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ア・ホールド・ダンジョンズ!  作者: オレン
第二章(上) 束縛された水の街
192/217

第192層 苦手な展開

この作品の作者は、文章表現レベルが現時点で4/無限です。

様々な名称、場面が出てますが、作者は全てオリジナルだと思っています。

作品も作者も成長過程ですので、あまり期待はしないでください。

 ミチの奇妙な悲鳴も聞こえなくなった。

……ナトレが居るから命の問題無いとして、一体何が行われているんだ。

声を上げなければいけない治療って何なんだ……。

 そう考えれば考えるだけ分からなくなる一方だった。

 そして、全く声がしなくなったわけだが……。

 ミライは大きく息を吐き、街の方をぼんやり眺める。

 それにしても街を囲む水壁は、その大きさを把握はあくする事ができない。

恐らく町全体をおおっているのだろうが、その頂点と奥行きが全く見えなくて想像できない。

 一体あれをどうやって作ったのだろうか……。


「うわっ!」


考えを深める中、突然ミライの後ろに何か重いものがし掛かった。

ミラの首元に、細くたくましい腕が2本交差する。


「ちょっと……」


ミライは今までのパターンでナトレの名を呼ぼうとした。

……だがこれは、この胸の無さは……ナトレではない!

 ミライは、現時点で分かる事だけで背中の人物を想定し、言葉を掛けた。


「この感じは、ミチだな」


「正解~」


楽しそうなミチの声が返ってきた。

ミライは追加で言葉を掛ける。


「それにしても、突然どうした? ……あと、凄く変わった匂いする」


 そんなに嫌いな匂いではないが、もの凄く鼻内を匂いが貫く。

何だろ。……香辛料とハーブを合わせた何か?


「あれ、ちゃんと薬拭いたんだけどな……。べ、別に何も無いけど! ただこうしたかっただけ!」


ミチの前半の言葉は凄い小声だった。

 そして、まだ何か隠してる。……ま、どうでも良いのだけどね。

 ミライは、妙にギュッと抱きついてくるミチに疑問を聞いた。


「そういえば、ナトレとセーナは?」


「ここに居るわよ」


ナトレとセーナの声が同時に左右から聞こえてきた。


「うわっ! ビックリした。……なんだよ、終ったならそう声を掛けてくれればいいのに」


2人の突然の登場に驚いたミライは、3人に対して言った。

 しかしミライの問いかけに対し、3人は顔を合わせてクククと笑うだけ。


「……何をたくらんでいる」


「別にないも無いわよーっと」


ミライの呟きに対してセーナは軽く返答し、そしてミライの目の前にちょこんと座った。

……気がついたらセーナの服が白シャツに戻ってた。

 セーナは足を折り、手を組んでの体育座り状態でミライに笑顔を見せる。

……パンツ見えてるんですけど。あの、足……閉じてもらっても。

……なんて言える訳がない。

それに、顔を赤くしてまで……本当に考えが読めない。

 セーナの行動の後、ミチの抱きしめる力が強くなり少し痛い。

 ミライは目線を純白の物から左の方に大きくそららした。

が、そのそらした先にも危険人物が居た。

 胸を巻く布地から、胸の谷間を強調させて見せてくるナトレ。

その笑みはまさしく、何か企んでいる顔。いや、何か楽しんでいる顔だ。


「ナトレ、これは修行か何かの一間いっかんで?」


「さあねー。しいて言うならあなたが鼻血を出したら試合終了かしら」


そう言ってナトレは、笑みがいっそう深まった。

 なるほど、大体流れはつかんだが……。

 ミライはナトレからも大きく目線を逸らし、何も見えない右の空間に目線を向けた。

そして、これまたいっそう力を込めて抱き寄せるミチに対して言葉を向けた。


「ねぇミチ。もの凄く……痛いんですけど」


「あ、ごめん!」


そう謝ってミチは、すぐさま抱きしめる手をほどいた。

そしてすぐさまミチは、ミライの正面まで回り込み、ミライと同じ目線まで腰を下ろした。


「ゆるしてよ、ね?」


首をかしげながらミチは言う。

 胸元がちらりとミライの視野に入る。

……もう、3人は見れない。


「それは別にいいんだけど……」


ミライは口を動かしつつ少しずつ後ずさりしていく。

 本当にこの3人は何を考えているんだ……。

恥じらいを持ってはいるだろうが、まるで恥じらいを知らないようにそれらを見せ付けてくる。

……見せると見えるは違うんだぞ!

