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ア・ホールド・ダンジョンズ!  作者: オレン
第一章 ホール・ダンジョン
2/217

第2層 騙されましてようこそ

この作品の作者は、文章表現が現時点でLv1/無限です。

様々な名称、場面が出てますが、作者は全てオリジナルだと思っています。

作品も作者も成長過程ですので、あまり期待はしないでください。

 僕は横穴内部の壁を右手で伝いながらゆっくりと辿たどっていく。

 横穴内部は真っ暗で、いかにも何かが出てきそうな雰囲気があった。

空気はどこか重く、触れた土壁はどこか冷ややかに感じる。

 あの子に中々(めぐ)えないが、彼女は無事なのだろうか……。

 一抹の不安がぎるなか洞窟内を歩み進めていくと、前方に薄っすらと光が見え始めた。


「……出口か?」


 呟いた声が洞窟内を反響はんきょうする中、僕は小さな希望をいだきながら歩く速度を上げていく。

 頼むから外につながっててくれよ。……そして頼むからあの子が無事でいてくれよ!

 見えた光の方向に進むにつれ、光は大きさと輝きを増していく。

そしてついに、光の奥の世界に僕は行き着いた。

 光の奥の世界。そこは半球状に広がる巨大空間だった。

 地面は黒石で平らに整地されていて、天井を見上げればテレビのモニターのような物が大量に配置されていた。

 僕はそんな不思議な空間に見とれて、歩きながら周り全体を見渡していた。

 しかし、見渡す中である異変に気づき、僕は思わず足を止めた。


「……入口が無い」


 そんなわけないと僕は自分の目を疑った。しかし、どこを探しても先に進む横穴のようなものは存在しない。入口というか出口というか、それらしき場所がどこにも見当たらないのだ。


「ハハッ……ハハハハハハ……」


 僕の口から変な笑い声がれ出してくる。

 ……完全に閉じ込められた。

 変な汗が全身を伝い、妙な寒気がしてきて震えが止まらない。

 ああ、これが死ぬと分かった時の状況なのか。

 僕が絶望の底にいるその時、突然気味の悪い声が聞こえてきた。


「フフフフフ……」


 女性の笑い声、しかも高らかで若々しい。

 僕はその声が耳に入った瞬間、骨を抜き取られたかのように足に力が入らなくなり、その場で座り込んだ。

そして声のする方向――天井の方向へ目を向けた。

 1人の女性がゆっくりと地上に降りてくる。

どんな原理で浮いているのかはさっぱり理解できない。

 女性は、しなやかな長い髪を揺らしながらこちらに歩いて来る。

 服装は胸元がざっくりと開かれた黒のつやのある服。

体がすらっとしている分、その胸の膨らみが嫌でも目に入ってしまう。

 彼女の見た目を一言で表すなら……。


「魅惑の黒き露出者」

「あら、初めて言われたわ」


 そう謎の女性は笑みを浮かべた。

 ミスった! 思わず口にしてしまった!

 僕は顔を上げると、露出者がニコニコと微笑んでいた。

 ……絶望のふちにいる人の姿が、そんなにもおもしろいのか?

それともこれから人を死に追いやるのが、そんなにも楽しみなのか?

 そんな事を考えていたら、ふとここに入っていった女の子の存在が浮かんだ。

 そして、気がついたら僕は無意識に言葉を放っていた。


「僕を殺すなら好きにするがいいさ! ただ、ここに来た女の子は見逃してくれ! いや、おねがいします!」


 人生で初めて土下座をした。

 汗と涙が止まらない。


「……ッフフフフ、アッハッハッハッハ」


 しかし聞こえてきた返事は、とてつもない笑い声だった。

 僕は地面に顔を付けるのをやめ、腹を抱えて笑う女性を見た。


「な、何がおかしいんだ!」

「ごめんなさーいお兄ちゃん、だましちゃいました。てへっ」


 そう女性が口にした言葉は、まさしくあの時の女の子の声だった。

 ……まさか、俺は初めから騙されてここに来たのか。

 気が付けば体全身が震えている。

怒りなのか恐怖なのかは分からないが、震えでまともに体が動かない。

 僕が全く動けない中、露出者は再びふわりと宙に舞い、僕の頭上まで近づいてくる。

そして僕がおびえきった視線を向ける中、彼女はおもむろに口を動かした。


「おほん。……えーっと、騙したのは悪かったけど……そう恐れないで」

「……え?」


 彼女の突然の言葉に、僕の表情は一変した。

 あんなに震えて動かなかった体も、妙な脱力感に襲われる。

 僕が困惑した表情を浮かべる中、女性は少し高い位置まで浮かび、高らかに声を上げた。


「ようこそ!『ホール・ダンジョン』ヘ。123455人目の挑戦者よ!」


 彼女が放った言葉は、洞窟内を反響はんきょうする。

 ……本人の声も反響してきた声も、10万回以上口にしただけある、堂々とした声だった。

 しかし、そんな言葉を急に言われても全く訳が分からない。

 言いたいことも説明してほしいことも山のように頭の中に浮かぶ。

 しかし怒りも恐怖も完全に消え去った僕の口からは、あまりにも単純な言葉が飛び出てきた。


「挑戦者じゃないから、ここから帰してくれぇえええええええ!!」


 そんな僕の心からの叫びも、彼女の言葉と同様に洞窟内に大きく響き渡るのだった。

2012/5/13

Lv5で書き直しました。

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