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ア・ホールド・ダンジョンズ!  作者: オレン
第二章(下) 束縛された水の街
211/217

第211層 話から話へ

この作品の作者は、文章表現が現時点でLv5/無限です。

様々な名称、場面が出てますが、作者は全てオリジナルだと思っています。

作品も作者も成長過程ですが、期待してください。

 街をおおくす1枚の水壁。

 あの水壁は、グラムの何らかの力によって男が通れなくなるようになった。

もし男がその水壁を通ろうとするなら、たちまち水壁は液状の物とは真逆の性質を持つ凝固ぎょうこな壁に変化するのだとエクトリーヌは説明してくれた。

 しかし、その話には妙な点がいくつかある。

 1つはエクトリーヌ達がどれだけ頑張っても入れなかった壁を、女性達は軽々と入る事が出来ること。

別に、わざわざ男女区別する必要性はないと俺は思った。

 通れなくするなら、男女共々通れなくした方がいいに決まってる。

女性だけを通せるようにする意図が全く分からない。

 そしてもう1つ気になったのは、なぜ急にグラムは牢を襲ってまでレベル上げをする必要があったのか。

 あの時30以上もレベルがあったグラムが、レベルの上がらないこのフィールドで恐れるものは、そうないと思うのだが……。

 恐らくグラムもそう思ってレベルを上げずに日々を過ごしていたはず。

 なのに急に――一体内があったんだ?

 ミライが考えを巡らせている中、そんなミライに気付いたナトレは口を動かし始めた。


「ミライの考えているその2点なんだけど、案外答えは簡単なものよ」

「……それなら教えてほしい。これ以上考えても答えが出そうにない」


 心が読まれているのを気にながらも、ミライは言葉を返した。

 ナトレは自分の足に片肘かたひじを付けながら、呟くように口を動かし始めた。


「これはあくまで私の予測だけど、1つ目の疑問の答えは、おそらく彼は水壁に新たな能力を付け加えたのよ」

「それが男を通せなくしろ、とかでしょ?」


 ミライはすぐさま口を挟んだ。


「近いけど違うわ。……彼の魔術の特殊能力は女性にしかあつかえない。だから彼は元々通れない水の壁を作って、その水の壁に女性は通れるという特殊効果を付けたのよ」

「でもそうだとしても、水の壁を通れなくするだけでいいんじゃ……」


 そうミライが口にすると、ナトレはジッとミライを見つめる。

 その視線に思わず背筋が凍る。


「それは2つ目の答えとも繋がるわ。まず2つ目の答えは、ただ単純に現段階のレベルでも不安を覚えたのでしょうね。過去にミライに敗れて、さらに手紙の影響で様々な人が自分の居場所に集まってくるとなると、当然確実に勝って宮殿という居場所を確保するために強くなろうとするでしょ?」

