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ア・ホールド・ダンジョンズ!  作者: オレン
第二章(下) 束縛された水の街
216/217

第216層 薬と嘘

この作品の作者は、文章表現が現時点でLv6/無限です。

様々な名称、場面が出てますが、作者は全てオリジナルだと思っています。

 これから戦いに出向く2人を見送りに、街の水壁前では沢山の人が集まっていた。


「本当に行くのね」


 ナトレは心配そうな面持ちで2人に言葉を掛けた。


「大丈夫だよ。どうにかしてここまで戻って来るから」


 ミライは真剣な表情で答えた。

 確かに色々な問題点はあるけど、そんな事におびえて動かない訳にもいかない。

グラムを止めない限り、平和なんて訪れない。


「ミライもミチも、必ず戻ってきてね。必ず」


 そう言うセーナの表情は強張ってる。

 それとは対照的に、ミチの表情はどこか清々(すがすが)しい。


「私たちは大丈夫。作戦も立てたし、準備も万全だし」


 ミチはこの状況でも笑顔は絶やさない。

 そんなミチを見て、ナトレは安心して笑みを浮かべる。


「……とにかく、ミライはあの薬を服用しないと何も始まらないから、もう使ってしまいなさい。何か異変を感じたら、今すぐにでも行くのを諦めてもらうわよ」

「分かったよ。無理はしない」


 ミライはそう答えて、掌に一錠のカプセル薬を出した。

 その場にいる誰しもが、その薬に目を向ける。

 ……この薬を飲めば、最低3分は性別を女性に変えられる。

 それがどんなふうに変化するかはわからない。

そしてどんな副作用が襲ってくるかもわからない。

 ……それでも使う。そう決めた。

 皆のためにも、ミチのためにも、だ。

 ミライは意を決して薬を素早く口の中に頬張ほおばった。


「ミライ、水」

「ありがとう」


 ミチから水の入ったコップを受け取り、それをいっきに流し込んだ。

 飲んですぐは……なんともない? そう思った次の瞬間だった。


「うぐっ……」

「ミライ!」


 ミライはその場でうずくまり、ミチ、セーナ、ナトレの声が被る。

 体が……熱い。

いたるところが変わっていってるのだと思うが、ほてりのせいか全く感覚がない。


「大丈夫。俺は……」


 ミライは立ち上がるも、途中で言葉を詰まらせた。

 声が瞬間的に高くなったのだ。


「……大丈夫。少し変な感覚だけど、なんとか耐えれる」


 ミライは息を荒くしながらも、セーナとナトレの顔を見ながら口を動かした。

 そんなミライを見て、セーナは眉をひそめる。


「嘘つき。……どうなっても知らないんだから」


 セーナの言葉にミライは苦笑いを浮かべる。


「まぁ、発熱だけ済んだならまだいいわよ。ほら、急がないといつ効力が消えるか分からないわよ」


 ナトレは口元を吊り上げながら言った。


「……分かった。それじゃ、行ってくる」

「行ってきます」


 ミチとミライはそう言って、水壁の方に振り向いた。


「行ってらっしゃい」

「ミライ、ミチをしっかり守ってよ」


 ナトレとセーナの声に、ミライは片手を振って反応を返す。

 街を囲む水壁。

以前と全く形の変わってないのに、効力は格段変化した。

 本当に俺は通れるのだろうか。

 ミライは少し表情を強張らせながらも、ゆっくりと水壁に向かって歩いていった。

 そして、水壁に吸い込まれるように入って行った2人の姿は完全に見えなくなった。


「……行ってしまったわね」

「2人なら大丈夫だよ。きっと」


 ナトレとセーナは2人の消えた水壁の箇所を見つめながら言葉を交わす。

 大丈夫だと信じているセーナも、表情は少し曇っている。


「本当はあなたもついて行きたかったんじゃないの」


 ナトレはセーナを横目に呟いた。

 その言葉に、セーナは苦笑い。


「別にそんなことはないわ。今回は2人の問題だし、私仲間じゃないし」

「……あなたも嘘つきね。まぁ、2人を信じて待ちましょう」


 ナトレはそう言葉を残して、その場から大人数を連れて水壁から離れていった。

 ナトレは歩きながら、ある一人の女性にささやきを入れた。


「悪いけど、前みたいに2人の盗聴をお願い。……一応、念の為にね」


 そんなナトレの言葉がセーナの耳にも入る。


「……ナトレだって嘘つきじゃない」


 そうセーナは呟いて、水壁に背を向け歩き出すのだった。

今後の日程は活動報告で。

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