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ア・ホールド・ダンジョンズ!  作者: オレン
第二章(上) 束縛された水の街
191/217

第191層 魔力を込めて

この作品の作者は、文章表現レベルが現時点で4/無限です。

様々な名称、場面が出てますが、作者は全てオリジナルだと思っています。

作品も作者も成長過程ですので、あまり期待はしないでください。

 何も変化の無い街や空の景色に飽きたミライは目をつぶり、無の境地へと達そうとしていた。

 砂漠にひびくのは、さわやかな風の音。

その風に乗って、強い薬のような臭いが運ばれてくる……。

 運ばれてくるのは臭いだけでは無い。


「ひゃあっ!」


このようなミチの妙な悲鳴も時々聞こえてくる……。

……一体後ろで何が起こっているんだ!


――ミライが街の方向を向いて動かなくなってから、セーナとナトレはミチの治療へと動き始めた。


「……色々あると思うけど、とりあえず全部脱いでね」


ミチに対してナトレはそう指示した。

 ミチはその言葉に黙って従い、脱ぎかけのワンピース、靴、ニーソックスを脱ぎ、それをアイテム画面にしまった。

 パンツ一枚の状態になったミチは、右腕で胸を隠して恥ずかしそう頬を染め、視線を下に落とす。

そんなミチに対し、ナトレは目線を少し下げて更なる指示を口に出した。


「全部と言うことは、下もよ」


「えっ!」


ミチの声が跳ね上がって出てきた。

 ミチはうるんだ瞳で、ナトレに嫌だと上目づかい訴えかける。

だがナトレはそれひるむ事無く、ミチに対して話し始めた。


「……そうしないと治療できないの。ほら、治療もそんなに時間掛からないし、見るのも私達だけだし、別に問題ないと思うわよ。彼がのぞいてたとしても、私にはすぐ分かるから問題ないわ」


そう言ってナトレは、街の方をじっと見つめるミライの方を見た。

 ミチもミライに目線を向ける。

 ナトレは再びミチに対して言葉を掛けた。


「彼も、あなたのいち早い回復を望んでいるの。それに彼やあなたの受けてきた、精神的、肉体的ダメージに比べれば、これ位どうってこと無いのよ。だから、早く終らせましょう」


