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Scene06:盤上の遊戯
「ギャラリー・ヴァルハラ」の最上階。
「静謐」が支配するオーナー室で、サイファーは無数のモニターを眺めていた。
モニターの一つには、地下「タルタロス」で、なおも破壊の限りを尽くす黒龍とイェーガーの戦闘が映し出されている。
別のモニターには、AI「アルゴス」がパニックを起こし、論理エラーの警告を吐き出し続けるログが流れている。
そして、メインモニターには、スタッフ用エレベーターから脱出し、カレイドポリスの酸性雨の中へと消えていく、小さな人影——有栖川玲の姿があった。
サイファーは、能面のようなサイバーマスクの奥で、満足げに息を吐いた。
「見事だ、有栖川玲」
その手には、旧時代の「碁石」が握られている。
「渉……お前の『遺産相続ゲーム』は、まだ始まったばかりだ。——さて、次の『盤面』はどう動くか」
サイファーは、玲という「ノイズ」が、「秩序」と「混沌」の盤上にもたらした波紋を、愉しむように見つめていた。




