第184層 連行現場
この作品の作者は、文章表現レベルが現時点で3/無限です。
様々な名称、場面が出てますが、作者は全てオリジナルだと思っています。
作品も作者も成長過程ですので、あまり期待はしないでください。
街を覆う水壁を抜けて、宮殿に向けての大通りを進んでいたときだった。
「ちょっと、放してください!私は宿の仕事があるんです!」
「王の命令だ、さっさと来い!」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
その会話光景に目を向けると、やはりそこには彼女がいた。
宿屋で出会った、銀髪のクロネだ。
ついでに、宿屋で俺様とミチを連行した女兵2人もいるが……。
クロネは両手を女兵2人に捕まれ、抵抗しながらも、ズルズルと引っ張られている。
何だか分からないが、よくない状況に立ち会ったらしい。
どうしようかとミライが迷っていると、クロネがもがきざまに後ろを振り向き、目線がしっかりと合わさった。
その瞬間、ミライはほぼ無意識に行動に出ていた。
……共に行動していた女兵が左右に分かれて吹っ飛んだ。
「きゃっ。……お、お前は!」
「以外に女性らしい声も出るんだな」
ミライの不敵な笑みと言葉に、声を上げた女兵は目線を逸らし顔を染めた。
「うるさい! それよりも貴様、何故こんなところに」
「招待されたのでね。それをぶち壊しに」
ミライは持ち手の箒と手紙を持ち替えて、見せ付けながら言った。
この紙を握ってるだけで、虫唾が走る。
でも、まだ捨てるわけには行かない。
「そんな事、させる訳にはいかないな」
その言葉とともに、女兵2人は立ち上がった。
「あのーミライさん」
結構大事な場面に似合わないトーンで、クロネが声を掛けてきた。
当然のようにミライは下を向いて声を掛け返した。
「どうした? クロネ」
「少し、冷たいのですけれど……」
困ったような表情と瞳で訴えかけてくるクロネ。
あー、そういえばそうだった……。
水壁を通ってきたから、体全身が水でビショビショなのは当然だ。
そして現在おかれる状況は、クロネをお姫様だっこした状態。
一瞬で何をどうしてこうなったかは、……自分でも実感が無いぐらいだ。
とにかく、こんな濡れた体で抱き寄せれば、当然水分は相手側にも移動するわけで……。
「ごめん。服濡らしちゃったな」
「別に良いです。……それよりも」
クロネは左右の女兵に目を配った。
それよりも、この場をどうにかしなければならない。
「……逃げるぞ、クロネ!」
ミライは大声で叫び、小さな路地に向かって走り出した。
「はい、お願いします」
その言葉とともに、身を委ねるクロネ。
クロネは姫様だっこが嫌ではないらしい。
もしかしたら、女性全てがそうなのだろうか。
「待て!」
少し距離を置いた場所から2人が追いかけてくる。
1つ目の十字路を越えて、すぐさま後ろを振るかえる。
「瞬間裏移動」
ミライは小さく呟き、女兵の後ろに回りこんだ。
そして、すぐさま通り過ぎた十字路で違う道を選択し走り出した。
後ろから追いかけて……こない。
作戦は無事成功というわけだ。
「強くなりましたね」
ミライの腕に包まれるクロネはささやくように言った。
その言葉に、ミライは思わず笑みを浮かべる。
第3者からの褒め言葉は、何だかくすぐったい。
「ありがとう。それよりも、どうしてあの人たちに?」
「披露宴での食事を私に用意しろと言って来たんです。お仕事が有るのでお断りしたんですけど、強引に引っ張られて……」
「ふーん。て事は、まだ準備中な訳だ」
助け出す形のイベントは、大体がメイン場面での救出が一般的だが……関係ないか。
忙しい中の押しかけも悪くない。
「さて、着いた」
ミライは足を止め、その場にクロネを降ろした。
着いた先は、敵の本拠地へ続く階段の前。
こうして見上げてみると、やはり高く、大きい。
目線を宮殿からクロネに向けて、苦笑いを浮かべつつも言葉を掛けた。
「ここまで連れて来てごめんな。本当は宿前まで行ければ良かったんだけど……」
「別に大丈夫です。助けてくれてありがとうございます」
クロネは深々とお辞儀をして、それから満面の笑みを浮かべた。
これが営業スマイルでない事を願いたいものだな。
「いえいえ。じゃ、俺様は急ぐから。気をつけてね」
そう言葉を残して、ミライは逃げるように宮殿の階段を駆けて行った。
クロネは、そんなミライの後姿に再び深々とお辞儀をする。
そして薄ら笑みを浮かべ、その場を後にした。
「はぁー……俺様ってもう言わなくて良いかな」
恥ずかしいし……。
ミライは大きな独り言を吐き捨てながらも、一歩一歩階段を駆け上がるのだった。
クロネの服装は、メイド服orエプロン姿
決まってないので、お好きな方をどうぞ。