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ア・ホールド・ダンジョンズ!  作者: オレン
第二章(上) 束縛された水の街
182/217

第182層 眠れぬ夜

この作品の作者は、文章表現レベルが現時点で3/無限です。

様々な名称、場面が出てますが、作者は全てオリジナルだと思っています。

作品も作者も成長過程ですので、あまり期待はしないでください。

 食事で使用した食器もさっさと洗い終わり、3人は早くもミライの魔術反射バリアの上で横になっていた。

 何故か当然のようにミライが真ん中である。


「ね、せっかく広めに作ったんだしさ、もう少し間合い取ってもいいんじゃ。いや、むしろ離れてよ」


「別に良いじゃない。昼間に比べたら、だいぶ寒いんだし」


そうナトレは言って、ミライの腕をギュッと抱きしめる。

 何故か知らないがセーナも負けじとギュッと力をこめてきて、少し右腕が痛い。

 それよりも、これではせっかく多めの魔力で作った薄っ広い魔術反射バリアの意味が無い。


「別に良いじゃない。こんな美人に挟まれながら眠れるなんて、最高じゃない」


安定の心の読みでナトレは語った。


「肯定も否定もしない。てか、眠れないし」


「ふふ、安全な言葉の選択ね。どちらか決まらず迷ったときは、幸せに考えるのが一番よ」


ナトレの口調は、いかにも経験を積んだような口調である。


「これからはそうします」


「今からそうしなさい!」


「のあっ!」


腕どころか、体に抱きついてくるナトレ。

 荒っぽい息遣いまで、首元で感じ取れる。

 ……このままどういう展開にもって行こうって言うんだ。


「頭痛い……」


セーナは突然そう呟き、うなっている。

 ナトレの方は見れないので、ミライはセーナの方に目を配って話し掛ける。


「酒に酔いすぎだ。それにお前は熱も有るんだし、無理も無いって」


熱が有るのは、横になる前に分かった事だ。

 今でも密着する体から、ひしひしと熱が伝わってくる。

 ナトレと比べると大分暑いので、分かり安い。


「あなたも相当酔ってるわよ。口調がだいぶ荒れてきてるもの」


ナトレは耳元でささやき、笑みを浮かべる。

 言われて見れば確かに……不覚である。


「早く酔い覚めねーかな」


「あなた達にとって、この世界は時間の流れが早いの。だから風邪も酔いもすぐに回復すると思うわ」


「だったら良いんだけど……」


ミライは、辛そうにしているセーナを見つめながら言った。

 頬を赤く染め、息遣いもナトレより荒い。

……風邪引いたら、体力は下がるのだろうか。

 そんなことを思っていたら、ナトレが大きく欠伸をして涙を浮かべた。


「……私もそろそろ眠る時間が来たようね」


「おやすみ」


ミライが素早く言葉を差し込んだ。

 その対応にナトレは笑い、言葉を返した。


「まだ早いわよ。……12時間後よね。その後はどうなってるかしらね」


遠い星空を見つめながらの言葉だった。


「迷ったら幸せなほうに、でしょ?」


「あら、そうだったわね。不覚だわ」


ナトレとミライは笑みを浮かべる。

 言葉の隙を突くとは、こんな感じなのだろうか。

決まると気分が良い。

 ナトレは微笑んだまま、再びミライに話し掛ける。


「あなたも幸せに考えなさいよ。そして、攻めなさい。守る者があるときこそ、攻めるのよ」


「守ったり逃げたりしても良いんじゃ?」


「確かに時として悪くないわ。でも、まずは攻め。何事においても、それが一番大事よ」


「攻め……か」


そうミライはぼやく。

 考えてみれば、自分には似合わない言葉であった。

成り行きで生きてきた、自分にとっては……。

 そんな考えのミライを置いて、ナトレは再び大きく欠伸をする。

そして、眠る前を見計らったように、最後の言葉を話し出した。


「覚えておきなさいよ。少なくとも、私はそう思っているから。それじゃ眠りながら健闘を祈ってるわ。おやすみなさい」


「おやすみ、良い夢を」


そうミライは言葉をかけると、ナトレは薄っすら頬を緩めた。

 そんなナトレの表情にミライは笑みを浮かべて、セーナの方を向く。

 ミライの視線に気づいたのか、セーナは無理に笑って見せて、そして話し出した。


「ねぇミライ。……ミチを助けた後、どうすの?」


「……まだ、決まってない。次エリアに進む道を探すか、それとも」


この世界の王を倒し、世界を平和を取り戻すか。

……ミチなら間違いなく後者だな。


「それとも?」


「いや、話す事の程でもないさ。それより、セーナはどうすんだ?」


「……私も先に進まないとね」


どこか複雑そうな表情で、セーナは言った。

 ただ体調が悪いだけかもしれない。


「なぁ、俺たちと共に行動しないか?」


その言葉に、セーナはハッとした表情を見せた。

 だがその表情は、すぐに寂しい表情に変わった。


「……うれしいけど、別にいいわ。……私には私の考えが、ね。あと、俺様ね」


「あ、しまった」


その言葉の後、2人はにこやかに笑う。

 だが、両手が塞がっていて、薬がメニュー画面から取り出せない。


「別にナトレも寝てるしいいわよ、飲まなくて」


そのセーナの言葉の瞬間、ナトレの抱きしめる強さが少し強くなった。

 ……まだ、起きてるな。薬はセーナに免じて飲む気ないぞ。


「その代わり……」


セーナが言葉を詰まらせた。


「その代わり?」


ミライは徐に聞き返した。

 その言葉に後押しされ、セーナゆっくりと口を開いた。


「必ずミチを助けて、私に2人の元気な姿見せてよね!」


その言葉の瞬間、ナトレの抱きしめる力が少し弱くなった。

 眠ったか?


「ありがとう」


「……ねぇ、もっと近づいていい?ナトレみたいに……」


ナトレが再びギュッとする。

 何なんだこの人は!


「いいよ。罰ゲームは平等じゃないとな……」


 いいよ、の瞬間でセーナはぐっとミライに近づき、ナトレ以上に抱きしめてきた。

 セーナの熱い体温が嫌でも伝わってくる。……嫌じゃないけど。


「私もこのまま眠るわね」


「あぁ、お好きにどうぞ」


「ふふ、ありがとう。おやすみ、良い夢を」


「良い夢を」


俺は眠れないんだって! とは、心の中で吐き捨てておく。

 明日はいよいよ決行の日。

失敗なんて許されないし、考えたくも無い。

 信じれるのは今までやってきた自分の修行の実力と、メニュー画面でミチの名前がまだ消えてない事。

 ミチの体力は日に日に削られて、残り半分を切っている。

何をしてるが知らないが、あの王を許す気は無い。

 場合によっては……。

 とにかく、考えても仕方ない。

良いイメージで時を待つのみ、だ。


「よし、やってやるぞ!」


ミライは言葉で決意表明をし、空に浮かぶ星々を数えながら夜を過ごすのだった。

物語はメインイベントへ……。

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