無夢の焦がれ
私は生涯、夢と云うものを見たことがなかった。
眠ってみる『夢』も、将来を望む『夢』も。
人生はレール引かれていたし、有難いことに眠りは深いので当然と云われてしまえばそこまでである。
しかし私は、見たことのない『夢』と云うものに強い魅力を見出した。
試しに私は、これからしたいことを考えることにした。
しかし困った。これと云ってしたいことがないのだ。友人は居るには居るが己で誘って遊びに出る気も起きない。今やっている仕事も特段不満があるわけでもなく、やってみたい職もない。恐らく両親は、幼いころからこんな調子の私を見かねて、道を作っておいてくれたのだろうと、今更ぼんやりと感じた。
これからしたいことを考えるのは失敗に終わった。であったら次は、どうにかして眠って夢を見ようと決める。
夢は眠りが浅い時に見るらしい。では、どうやって眠りを浅くしようか。常に半分起きている状態であれば良いのではないか。そう結論付けた私は、先程まで連絡を渋っていた友人に便りを出した。
しかし私は、いくら友人が私を起こし続けても全く眠りが浅くならない。友人と共に眠りを浅くする方法を調べ実践しても私はぐっすりと寝入ってしまう。健康なようで何よりだ、と笑って云う友人に私は礼を云って帰ってもらった。これ以上友人を巻き込んでは、友人が不眠の病を患ってしまう。
他の友人に相談してみても首を捻るばかりだった。そして、その『夢』を見たいと云う気持ちこそ、君の求めている状態なのではないか?とも云われた。
本当にそうなのだろうか。友人の云う通り、これが私の求めていた『夢』を見ている状態ならば、焦がれていたものに手が届いたことになる。これは喜ばしいことだ。しかしどうにも実感が湧かない。きっとこれは、友人の云っている通りではないのだろう。
調べる中、走馬灯、と云うものを知った。曰く、死に際に見る過去の追体験のようなものらしい。
過去の出来事を『夢』に見る者も居るらしい、という友人の言葉が頭を横切る。同時に、これだ、と強く感じた。
手頃で頑丈な縄を用意して、柱へと括り付ける。
輪を描いた縄に、期待を込めて体を預けた。
ミシリ、ミシリと締まるばかりで一向に『夢』は見ることが出来ない。あぁ私は、走馬灯すら見ることが叶わないのか。おぉ、神よ。お恨み申し上げます。
その刹那。チカチカとしていた私の頭に、意図せず記憶が駆け巡ってくる。
情報が荒波のように迫ってくる。
これが、私の望んだ『夢』なのだろう。
あぁ、なんて美しい。なんて素晴らしい。
そう浸っていると、視界に何かが映った。…あれは、私であろうか。それは私に近づき、問いかけてくる。
素敵な夢は見れたか?と。
勿論だとも。これほどまでに美しく輝かしいもの、世に存在するものか。あぁ、一度きりであることが少しばかり寂しい。だが、望みを得て幕を閉じるのならば、この上ない幸福であろう。
馬鹿野郎、と呟く友人の声が聞こえた気がした。
こんにちは。もしくはこんばんは。あゆーです。
【無夢の焦がれ】いかがだったでしょうか。
書き出しの私も真逆主人公がこんな事するなんて思ってませんでした。工程をいろいろとばし過ぎですこの主人公。気分が悪くなったりした方がいたらすみません。
あっためてたやつが尽きたのでまた半年ぐらい浮上しないんじゃないかな。
ではまた、次回の作品で会いましょう。
ここまでお読みいただきありがとうございました。




