第205層 長蛇の列の終わり
この作品の作者は、文章表現が現時点でLv5/無限です。
様々な名称、場面が出てますが、作者は全てオリジナルだと思っています。
作品も作者も成長過程ですが、期待してください。
あれから連戦に連戦を重ね、どれ位の時が流れただろうか。
それは俺も含め、この場にいるほとんどの人が理解していないだろうと思う。
女性のみと1対1で連戦を続けるのかと思っていたが、気が付けば男性も入り、さらに気づいた頃には1対1なんて甘いルールは無くなっていた。
ミライは対戦相手の6人を、たった一撃で薙ぎ払った。
「勝負あり! 勝者ミライ!」
そうナトレは、慣れた口調で言い放った。
……もうナトレの声にも、初期のような張りはとっくになくなっているな。
そして負けを認めた相手は、渋々(しぶしぶ)とミライの背後の待機場に向かって歩いていく。
そういったパターンをミライは幾度となく繰り返してきたのだ。
「ちょっと、まだ戦えるわよ!」
そう声を張り上げたのは、さっきの戦闘で大きく吹き飛ばされた女剣士だった。
戦闘が終わった後、たまに体力の減りに気づかずに抗議をしてくる人が出てくる。
何で体力の減りに気づかないかというと、そのダメージに見合った痛みを感じていないからだ。
一応、少々の痛みを伴うような攻撃をしているつもりなんだけど……やはりパーティ戦になると個人差が出てきてしまう。
だから、そんな時に言うセリフは決まっている。
「君のステータスを見てから言いなよ。ピッタリ432減っているはずだ。それが君の体力の丁度4分の3だろ?」
ミライの問いかけに、彼女は疑いの目をミライに向けながらもメニュー画面を開き、ステータスを確認する。
そして彼女の表情が一瞬だけ驚きの表情に変化した。
ミライはそれを見計らって、追加で彼女に言葉を掛ける。
「とにかくルール上、負けは負けだ。……俺は何時でも相手してあげるから、レベルを上げてまた戦いに来ればいい。あと、魔法使いのあの子は体力が低いから君が必ず守ってあげるんだ」
ミライが話し終わる頃には、ミライの立ち位置は彼女の背後になっていった。
ミライは彼女を横目に見ると、彼女はこちらを一瞬だけ見て、一瞬だけ微笑んで待機場へ歩いて行った。
……なんとか今回は諦めてくれたようだな。さて次の相手は……。
そうミライは目の前の列を確認するが、目の前に人がナトレ以外誰もいない。
と、いうことは……。
「次の対戦相手、いないみたいだね。やっと終わりか……」
「ふふふ、それはどうかしらね」
そうナトレは、薄ら笑いを浮かべながら言った。
どう考えても訳の分からない返答だったが、そのナトレ言葉を理解するのは、そう遅くはなかった。
「もう誰も戦わないんですかー!」
ナトレを手伝っていたミチは、待機場全体に向かって叫んだ。
しかし、誰もミチと目線を合わせず返答する気がない。
「もう誰もいないなら、本日最後の戦いになりますよー!」
さらにセーナが言葉を掛けるが、当然誰も答えない。
「って、最後の戦いって何だよ」
ミライは唐突に思い、その場で口ずさんだ。
その瞬間ミチとセーナが振り向き、にんまりと笑みを浮かべた。
「おい、まさか……」
「そのまさかなのよ」
聞こえてきた言葉に振り向けば、ナトレがくつくつと笑っている。
……何か企んでいるときの顔だな。企みは大体予想がついたけども。
ミライは再びミチとセーナの方に顔を向けると、2人は顔を見合わせてミライをジャンプで飛び越した。
一瞬、空中で2人の姿に見とれてしまうが、気を取り直して飛び越えた2人の方を向く。
2人は気が付けば見覚えのない武器を構えて、今すぐにでも戦う気でいる。
ミチは両手の40センチ位の短剣を軽く素振りしながら声を放つ。
「ねぇナトレ。本当にミライに勝てたらこの武器くれるのよね」
「当然よ。でもルールは変えないから、そう簡単に勝てるとは思わないで欲しいわね」
「望むところよ!」
なるほど……俺が眠ってる間に絶対何かあったな。
ミライは苦笑いを浮かべながらミチとセーナを見つめる。
セーナも刀剣を両手で構えながら口を動かす。
「ナトレ、いつでもいいよ」
「ちょっと待ってね。一応私にも段取りがあってね……」
そう言うとナトレは何故か待機場の方に体を向けた。
(ミライ、ちょっと本気出すわよ。情報強制公開状態のあなたには少し辛いかもしれないわ)
え、ちょっと、それはどういう……。
ミライが心内で伝えようとした、その時だった。
「聞きなさい、ミライ……魔法使いの彼との戦いを諦めた諸君!」
「ぐあっ……」
ミライは訳の分からぬ衝撃に思わず悲痛な声を漏らす。
そして待機場の人達がざわつき始める。
ざわつきの理由はナトレの言葉が、耳と頭に直接響くから。
そして、ミライが突然地面に手をついて倒れたからだ。
ナトレの言葉は、何故か体全身に響き渡り、電気で痺れるような感覚に襲われる。
でもこの感じ、どこかで……。
ナトレはミライをちらりと見て、少し笑みを浮かべながら言葉を続ける。
「彼はあなたたちの戦いでは、万分の1も力を出していないわ。そして彼の体力を一番多く削ったのは、クリー・ネク組で220。それでも彼の残り体力は7700以上あるわ」
あまりの大きさ数値に、全体がさらに大きくざわつく。
「これから彼、ミライのやや本気の戦闘が行われるわ。今後生き残りたいって人は、よーく見ておくことね」
その言葉の後、ミライの体の妙な痛み、痺れは無くなった。
ミライは体勢を立て直してその場で立ち、心配するミチとセーナを気にしながらも待機場の人達の方を向いた。
半分以上の人から興味の視線を感じる。……もう手を抜くことは許されないようだ。
ミライは大量の観客の視線を感じながら再びミチとセーナの方に振り返った。
「先に言っておくが、ナトレの言った通り今まで本気を出していない。だしたらどうなるか……俺でもわからないぞ?」
「まずは私たちの実力を見てから、判断するのね」
そうミチは不敵に微笑み、両手の短剣を構える。
そんな空気の中、ナトレは楽しそうに口を動かす。
「それじゃ、始めるわよ。ルールは全く変更する気はないからね」
「別にどんなルールでも負ける気はないわ!」
ミチはもう完全に戦闘モードに入ったようだ。
ミチの隣で刀剣を構えるセーナも、表情を見る限りやる気のようだ。
(ミライ、先に言っておくわ。二人相手に手を抜こうなんて考えてたら、負けるわよ)
……はなから本気を出して、早く終わらせる気でいるから大丈夫だ。
そうミライは心で呟き、箒を二人の方にかざした。
ナトレは3人を見て微笑むと、両手をかざし、声を張り上げた。
「それでは、試合開始!」
お待たせしました!
環境の都合上、今回はケータイからの更新になります。
本当はクリー、ネク戦も書きたかったのですが……自己妄想満足にしておきます。
本当は一人づつを思い描いたような気がしたのだが……どうしてこうなった。
推敲がいつもより不十分です。間違えは指摘してください。
では、梅雨終わりまでにまでに二章完結を目指して頑張ります! それまでお付き合いのほう、よろしくお願いします。