「……それで男は通れなくして、勝率を上げようという訳か」

「それも確かにそうだけど、実際の意図はミライを通さない為だと私は思うのよね」


 ミライの言葉に返答したナトレは、薄ら笑みを浮かべる。

 2人が結論に至る中、1人無言で話を聞いていたエクトリーヌは間合いを見て言葉を口にした。


「2人とも……さっきから何を話しているんだ?」

「あら、ごめんなさいね。あなたはすでに理解しているようだったからつい、ね」

「まぁ、別に構わないけども……」


 エクトリーヌはポカンとしながらも言葉を返した。

 ……そういえばエクトリーヌは、ナトレが心を読んでくるのを知らないんだな。

 でも、とにかく謎は解決したわけだが……。

 ミライは複雑そうな表情を浮かべながら、思ったことを口にする。


「でも、これからどうするの? あの水壁が通れないとなったら、俺の出る幕ないよ」

「そう、その事についてこれから話そうと思ったのだけど」


 そうナトレは、座る体制を変えて背筋を伸ばした。


「私は、現段階であのグラムをどうにか出来るのはミライしかいないと思ってるの」

「ナトレ直々(じきじき)に出向けば?」

「私は女の時点でが合わないのよ」


 ミライの言葉に対し、ナトレはそう言葉を返す。

 ……それだけの高レベルなら、そんなに問題でもない気もするのだけど……。

 そう思いながらも、ミライはナトレの話に耳をかたむける。


「それで、ミライがあの水の壁を通れる方法が無いわけでもないの」


 そうナトレは言いながら、自分のメニュー画面を開いてとある薬びんを取り出した。

 ナトレはその瓶ごと中の液体を揺らしながら、言葉を口にした。


「これはね、一定時間の間、何でも女体化させる薬よ。これ1つしかないけど、これであの水の壁をミライも通れるようになるわ」

「……困ったら薬が出てくるのは、相当ご都合主義な気がするね」

「まったくだな」


 そうミライとエクトリーヌは口を合わせ、2人で大きく笑う。

 そんな2人に対し、ナトレは苦笑いを浮かべる。


「……結構まじめな話なのよ。それに、全てがいい方向に進むわけじゃないわ。……まずミライ、あなたはグラムに立ち向かう意思はあるの?」

「俺しかできないなら、俺がグラムをどうにかしなくちゃだし――これ以上犠牲を増やすわけにもいかないからね」

「そう……」


 ナトレは言葉を呟きながら、手に持つ薬品に目を向ける。


「正直、この薬は実験段階で、副作用がハッキリしてないの。飲んだ瞬間突然死ぬかもしれない。しかも、この薬を飲んで数分すれば元の姿に戻るだろうけど、それでも、もしかした戻らないかもしれない。……この薬を使とすれば、そのリスクはあまりにも大きすぎるの。……それでも行くつもり?」

「当然、答えは決まってるよ」


 ミライの言葉に、ナトレは笑みを浮かべる。


「それじゃあ――」

「そんなの駄目よ!」


 ナトレが何かを言葉に出そうとしたとき、1つの叫びがそれを食い止めた。

 その声のした方向には、まぎれもないミチの立ち姿があった。

 ……ミチの表情が少し怒ってる。


「……そんなの駄目よ! そんな話、あまりにも理不尽りふじんすぎるわ!」


 そう言いながら、ミチはこちらの方に近づいてくる。

 突然のことに、ミライは少し困惑しながらも声をかける。


「ミチ、一体いつから?」

「そんなの最初からよ!」


 そしてとうとうミチはミライの目の前まで歩いてきた。

 ミチは怒ってるような、泣いているような顔つきで座るミライを上から見つめる。


「……ねぇミライ。私と少し話そう? ……聞きたいことも、話したいこともあるの」


 ミチの言葉に、ミライはエクトリーヌとナトレの方に目線を向けた。

 エクトリーヌは、ミライの視線を気にせずにその場で立ち上がる。


「……まぁ、当然だな。ミライ、ちゃんとその子と話してやれよ。俺はもう寝るさ」


 そう言葉を残して、エクトリーヌは片手を振り上げながら、遠くの方に歩いて行った。

 その様子をナトレは微笑みながら見つめ、ナトレもその場で立ち上がった。


「私も眠いし、話の続きは明日でいいわね」


 そしてナトレもその場を立ち去った。

 ……2人ともありがとうね。

 そしてミライも立ち上がり、不機嫌そうなミチと目線を合わせた。

 ミチは視線をミライかららし、少し遠くの方を指差した。


「……あそこで話そう?」


 そうミチが差した先には、少し大きめの岩が砂に突き刺さっている場所があった。

そこはここから少し遠い位置で、人影は誰も見当たらない。


「別にどこでもいいよ。……行こうか」

「……うん」


 その会話を最後に、2人は無言でその岩場まで歩くのだった。

本気になればが、神がかってどうにか間に合いました。

ここからも、これからも大事です。

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