表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ア・ホールド・ダンジョンズ!  作者: オレン
第二章(下) 束縛された水の街
196/217

第196層 過去を見つめて

この作品の作者は、文章表現が現時点でLv4/無限です。

様々な名称、場面が出てますが、作者は全てオリジナルだと思っています。

作品も作者も成長過程ですが、期待してください。

 彼が眠りに着いてから半日が経ち、日も完全に顔を出していた。

 彼はいまだに目を覚ます事はない。けれども心配する必要もないと私は寝顔を見て微笑む。

それは今までのことがまるで無かったかのような、彼の幼く柔らかい表情の寝顔。

 そんな幼い寝顔の彼が私のためになんて、嘘なのかもしれない。

 ……彼の名前はミライ。私を闇のそこから救い出してくれた男。

 ナトレから聞いた話によると、ミライは私を助けるために相当な無茶をおかしてきたらしい。

そのせいで彼は危険な夢の中をさまよっている。

 私に出来る事があればいいのだけど、ナトレは側に居るだけで大丈夫だからと私をはげますだけ。

 ……何だか彼には助けてもらってばっかりね。

 そんな事を思いながらミチはミライを眺めていると、隣にセーナが座った。


「ねぇミチ。そういえば、ミライとはいつ出会ったの?」


 ミチに対しての、セーナが唐突とうとつな言葉だった。

 ミライと出会った時……どんな感じだったっけ?

 ミチは記憶を辿たどりながら話し始めた。


「……そうね。前回の草原のエリアで、たしかモンスターに襲われそうなミライに出会ったの。それでモンスターも弱い奴だったから軽々と倒して……ミライの顔を思いっきり蹴った」


 ミライとの出会いを完全に思い出し、表情が変わるミチ。


「……え?」


 セーナは話の急展開に、困惑した表情を見せる。

 完全に思い出した。最初の印象は……最悪だったわね。


「助けようと手を伸ばしたら、私のパンツ見ていきなりがらを言ったのよ! ムカッときて思いっきり蹴ったわ。そして気を失った彼を町の宿まで背負って行った。……でも置いて行ってもよかったのに、何であの時連れて行ったのかしら?」


 自分でも不思議に思い、ミチは疑問を呟く。

 あの時、鼻血まみれな彼を放置で旅を進めるのもありだった。

でもそうしなかった。何故だか分からないけど……。

 少し間を空けてから、セーナは遠い過去をのぞくかのような顔つきで口を動かす。


「それは、私にも分からないけど……。でも、私が手加減したのと同じかな」


「そういえばセーナとミライが出会ったのは、あの大樹の頂上が最初が無いんでしょ?」


 記憶の片隅かたすみに残っている草原エリアでの事。

大樹の頂上で初めてセーナと会ったときに、ミライだけはセーナを知っていた。


「うん。私が始めて会ったのはビナンケの町で、ミライとは曲がり角でぶつかったんだけどね……」


 セーナは少しほほを染めて口ごもる。

ミチが不思議そうにセーナを見つめていると、しばらくしない内にセーナが再び話し始めた。


「私その時、その……トイレに行こうと急いでたのね。それで……漏れちゃって……。その後ミライが手を差し出してきたんだけど……恥ずかしさのあまり殴ったの。でもその時の一撃は手加減してた……なんでだろう」


