表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

『最弱Eランク?___いいえ、”測定不能”です。』∞幼女、世界を壊さず支配する。

作者: るな
掲載日:2026/05/03

あらすじ


 コンビニで働く平凡な青年は、ある夜、暴走するトラックから少年を庇い命を落とす。

 ——次に目を覚ましたとき、彼は異世界で幼女「ルミナ・アルシエル」として転生していた。


 だが、その力は常識外れだった。

 すべての能力値は“∞”。測定不能。規格外。


 ギルドでは最弱のEランクと判断されながらも、災害級の魔物を一瞬で消し去る。

 その存在はやがて、貴族、ギルド上層部、そして世界の裏側へと波紋を広げていく。


 やがて明かされるのは——

 彼女が“ただの転生者ではない”という真実。


 世界を維持し、同時に終わらせ得る存在。

 何度も繰り返される世界の中で、それでも彼女は選び続ける。


 「壊さないよ。別に、その方がいいし」


 これは、終わらなかった世界と、

 終わらせなかった少女の物語。


柔らかい。


 最初に感じたのは、それだった。


 温かくて、沈み込むような感触。


 身体の輪郭が、どこか曖昧で——

 まるで何かに包まれているみたいだ。



 ゆっくりと、意識が浮かび上がる。



 ——ここは、どこだ。



 目を開けようとして、まぶたの重さに気づく。


 何度か瞬きを繰り返して、


 ようやく視界がひらけた。



 知らない天井だった。



 木の梁。


 白い壁。


 どこか温もりのある空間。


 でも——


 見覚えは、ない。



 「……?」



 声を出そうとして、違和感に気づく。



 「ぁ……」



 かすれた音。


 そして、気づく。



 ——高い。



 いや。



 高すぎる。



 自分の声じゃない。



 慌てて身体を起こそうとして、


 思うように力が入らない。



 腕を持ち上げる。



 視界に入ったそれを見て、


 思考が止まった。



 小さい。



 指が短い。


 手のひらが丸い。



 ぷに、と触れると、


 柔らかく沈んだ。



 (……子供?)



 いや、違う。



 それどころじゃない。



 (……は?)



 頭の中に、記憶が浮かぶ。



 コンビニ。


 夜勤。


 レジ。



 いつも通りの、退屈な仕事。



 それから——



 眩しいライト。


 ブレーキ音。



 目の前で固まっていた、少年。



 「……っ」



 胸の奥が、ひやりと冷える。



 自分は、あのとき——



 「……死んだ?」



 そう言ったつもりだった。



 でも。



 「ぁぅ……」



 出てきたのは、幼い声。



 決定的だった。



 「目を開けたわ……!」



 すぐ近くで、女の声。



 視線を向ける。



 知らない女性が、こちらを覗き込んでいた。



 涙ぐんだ瞳。


 ほっとした表情。



 綺麗な人だと思った。



 「よかった……本当に……」



 震える声でそう言いながら、


 頬に触れてくる。



 温かい。



 妙に、現実的な温もり。



 (……誰?)



 分からない。



 でも。



 怖くはない。



 むしろ——



 大切なものを見るみたいな目だった。



 そのとき。



 頭の奥で、“何か”が動いた。



 《個体認証完了》



 無機質な声。



 直接、意識に響く。



 (……なにこれ)



 周りを見る。



 誰も反応していない。



 つまり——



 自分だけに聞こえている。



 《特典スキル付与を開始します》



 嫌な予感しかしない。



 だが、止まらない。



 《全属性魔法 取得》


 《無限成長 取得》


 《時間操作 取得》


 《因果干渉 取得》


 《運命改変 取得》



 (いや)



 (多すぎでしょ)



 思わずツッコミそうになる。



 でも。



 全部、分かる。



 意味も。


 使い方も。



 だからこそ、おかしい。



 (何これ……)



 そのとき。



 胸の奥に、“何か”があるのに気づく。



 静かで。


 深くて。



 底が見えない。



 試しに、ほんの少しだけ意識を向ける。



 ——瞬間。



 空間が、きしんだ。



 見えないのに。



 “歪んだ”と分かる。



 世界が、ズレたみたいに。



 (……やば)



 すぐに意識を引っ込める。



 元に戻る。



 何もなかったみたいに。



 鼓動が早い。



 この小さな身体でも、ちゃんと分かる。



 (これ、普通じゃない)



 当たり前だ。



 死んで。


 目が覚めたら幼児で。


 意味不明な能力つき。



 まともなわけがない。



 でも——



 不思議と、落ち着いていた。



 (……まあ、いっか)



 ぽつりと思う。



 一度、死んだ。



 だったら、ここから先は“おまけ”だ。



 それに。



 さっきの“力”。



 あれは危ない。



 使い方を間違えたら、


 たぶん——取り返しがつかない。



 だから。



 (……出さない方がいい)



 自然に、そう思えた。



 意識を奥に沈める。



 力を抑える。



 それだけで、静かになる。



 何もなかったみたいに。



 「……あぅ」



 声を出してみる。



 やっぱり幼い。



 でも、それでいい。



 今は——これでいい。



 視線を上げる。



 女性が、まだ見ている。



 今度は、やわらかな笑顔。



 「ルミナ……」



 その名前を呼ぶ。



 胸の奥が、わずかに反応する。



 (……ルミナ)



 それが、自分の名前らしい。



 少しだけ、確かめる。



 悪くない。



 むしろ、しっくりくる。



 「ルミナ、いい子ね」



 頭を撫でられる。



 温かい。



 安心する。



 理由は分からない。



 でも——



 嫌じゃない。



 (……まあ、いいか)



 また、同じ結論。



 分からないことだらけ。



 でも。



 焦る必要はない。



 時間は、たぶんある。



 ゆっくりと、まぶたを閉じる。



 意識が沈む。



 その奥で。



 ほんの一瞬だけ。



 何かが、揺れた。



 まるで——



 “目覚めたこと”を、



 どこかで誰かが、認識したみたいに。




 それはまだ、誰も知らない。




 この小さな少女が、




 世界の前提そのものを揺るがす存在であることを。

世界を壊せるけど、壊さないだけ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