「……分かったわ」


そう言葉を返し、ミチはメニュー画面を開いて穿いているパンツを一瞬で消し去った。

 両手で上手く隠すミチに対し、ナトレは次の指示を出す。


「じゃあ、そこでうつ伏せになってね」


 ナトレが指を指して指示を出したそこ・・とは、砂漠にかれた薄い毛布。

それは、突然消えてしまったミライのバリアの変わりにセーナがいた、ナトレを寝かせていた物だった。

 ミチは指示されるまま、毛布にうつ伏せに寝転がった。

 そのうつ伏せになったミチに、ナトレとセーナは近づき、ミチを左右で挟み込むように座る。


「さて、治療開始ね」


そう言ってナトレは、どこからともなく謎の古壺ふるつぼを取り出した。


「じゃ、これがセーナの分ね」


ナトレはセーナにその壺を渡し、再び同じ壺を出現させる。

 ナトレから壺を受け取ったセーナは、不思議そうにそれを眺めながらナトレに質問した。


「ナトレ、これ何?」


「万能の塗り薬よ。詳しい使い方は実践しながら伝えるわ」


ナトレは塗り薬を手で救い上げながら言った。

 塗り薬は半透明で、ドロッとナトレの指に絡まりつく。

 セーナもその薬を手で触ってみるも、感触があまりにも気持ち悪く思わず苦笑い。

そんなセーナに目もくれず、ナトレは行動に移った。


「それじゃ、行くわよ……」


薬をネバーっと手に絡ませ、ナトレはミチの背中のあざにそっと触れた。


「ひゃあっ!」


 ミチはその薬の感触に、思わず声を上げた。

ミチの反応にナトレはニヤリと笑みを浮かべ、ミチに声を掛ける。


「少し冷たくてヌルヌルするけど、我慢してね」


そう言いながら、ナトレはミチの尻もとのあざを指でなぞった。


「くぅ……ひゃ……」


ミチはどうにか声を押し殺す。

 ナトレがなぞった痣の箇所は、またたく間に跡形もなく消え去った。


「すごい……」


 その光景に、セーナは思わず声を上げる。

驚きの表情を見せるセーナに、ナトレは微笑みながら言葉を向ける。


「ほら、セーナも塗って。コツは、微量の魔力を込めることよ」


その言葉にセーナはうなずき、その薬をそっと手に取った。

 そしてミチの右脇腹の傷をそっとなぞった。


「にゃはぁっ!」


ミチは声をあげて、苦しそうにじたばた動く。

 それをどうにかナトレがおさえ、セーナに言葉を向けた。


「セーナ、ちゃんと魔法を使うように魔力を込めないと、想像以上にくすぐったくなるから」


ナトレはふふふと笑みを浮かべる。

 その言葉にセーナはごくりと唾を飲み、ミチに声を掛けながら薬を塗りに掛かる。


「ミチ、ごめんね。今度はちゃんとやるから……」


「んふーっ、ふー……」


ミチは声を一瞬噴出すもどうにか声を押さえ込む。

 しばらくして、セーナは段々と薬を塗るこつをつかみ、それを見てナトレも薬を塗る作業に移る。


「んっ、ふふっふふふっふふ……ふー」


ミチの小さな笑い声はようやく収まり、息を大きく吐いた。

 ミチの背面の6箇所の痣、傷跡は綺麗に消え去った。


「はぁー死ぬかと思った……」


軽い呼吸困難のミチは言った。

 少し苦しそうなミチに対し、ナトレは容赦ようしゃなく指示を出す。


「この程度で疲れちゃ駄目よ。ほら、仰向あおむけになって」


「え、少し休憩しようよ。ねー」


「ふふふ、駄目よ!」


「キャッ!」


ナトレによってミチは強引に体をひっくり返された。

 ミチは慌てて見られたくない所をを手で隠す。

 少し泣き出しそうなミチをセーナは眺め、固唾をんで声を漏らした。


「これは……ひどい


「そうね。よくこれだけの事が出来るわね……」


ナトレも、じっくりと傷のある箇所を見ながら言った。

 ミチは恥ずかしそうに、小声で声を出した。


「あまり……見ないで……」


恥ずかしそうに言うミチに対し、すぐさまナトレは言葉を返す。


「ごめんね。今すぐ肉体的ダメージは回復させるから。……だから、手をどけてくれる?」


「……分かったけど……なるべく早く、してよね……」


そうミチは言って、両手を体の上からどけた。

 それを見てからナトレとセーナは、両手に薬をべた付かせて塗る構えをした。


「ミチ、良いわね。セーナも、速さを優先でね」


「分かったわ」


セーナとナトレが顔を合わせうなずき、ミチに薬を塗り始めた。


「くっ……んんっ! ……ふふっ……ひゃっ! ……」


ミチは手足に力を込めて、どうにか小刻みに声をおさえる。

 ナトレとセーナの薬塗りは終盤をむかえる。


「そ、そこは……ひにゅっ!」


ミチの表情がどんどん赤くなり、息も荒くなってくる。

 首下から足先までの痣や傷跡は、見る見るうちに姿を消していく。

……そして、ほんの数十分の治療はようやく終わりを迎えた。


「ミチ、どうにか終ったわよ。もう歯を食いしばらなくていいわ」


「ハァ……ハァ……」


ミチは苦しそうに呼吸をして、その場で体を起こした。

 ナトレは湿しめったタオルを取り出し、それをミチに手渡して話し始める。


「それで体を拭いて、薬を取ってから服を着てね。……セーナも深手の傷を負ったら、この薬を塗ってあげるわよ?」


「絶対に嫌!」


こうから否定するセーナ。

その反応にナトレは笑みを浮かべ、さらに言葉を


「……薬を塗るのがミライでも?」


「……なおさら嫌よ!」


セーナの反応に、ナトレは笑いながら口を動かす。


「ふふふ、釣れないわね。そういえばミチ、あなたの服を直しておいたのだけど……着る?」


ナトレはミチの着ていた肩紐のワンピースを取り出し、ミチに広げて傷一つ無いのを見せる。


「……着るわ!」


ミチはナトレから服を受け取ると、その服を胸に当ててギュッと抱き寄せた。

その光景に、セーナがミチに言葉を掛けた。


「その服に相当思い入れが有るみたいね」


「うん。初めて自分でデザインした服だから……。当然、セーナから貰った服も大事にするわ」


「ふふ、ありがとう」


 ミチも服を着替え終わり、セーナとミチはくすぐったそうに笑みを浮かべる。

そして、ふとセーナはミチの服の異変に気づき、服を直したナトレに質問した。


「ねぇ、左の肩紐……蝶結びのままなんだけど?」


「あ、それね。もの凄い思いと魔力が込められていて、私には到底とうていほどく事は出来なかったのよ」


ナトレは苦笑いを浮かべ、ミライの方に目線を送った。

 2人もミライに目線を送り、ミチは彼を見ながら言葉を口にした。


「このままでいいわ。決して悪い思いじゃないと思うから……」


「……クシュン!」


遠くに居るミライが突然くしゃみを出した。

 その光景に、3人は顔を合わせ笑みを浮かべる。

 そして、ナトレは笑みを浮かべながら言葉を口にした。


「それじゃ、こっそり彼に近づきましょうか。……くっついて、一番気を持たせた人が彼の隣で夕食ね」


「ふふ、良いわよ」


「面白そうね、分かったわ」


ナトレの言葉にミチとセーナは頷きながら返答した。

 そして3人は顔を合わせてニヤリと笑い、ミライの元へ忍び足で近づいていく。


「ヘックシュン!」


 そんな3人に気づかず、ミライはもう一度大きなくしゃみを浮かべるのだった――。

本当はもう2000字ほど追加する予定だったのですが、ね。

……ま、良いでしょう。二章(上)の終わりが伸びるだけですし。


さて、何故か書いてしまった今回の展開! 意外と書くの難しかったです。


程よく隠せて、伏線も張りまくったので消すわけにはいきませんね。

一応R-15指定ですので、消されるのが怖いので控えめの控えめです。


ネタバレすると区切り地点は残り2~10回。

それで2章の半分が終了です。

 そろそろサブタイトル考えないとと思いつつまた次回。

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