかもしれない。でも、大人のキスの方が、僕は素敵だと思う。
僕は彼女を見つめて
「必ず゛チュッ゛って音を立てるんだよ。ほらね。分かるだろう?」
彼女の笑顔が少しだけ優しく、夕陽が反射して眩しい。
秋の風は二人が寄り添うにはちょうどいい温度だ。
彼女は僕の言う通りのキスをする。
「ほら、素敵になってきた」
彼女の笑顔が可愛い。
その唇か愛しくなる。
彼女が素敵なキスができるように、もう少し彼女のそばにいよう。
僕は彼女をもっと好きになっていく。
彼女は僕の耳元で何か囁く。
だから、キスは素敵だ。
キスは素敵な感情表現。
海に沈む夕日と二人寄り添えば流れは自然です。
素敵なキスをしてみませんか?