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ア・ホールド・ダンジョンズ!  作者: オレン
第二章(下) 束縛された水の街
213/217

第213層 決戦前夜の決意

この作品の作者は、文章表現が現時点でLv5/無限です。

様々な名称、場面が出てますが、作者は全てオリジナルだと思っています。

作品も作者も成長過程ですが、期待してください。

「――ミチ? 眠ったか……」


 あれから大分ミチと話していたが、ミチは優しい吐息を立てて眠ってしまった。

 ミチは俺に体を寄せていて少し体制が悪そう。

だから俺は足を伸ばしてミチを膝枕してあげることにした。


「フフフ、良い光景ね」


 足音もなくミライに近づき声を掛けたのはナトレだった。


「……ナトレ、起きてたんだ」

「少しあなたたちを心配していたのよ。主にミチだったけど」


 ナトレは不安な顔を向けながら、ミライの膝元で眠るミチに目を向ける。

しかし、ミチの寝顔を見て再びいつもの笑みに戻った。


「その様子だと大丈夫そうね」

「……話は聞いていたのか?」

「聞いていたというより、聞こえていたわよ?」

「……ミチには何も言わないでやってくれよ」

「当然そのつもりよ」


 そうナトレはフフフと笑って、ミライの隣に座った。

 そしてナトレとミライはただ茫然ぼうぜんと空を見上げる。


「それで、いつグラムの元に行くつもりなの?」


 そうナトレは冷たい空気に声を通した。

 ミライは星を見つめながら言葉を返す。


「できるなら明日にでも。いち早くあいつに会って話をしたい」


 ミライの言葉に、ナトレは小さくため息をついた。


「……出来る限り手を抜かない事ね。ミチを連れて行くなら、なおさらの事よ。……私はグラムがこの世界から消えない限り、この問題は解決しないと思っているわ」


 グラムがこの世界から消える――つまりグラムを死に追いやる事。

正直、誰も死なずに解決する方法がないか探しているのだが、見つからない。


「どうしてグラムはあんな事になったんだろうか」

「気にしても仕方ないわ。……ミライ、どうしても悪い奴はどこの世界に行ってもいるのよ。それは仕方ない事なの」

「それは分かっている。……でも」

「でもじゃないわ。そんな甘え事を言っていたら、自分の大切な物を無くすわよ? 善人が考えることは、どう悪人にならないか、それだけよ」


 ナトレの言葉は、どこか意味深くも感じた。

 どんな世の中だって、酷い悪人がいるのは分かっている。

そんな奴らとはかかわらないのが一番なのも知っている。

 ……でも、関わってしまう羽目になったらどうすればいいんだ?

ずっと恨み続けても、相手を消し去っても、何も解決につながらない気がする。

 それでも、どうしようもない事なのだろうか。


「あなたには力があるの。ミライ、あなたは最善の手を考えて実行できればそれでいいの。迷っては駄目よ」

「……分かったよ。はぁー……なんでミチは表を出しちゃうんだよ」


 ミライはミチを見て呟いた。

 あの時の2分の1の賭けは、見事に表を出したミチが勝ったのだ。


「あの時ミライがコインを振って裏を出せばよかったじゃない」

「……いや、コインの動きが見えている俺じゃ、割に合ってないと思ってさ」

「……本当にそんなことでミチにやらせたの?」


 そう言ったナトレは突然大声で笑い始めた。

 ……いや、どう考えたって笑う場面なんてなかった。

一体何がおかしいんだ。

 ミライが疑問を目線でナトレに伝えると、ナトレはその視線にすぐ気づき、笑みを浮かべながら口を動かした。


「そうね。ハッキリと言わせてもらうけど、ミチの洞察どうさつ力は、強化後のミライでもおよばないほどの実力よ」

「……嘘だろ」


 ミライは思わず苦笑いを浮かべる。

 俺はコインの回転する姿が目に見える。

でもそれはミチも同じで見えていた。

 つまり、2分の1の確率なんて最初からなかったというわけだ。


「ふふふ、後悔しても仕方ないわよ。言い出したのはミライなのだから」

「……ミチのと勝負で目力を利用するものはやめることにするよ」

「それがいいわね」


 そうナトレが笑い、ミライもつられて笑みを浮かべる。

 穏やかな空気の中、ナトレは大きく欠伸をした。


「さすがに眠いわね。……先に眠りにつこうかしら」

「俺はまだ起きてるよ」

「そう。あまり夜更よふかしはしない事ね。どうせ明日行くことになるのでしょうから」


 ナトレは立ち上がりながらそう言った。


「分かった。眠くなったら寝るよ」

「……私もここで眠ってもいいかしら?」


 突然のナトレの言葉にミライは戸惑う。

 そんなミライを見て、ナトレは「冗談よ」と笑いながらその場を立ち去って行った。

 ……一体ナトレは何しに来たのだろうか。

思い当たる節はいくらでもあるのけど、どれが答えかなんて考えても仕方ないか。

 明日は決戦。グラムと戦わなければいけない。

 街を囲む水壁に一瞬で効力を付け加えたグラムがどれほどの実力かは分からないし、全く歯が立たない可能性だってある。

 それでも行かないといけない理由ができた。

それはただ単純にミチの存在。

 ミチの苦しみを知った以上、あいつをそう簡単に許す訳にはいかない。

 そう思いながら、ミライは寝言をムニャムニャ言うミチを見ながら微笑む。


「……さて、俺もそろそろ寝ようかな」


 そう呟いてミライは目を閉じ、思い深き夜を過ごすのだった。

遅れたことは、ここで一言だけ詫びさしていただきます。

さて、いよいよ山場でしょうか。

自分自身も2日後からが楽しみです!

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