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ア・ホールド・ダンジョンズ!  作者: オレン
第二章(上) 束縛された水の街
187/217

第187層 主人への思い

この作品の作者は、文章表現レベルが現時点で3/無限です。

様々な名称、場面が出てますが、作者は全てオリジナルだと思っています。

作品も作者も成長過程ですので、あまり期待はしないでください。

 ミライは必死に頭を巡らせ、この状況をどうにか脱出する方法を考えに考える。

 そして、一つの可能性が頭に浮かんだ。

……だがしかし、もう手遅れだった。

 火の鳥と化したタットは、もう目の前まで来ている。

魔術反射バリアが追いつくとは思えないし、追いついたとしても相手が物理だったらまるで意味が無い。


「くっそおおおぉぉおおおおおぉおおおお」


ミライは叫び、バリア発動のイメージを固める。

 くっ……駄目だ。間に合わない……。

 目の前の光景と熱さに目をつぶる事しかできない。


「バッ………………」


ミライの声は、バチバチと燃える火の音でかき消された。

 ミライは顔横すれすれを何か熱い物が通り過ぎるのを感じ取った。

……あれ、そんなに痛くない。

 ミライは瞑っていた目をゆっくりと開いた。

目の前には、巨大な火の鳥のモニュメントがメラメラと燃えていた。

 まだ届いてなかった……だと……。

そう思ったが、火のモニュメントは全く動く気配が無い。

 時間でも止まったか……と思ったその時だった。


「カーッ、カーッ、カーッ」


バサバサと言う羽音がミライ後方から聞こえてきた。

 羽音はだんだんとミライに近づき、そしてミライの頭の上へと見事に着陸した。

 何故だかよく分からないが、タットがこちらに来たのだ。

……もしかしたらこいつ、操られてないのか?


