第199層 目覚めを信じて
この作品の作者は、文章表現が現時点でLv4/無限です。
様々な名称、場面が出てますが、作者は全てオリジナルだと思っています。
作品も作者も成長過程ですが、期待してください。
ナトレの提案に誰しもが納得し、その準備も終盤を向えていた。
脱走班の1人が口を開く。
「それでは、私達はこれの設置に向かいます」
「お願いね。途中で出会った人を勧誘しても全然構わないからね」
ナトレは楽しそうに良う。
例の物を持った彼女達は、楽しそうに会話しながら街へ向かって行った。
そしてこの場に残ったのは、私とセーナとナトレの3人だけとなった。
ナトレは一呼吸入れてから、2人を見つめて口を開く。
「さて、私達も行動に移らないとね。セーナ準備は良い?」
「いいわよ! いつでも投げてもらって構わないわ」
セーナは楽しそうに笑ってみせる。
その言葉を聞いて、ナトレは準備段階としてその場にしゃがみ込み、組んだ手を地面に付けた。
そしてナトレの手の上にセーナが立ち、セーナは愛用の武器を構える。
……本当にナトレの言った事が可能なのかしら。
そう思いながらも、ミチはミライを抱えて2人の行動に目を向ける。
「それじゃ行くわよセーナ。私達の事は気にせず、思いっきりやってよね」
「全魔力を使いきってやるわ。その後は……よろしく」
ナトレとセーナがそう会話を終えた瞬間だった。
ナトレは勢いよく立ち上がり、さらに全力でセーナの乗った腕を上に上げた。
その瞬間セーナは、ものすごい勢いで空高く飛んでいき、あっという間に姿が見えなくなった。
「ミチ、逃げるわよ。急がないと巻き添いを食らうわよ」
「分かってるわ!」
ミチとナトレは全力でその場から逃走した。
すると、しばらくしない内に空の彼方から何かが降ってきた。
それは巨大な柱のような物だった。
黄色のガラスで出来たような透き通った柱。
柱の底の方は鋭く尖っている。
それにしても……何よこの大きさ!
ミチは全力で走り続ける。
空から降ってくるそれの大きさは、底面だけでも計り知れない大きさだ。
あんなのをセーナは扱えるというの? さらにそのセーナに勝てるミライって……。
全力で走るナトレとミチの背後で、空から降ってきた巨大な柱が砂飛沫を立てて地面に突き刺さった。
突き刺さった柱は、しっかり砂に埋もれたらしく、倒れる様子はない。
第一の作戦は成功したようだ。
でもまだ全てが終ったわけではない。
柱が地面に落ちたのを見計らって、ナトレは全力で元居た場所に向かって走って行く。
ミチも心配そうに空を見上げる。
しばらくすると、ナトレの言った通り、魔法の反動で力なく落ちていくセーナの姿が空に見えた。
ナトレはセーナの落下地点を予測し、その場に待機。
そして、見事にセーナを抱き抱えるように受け止めた。
全てナトレの言葉どおりに事が進んだようだ。
「うまくいったみたいね」
セーナを抱き抱えるナトレに対してミチは言った。
ナトレはセーナに魔力回復ビンを手渡しながら言葉を返す。
「そうね。後は彼女たちが上手くやってくれて、ミライが目を覚ませば全て解決よ。ミライには悪いけどね……」
その言葉の後、ミチとナトレは苦笑いを浮かべながらミライを見つめる。
本当にミライには目覚めてから色々して貰わないといけない。
今回の作戦の事もそうだし、グラムの事も……。
でも彼なら理由を聞けば、断る事無く協力してくれると思う。
どちらにしろ、早く目覚めてくれないかな……。
ミチはミライを毛布の上に寝かせ、地面に座るセーナの元に歩み寄った。
「セーナ、大丈夫?」
「なんとかね……。でも上手くいって良かった」
そう言ってセーナは、自分の造り上げた柱を見上げる。
ミチもセーナの視線を追うようにして、巨大な柱を見上げた。
透き通った柱は、この場からでは頂上を見ることが出来ない。
これだけ目立っていて、彼女たちの配置している物を見れば、誰だってここに向かってくるだろう。
そうすれば、グラムによる被害も大幅になくなる。
2人が目線を高くしている中、ナトレは2人に対して言葉を向けた。
「さて2人とも、今日の夜は忙しくなるわよ。食事とかの準備をしておかないとね」
「ねぇ、ミライは大丈夫なの?」
ミライに目を向けながらセーナは聞いた。
セーナが聞きたいのは、ミライの体力的問題。
体力が0になれば死んでしまうが分かっているから、心配で仕方ないのだ。
その気持ちは、口に出さないけど私も同じ。
そんな心配する2人に笑顔を見せてナトレは言葉を口にする。
「大丈夫よ。今は彼を信じなさい。……順調に増え続けているわね」
「何が?」
ミチはナトレの呟きに瞬時に言葉を返す。
「……本人が目覚めたときに直接聞きなさい。私から口にする必要はないわ」
そうナトレは笑い、食事の準備を始めだした。
ナトレには一体なにが見えているというのだろうか。
ナトレの言う通り、ミライを信じて待つしか出来ないのだろうか。
本当に、ミライは大丈夫なのだろうか……。
そんな事を考えるミチを見透かしてか、ナトレはミチに言葉を向けた。
「ミチ。少なくともミライは、あなたの事を信じ続けていたわよ。むしろそれしかしなかった。それをあなたは応えたのだから、きっとあなたの思いも彼は応えてくれるわ」
その言葉を聞いて、ミチはミライを見つめる。
……そうだよね。大丈夫だよね。……きっと。
そうミチがミライに優しく微笑みかけ、そしてその場を立ち上がりナトレに言葉を向けた。
「ナトレ、私も手伝う!」
ミチはナトレの所に行き、楽しそうにナトレを手伝い始める。
ミライは私を信じて、そして助けてくれた。
……だから今度は私がミライを信じる番よ。
だからミライ、早く目覚めなさいよね!
そう思いながら、ミチはミライが目覚めるのを待つのだった。
一応、今回でミチパートは終了です。
今後の展開のための大事な練習になったかと思います。
はてさて、女性陣の考えた作戦とは……。
次回、言うまでもなくミライパートに戻ります。