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ア・ホールド・ダンジョンズ!  作者: オレン
第二章(下) 束縛された水の街
207/217

第207層 手抜き攻撃

この作品の作者は、文章表現が現時点でLv5/無限です。

様々な名称、場面が出てますが、作者は全てオリジナルだと思っています。

作品も作者も成長過程ですが、期待してください。

 「ぜぇ……ぜぇ……。中々しぶといな……」

 「それは……お互い様でしょ。……早く諦めて降参こうさんしなさいよ」


 そうミチは、荒い呼吸の中で言葉を返した。

 今戦闘が始まってから、どれ位の時がたったのだろう。

俺はものすごく長い戦いに感じるが、実際はまだほんの数分しか戦ってないのかもしれない。

でも一瞬一瞬が濃密すぎて、もう体も長く持ちそうにない。

 俺の体力は残り3分の2を切り、後1,2撃のダメージで確実に負けてしまうだろう。

 それに比べて向こう2人の体力は、まだ半分以上残っている。

 言い訳では無いが、別に本気を出してダメージ5000ダメージ近くの魔法を放って、その10分の1のダメージを2人に与えるという戦いの終わらせ方もあった。

 でも、それには一抹いちまつの不安があった。


「どうしたのミライ? どんどんダメージ量が減っているわよ?」


 攻撃を受けたミチは、ステータスを確認しながら言う。

 そのミチの挑発に近い言葉には、ミライは何も言わない。

 だってミチの残り体力が減っているんだ。そりゃ、ダメージが減るのは仕方ないんだよ……。


「そんな事言って調子に乗っていると、あっという間に体力が無くなるぞ!」


 そうミライは、言葉と共に火の玉をミチに向かって放つ。

 ポピュラーな大きさの魔法の炎だが、この火の玉は……スピードを瞬時に変えられる。

 途中まで空中にただよっていた火の玉は、急激に加速し、ミチに向かう。


「……うそっ!」


 余裕よゆうを見せていたミチの表情が固まった。

 火の玉の急な高速化に戸惑とまどうミチと火の玉の間に、セーナが割り込む。


「ミライの攻撃の見た目にだまされたら駄目よ!」


 そうセーナは言って、ミライの攻撃を素手で受け止めた。

 ……なぜ剣ではなく、素手で受け止めた?

 そう思う中、セーナは自分のステータスを確認した後、何か不満そうにこちらを見つめる。


「……ねぇミライ。本当にそれで本気なの?」


 如何いかがわしい物を見るかのような目つきにミライは思わず苦笑い。

 ……流石さすがにセーナにはばれてしまったか?


「それは、俺にだって行動範囲の限界はある。ダメージを受けるときは受けるさ」


 ミライは様子見で言葉を返す。


「違う! 私が言ってるのは、ミライが私たちに対する攻撃で手を抜いてると言うことよ!」

「セーナ、それは一体……どういう事?」


 セーナの言葉にミチは思わず聞き返した。

 観戦者達もざわつき始める。

 ……これは完全にばれてるな。

セーナはともかく、対人戦を好むミチや、ナトレにばれるのはまずい……。


「ミライは私たちの体力を……」


 セーナが声を張り上げて説明しようとした、その時だった。

 ミライは瞬時にミチの目の前まで移動して、ミチの持つ2本の短剣を箒のはじき飛ばした。


「えっ、そんな……」


 驚きの声を上げるミチの手を取り、ミライは再び瞬間移動をする。

 瞬間移動先はセーナの目の前。

 ミライはセーナの刀剣も、ミチの短剣と同様に弾く。

 そして、2人に反撃のすきを与えることなく、ミライは2人を腕ごと強く抱きしめた。

 ミライの行動に、ミチは頬を少し染める。


「ちょっと……突然なに?」

「は、離しなさいよ!」


 そうセーナはもがくが、ミライの手が2人からほどけることはない。

 ミライは抱きしめた格好のまま、2人を地面に押したおした。


「きゃっ!」

「悪いな、こうでもしないと逃げられるからな。魔術反射バリア!」


 そうミライが叫ぶと、3人が転がる地面からき出すように半透明の床バリアが現れ、見る見るうちに縦に伸びていった。

 そして気が付けば、ナトレや観戦者が見えなくなるほどの高さにまで達していた。


「バリア! バリアバリアバリアバリア!」


 さらにミライは半透明の壁と天井バリアを作り出し、完全2人を閉じ込めた。

 そこで初めてミライは2人を自分の腕の中から解放した。


「ちょっと、これは一体どういうつもり?」


 セーナはその場で立ち上がり、壁越しに下の方を見ながら言った。

 ミライは自分の作りだした床に座り、口を動かし始める。


「いやね、少し休戦して話でもしようかと。……戦いに疑問を持った人もいるようだしね」


 そう言ってミライはセーナを見つめる。

 セーナは少しツンとした表情を残しながらも、座るミチの隣に腰を下ろした。


「それで、セーナの言っていた言葉の意味は?」


 ミチはその場にいる人すべてに問いかけるように言った。

 その言葉の返答は、セーナが不満げに返した。


「……言葉のとおりよ。ミライは私たちの残り体力を見ながらダメージを与えていた。一撃で倒そうと思えば倒せるのに、遊び半分でこいつは手を抜いてたのよ!」

「……あってるけど、少し語弊ごへいがあるぞ」


 とうとうセーナにこいつ呼ばわりされるまでにいたってしまった。

なぜ俺が一撃で倒さないかの真意までは分かってないようだな。

 セーナの言葉の後、ミチの表情も少し複雑になってしまった。


「だったら、納得いくまで説明しなさいよ!」


 セーナは怒りの沸点がギリギリのラインまで来ているようだ。

 それだけ俺との戦闘を待望たいぼうしていたんだろうか。


「分かった。分かったけど、一つだけ話す前に頼みがある」

「負けを認めてくれ、とかだったらお断りよ」

「それでも良いんだが……まずは、その……穴だらけの服を着替えてくれないか……」


 そうミライは指摘をした後、目線を大きく2人からそらした。

 ミチとセーナは、自分の姿をまじまじと見つめ、顔を真っ赤にする。

 ……戦闘の途中から、ずっと2人の服のことを気にしていた。

 こちらの攻撃の手数が多くなった分だけ、2人の服も破れたり燃えたりした。

そして気が付けば、ちらちら2人の肌や下着の部分が見えて、冷や冷やしていた。

 ……今回は観戦者ギャラリーも沢山いたし、男の姿もちらほら見えたから、どうしても服からの露出だけは何とかして欲しかった。

 そんな思いをいだきながらミライは2人の返答を待つと、思わぬ言葉がミチから返ってきた。


「ふふん。ミライの話が終わったら着替えてもいいわよ」

「……そう来たか。……分かったよ」


 2人には戦闘で勝てても、思考や言動には勝てないな……。

 そう思いながら、ミライは自分の考えを2人に主張し始めるのだった。

引き伸ばしに引き伸ばして、次回ついに! ミライの戦闘行動の真意が明かされる!

ついでに、長きに渡る戦いも終わればいいな。

……戦闘なんてついでです。

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