 ミライが後ろに後ずさりするにつれて、彼女ら3人はミライに迫っていく。

その3人の笑みが恐ろしくすら感じ始めたミライは、新たな行動に移る。


「こうなったら……」


ミライはその場を立ち上がり、そしてすぐさま後方に向かって宙返りをしてみせた。

 ミライの行動に、彼女ら3人は驚きの表情を浮かべる。

その3人の表情にミライは少しニヤついて見せると、突然真剣な表情を浮かべ言葉を叫んだ。


魔術氷結バリア! バリア、バリア、バリア、バリア!」


 ミライの前後左右上の順番で氷の壁が作り出された。

ミライはその壁々が囲む中心に座り込んだ。

……少し寒い。

 そんなミライを見て、ナトレは言葉をミライに向けた。


「ちょっとミライ、どういうつもり?」


「それはこっちの台詞だ! とりあえず、みんなが正気に戻るまで俺はここから出ない!」


ミライは氷越しで返答し、3人に目線を送った。

 3人は氷越しなので、立っている姿が若干ぼやけてしか見えない。

……これで何とかなるな。

 ミライは3人に対し、さらに言葉を加えた。


「そのバリア、触れたら凍るから! だから、話で今の俺を納得させてよ!」


「困ったわね……」


ナトレが呟き、セーナとミチも表情を曇らせる。

 少し無言の空間が続くなか、口を開いたのはミチだった。


「ほんとにこれ、凍るの?」


「凍るさ。完全に凍りつくまでの間はもの凄く痛む」


 これは嘘じゃない、実際体験した。

痛覚が凍って麻痺するまで、手を切るように痛む。

 ミライの言葉の後、少し間を空けてから再びミチが声を掛けてきた。


「……今回はミライの顔が見なくて、嘘か本当か分からない。でもね、私はミライがそんな簡単に人を傷つけるような人じゃないって……信じてるから」


そしてミチが段々とこちらに近づいてくる。

 表情が見えないのが裏目に出た……。

これは、まずい展開……。


「ちょ、まて!」


「……っあ」


ミチが凍り始めた瞬間がミライの目に飛び込んできた。

……何やってるんだ俺は!


「……っ解除!」


瞬間的なミライの行動で、ミライを取り囲む氷の壁は全て消え去った。

 ミチが崩れ落ちるようにミライの元に倒れこんだ。


「ちょっ……大丈夫かミチ」


少し不安定ながらもミチを抱えて、ミライはそう言った。

 ミチは抱きかかえられたまま、ミライを見つめて薄っすら笑みを浮かべ口を動かした。


「……つかまえた」


ミライに思いっきり体重が掛かり、ミライはその場で押し倒された。

 完全に策にはまってしまった。

 ミチはミライを優しく抱きしめ、言葉を呟く。


「あったかい……」


そう言うミチの手は確かに冷たい。

……ミチを引き剥がそうにも、善意がそれを邪魔する。

逃げられない……。


「って、気づいたらセーナも居るし……」


ミライはあきれ口調で呟いた。

 2人の女の子に体を密着させられても、あまり何とも感じなくなった。

……当然、鼻血なんて出るまでもなく。

少し前に比べれば、大分進歩したのだろうか。


「セーナ、ミチ。もうミライから離れなさい。決着はついたわ」


ナトレからの突然の言葉だった。

 ミチとセーナは、ミライから離れる事無くナトレに顔を向けた。

そして、セーナが不思議そうに言葉をナトレに向けた。


「え、決着ってどういうこと? どうなったの?」


 ナトレは笑みを浮かべながら、おもむろに返答する。


「もう面白いものを見せてもらったし、答えを明かすわ。まずミチ、私達がミライに何をさせたら勝ちだったかしら?」


「ミライに気を持たせたほうが勝ち……だったけど?」


ミチはすぐに返答してからミライから抱きつくのを止め、その場で座る姿勢になった。

 そんな勝負を繰り広げていたのか……。

 ナトレは頷き、再び口を動かす。


「そう。で、あなた達は行動に移った。ミライの気持ちも知りもしないでね」


その言葉に、ミチとセーナは呆然としていた。

 そしてセーナもミライから離れ、ナトレの言葉に耳を向け始めた。

3人から全く反応がないナトレは、少し複雑そうな表情を浮かべながら口を動かした。


「確かに私はあなた達に『ミライはエロいのに弱い!』とは教えたけど……」


「何、変な事教えてるんだ!」


衝撃的すぎて、思わず話の途中で言葉が出てしまった。

 ミライは軽く笑いながら話を続けてと手を差し出す。

 ナトレは軽く咳払いして、話を続けた。


「彼はね。エロ展開が苦手なの。ねぇミライ」


「良くご存知で」


 そう、確かに俺は数々のエロ展開を潜り抜けてきた。

でもそれら全てが自分の意志ではなく、自分の周りで起きた事故のような物だった。

……それは、この世界に来る前からそうだった。


「さて、それを2人が承知のうえで私の小さな企みを話すのだけど……」


 ぎゅるるるるぅぅ……。

ミライのお腹から奇妙な音が鳴り響いた。

……そういえば、朝しか食べてないんだったな。

 その音にミライは照れくさそうに笑みを浮かべ、3人も笑う。


「フフフッ……ミライごめんね」


「私もごめんね」


ミチが突然誤り、それを追いかけるようにセーナも謝った。


「別にいいよ、そんなに嫌いでもないし」


その言葉の後、不思議そうにセーナはじーっとミライを見つめ、ナトレに言葉を向けた。


「ナトレ、ミライが嫌いじゃないのは本当なの? 鼻が嘘ついてないって」


「そうよ。苦手と嫌いは違うわ。さて、明るいうちに先に夕飯の準備しないとね。話はその後よ」


ナトレは笑いながら言い、ミライに背を向け完全に調理準備態勢に入った。

 気がついたらもうこんな時間か……。

俺が眠る時間もそう遠くはなさそうだ。

 そんなことをしみじみ思っていると、再びあの音があたりに響く。

 ぎゅるるるるるぅぅ……。

 今度はミライだけではなく、ミチも同じような音を出す。

 3人はくつくつと喉で笑う。


「……さて俺達もご飯の支度しないとね」


そのミライの言葉を期に、3人はナトレを手伝いに向かうのだった。

さりげない場面でした。

明日も更新できたらなと思います。

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