 セーナは困惑した表情を浮かべる。

その話を聞いてミチも不思議と考え込む。

 確かにあの頃のミライは弱かった。

それにあの時ミライは高熱を出して倒れた。肋骨ろっこつを折る重傷で。

その原因がセーナだったと考えたら……手加減してなかったらほんとに死んでたかも。

 彼にはそういった運もあるのかもしれない。

 ミチは記憶を辿るうちに、ふとあることを思い出し口にした。


「そういえば大樹の頂上でセーナとミライが戦ったとき、勝敗はどうなったの。2人とも生きてるし、ミライはあまり話さなかったし……」


「……完全に私の負けよ。ミライのバリアが攻略できずに、服をズタズタに引き裂かれたわ」


 その言葉を聞いて、ミチは冷めた目つきでミライを見た。

ミチの目線を追うようにセーナもミライに目を向ける。


「……今のうちに1発殴っとけば?」


 ミチは笑いながら言った。

セーナも微笑みながら言葉を返す。


「別にいいわよ。……仕返しなら嫌と言うほどやってやったわ。それに……あの時ミライは手加減をしていたわ、悔しいけど」


「服を引き裂くのが、手加減?」


 ミチは不思議に思って聞きかえした。

セーナは過去を見るかのような素振りで空を見上げ、口を動かし始めた。


「確かに服がボロボロになって私は逃げ出した。でも大樹を下りて気づいたの。服は切られていたけど、体は全く無傷だった。あえて言うなら頬にひとかすりだけね」


「でもまさかミライが手加減なんてね……」


 確かにミライは戦闘は好まないタイプなのは知ってるけど、いざ戦闘に入ったら必ず本気で立ち向かってる気がする。

 そう思えるのは、かつて仲間だったユミルが死にいたったとき。

彼はその戦闘のとき、呪文を叫ぶ前後で彼の周囲に厖大ぼうだいな魔法陣を作り上げていた。

その魔法陣の外周が私には見えなかった。

あの魔法陣が手加減による物だとは思えない。

今回のグラムとの戦闘も含めても手を抜いてる様子はない。

 特別な何かがセーナにもあるのだろうか。

それとも、ミライの女性に対する何かが、彼をそういった行動に動かしたのか。

 分からないけど……分からなくていいかもね。それに……。

 ミチは考えている内に、段々と笑みを浮かべ始めた。

その様子をセーナは不思議に思い、思わず声を掛ける。


「どうしたの?」


 ふつふつと笑うミチに対して、セーナは聞き返した。

ミチは笑いながらもすぐさま言葉を返した。


「いや、ね。私は一度あなたに気を失わされてるのに……どうしてこんなに笑って会話が出来るんだろうって」


 その言葉に少し困惑した表情を見せたセーナだったが、それもすぐさま笑顔に変化した。


「確かにね。私達の繋がりはたった一つ……ミライしかないのにね」


 2人は再びミライを見つめる。

 ミライは大きく寝返りをして、2人の方向に顔を向ける。

 ……こんな幼い寝顔の彼が、私をここまで連れてきてくれた。

あの時の彼の思いは……どんなものであっても、嬉しかった。

 でも、まだ終ったわけではない……。

 2人がミライの表情を眺めていると、ミライは夢の中からぼそりと言葉を発した。


「胸なし……」


 ミチのセーナの表情が急激に強張こわばる。

 ……こんな男に……私が馬鹿らしいじゃない!

 ミチは妙な恥ずかしさを覚えて頬を染める。

そしてミライの頬をつねりながら呆れ口調で呟いた。


「全く……見事に台無しね」


 ミチの言葉を聞いたセーナは大きく笑い出した。

そしてセーナは小さな疑問を笑い声と共に発した。


「はははっ……なんだろうね? ミライの見てる夢」


「さあね! 考えたくも無いけど」


 ミチは声をとがらせ、ミライの頬を強く引っ張る。

 出来ればこの抓りで目覚めてくれてもいいのに……。

そんな事をついつい思っていると、後ろの方から2人に向けてナトレから声が掛かった。


「2人とも楽しんでるところ悪いけど、お客さんよ」


 その声を聞いて振り向くと、そこにはナトレと沢山の女の姿があった。

 セーナはその光景に少し驚きながらも、ミチに言葉を向けた。


「ねぇミチ。私は誰一人分からないんだけど……ミチの知り合い?」


 ミチは目の前に見える彼女達を見てハッとしていた。

 何で、どうして……彼女達がここに居るのよ。

 固まっているミチを心配して、さらにセーナが言葉を掛けた。


「ミチ……大丈夫?」


 ミチはセーナの言葉でと我に返ると、呼吸を整えてからしっかりした口調で声を発した。


「彼女達は……私と同じグラムに囚われていた女性の大半よ。……とにかく、行ってみましょう」


 少しけわしい表情で歩き出すミチに、セーナはただただついて行くことしか出来なかった。

 お久しぶりです。

 ほぼ1ヶ月の間ですが、何もして無かったです。

今更嘘つくのもなんですし……ね。

 その無駄だったかのような時間が無駄ではなかった事を証明するために、今後共々頑張っていきます!

 また長短のお付き合い、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