「お前……これ、どうやったんだ?」


「カーッ、カーカーカーカァーッ!」


目の前の炎のモニュメントについて必死にタットは説明する。

 うん? ……なるほど、分からん。

……お前と言葉をかわせれば、よかったのだけどな。


「で、タット。俺様に力を貸してくれるのか?」


「カァー」


「……ご主人様に歯向かっても良いのか? って、イテテテテ……分かったって!」


おもいっきりタットはミライを頭をつつきに突いた。

 歯向かうという言葉が気に食わないらしい。


「本当に痛いって、お前も彼女を救いたいんだろ!?」


「カーァアッ!」


タットはミライの頭を突くのを止め、鳥胸を張って鳴き叫んだ。

 なんて言葉を返したか分からないが、鴉にしては凛々(りり)しい良い声だった。

……タットが人間だったら、間違いなく良い奴だろうな。


「その気持ちは俺様も同じだ。……勝負は一瞬! お前の作ったこのチャンス、必ず生かして戦いを終らせてやる!」


「カァー!」


 タットの残した炎のおかげで、向こうからこちらの光景は見えない。

そして、彼女らは全く動く気が無いのが、情報強制公開アペンシスで表示されたステータスが動く気配がない。

……今なら、いくらでも2人の隙を作れる。


「俺様は今から、2人の丁度中間に攻撃を仕掛ける。タットはその2人の開いた隙間を飛びぬけてくれ。

そして通り抜けたら俺様の目を見つめろ! そこまで出来れば、絶対勝てる。分かったか」


「カァーッ!」


 良い返事だ。

 言葉は通じなくても、他に通じる何かがあれば何だって共にやって行ける。

それは性別や種族なんて関係ない。共通の思いがあれば、何だって同じだ。

 ミライは足元に薄っぴろくバリアをいた。

……頭に浮かんだ考えが上手く行かなかったら、何もかもが無駄だな。

 ミライは若干苦笑いを浮かべつつも、作戦実行に移った。


「いくぞ! 圧縮の水撃スプラッシュショット!」


ミライ前方の空間に魔法陣が形成され、そこから勢い良く水撃が放たれた。

その水撃は目の前の炎を消し去り、2人に凄まじい速さで向かっていった。


「……スケイシス」


すぐさまネクが例の魔法陣をミライ足元に形成する。

 だがしかし、ミライの放った水撃が消える事はない。

 予想通り、魔法陣自体が魔法だったか。

それなら、その効力がバリアを越えて来るのは難しい。

 しかし2人は、予測通りミライの攻撃を素早くかわした。


「頼んだぞ、タット!」


ミライは叫び、2人の間を指差してタットに指示を出した。

 タットはそれに応えるようにミライの頭を飛び出し、2人の元へと飛んでいった。

その勢いは、火の鳥への変化も向かっていくスピードも先ほどとは比べ物にならないぐらい速い。

 さっき向かってきたときは、鴉ながらに手を抜いてくれていたらしい。

……あんなの食らったら、生き残る希望すら薄いな。


「スタースライサー!」


当然、危険な攻撃を消し去ろうとクリーが先ほどの攻撃を仕掛けてきた。

 その光景に、タットはチラリと光の玉の方向に目線を向ける。


「お前は一直線に進め! 援護するから! 燃盛る変化球フゲネスフレイム!」


ミライは叫ぶと、足元の2枚の魔法陣を上書きする様に大きな赤い魔法陣が作り出された。

 そして火の玉、と言うより火の光線がクリーの造り出した光玉こうぎょくと天井を貫き、破壊した。


「……ダークフレイム」


ネクが呟くと、あの階段で見たときと同じような青き炎の塊が3連発で放たれた。


「バリア!」


ミライは透明な氷壁を作り出し、それを思いっきり前方に飛ばした。

 1つ、2つと炎の塊を弾き返し壁と言う壁にぶつける。

凄まじい爆破音と共に、地面と右側の壁に焦げあとと大穴を残した。

 しかし、3発目の炎の塊をバリアで捉える事はできなかった。

……まずい、しくじった。

 タットは一撃を食らい、大きな爆風と共にまとっていた炎を吹き飛ばされた。


「タットぉぉおおおおおっ!」


その光景にミライは大声で叫んだ。

 だが、通常の姿に戻ったタットであったが、高度は落としてもスピードはまだ落とさない。

……ちくしょう、無茶しやがって……。


「いっけえええええぇぇえええぇええ!」


ミライの叫びに応えるように、タットはスピードを上げてそして……。

 クリーとネクの間を通り過ぎた。

だが、通り過ぎると同時に地面に落ち、そこから大きく転がった。

 タットは地面で痛々しい4回転半をきめ、そして約束通りこちらに目線を送ってきた。

……ありがとう、タット。それだけ頑張れば十分だ。


「……瞬間裏移動ムーブメント


ミライが呪文名を言い終わる頃には、タットの目の前かつ2人の目の前に立っていた。

 そして、2人の女性を肩から抱き込むように両腕を押し込んで、小さな声で一言呟いた。


魔術氷結バリア……」


 ミライの両手元から、小さな氷の破片が作りだされた。

そして、その氷の破片は見る見るうちにミライの両腕と、2人の女性を包み込んでいく。


「悪いな、少し眠っててもらうよ。何所どこまで凍るか操作できるのは俺様だけなんでね」


その言葉を言い終わる頃には、2つの女神の氷像が完成していた。

……正直、氷の操作はバリアに触れてから凍るまで時間なので、放っておけばそのうち自分も凍り付いてしまう。

 さらに言うと、完全に素早く凍ったほうが楽。……凄く手が痛い。


「……氷結解除リースト


ミライが呟くと、またたく間に3人をおおっていた氷が消え去った。

 残ったのは氷のように冷たい自分の手と、氷のように眠る2人の

 なんとか勝てたわけだ……。


「……ありがとうな」


改めてタットに感謝の言葉を言い、口元に回復薬を流し込んでやる。

 この薬は動物にも効果があるのだろうかと言う疑問が出来たが、今は考えている余裕など無い。

 ミライは2人と一匹を、何も壊れてない壁際に優しく寝かせた。

……気がつけば、後ろに有った数々の魔法陣は姿を消している。

 そして、ミライは戦いに燃え尽きたタットの目の前に2本の回復薬ビンを置いた。


「ここに回復薬を置いていくから、2人が目覚めて正気に戻っていたら渡しておいて」


「クァー……」


小鳴きながらも、タットは返事を返した。

 返事が出来るなら、きっと大丈夫だろう。

そう信じて、ミライは自分用に一本回復ビンを取り出し、口の中に一気に流し込んだ。

 158の回復。相当辛い戦いだった……。


「さて、待ってろよ……ミチ」


ミライはしっかりとした口調で呟き、ボロボロになった通路を進んでいくのだった。

地味に好きな感じになりました。

……いよいよですね。本当にいよいよです。

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