表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/29

Scene23:「幽霊の道(ゴースト・ルート)」と「虚無」の呪い

「……はぁ……っ、はぁ……っ……!」

灼熱の「焼却炉」から転がり込んだ「排気ダクト」の中は、対照的に、冷たく湿った「闇」が支配していた。 アマテラスの「論理」が届かない、「旧霞が関セクター」の「遺物」。 カビと、錆びた「鉄の味」の「ノイズ」だけが、玲の共感覚を鈍く刺激する。

「……玲! 玲!」

桜井の必死の声が、暗闇の中で反響する。 玲は、ダクトの床に崩れ落ちていた。 「焼却炉」の炎を「調律」で捻じ曲げた負荷が、限界を超えていた。 だが、それ以上に、玲の「生」の「ノイズ」をむしばんでいるものがあった。

「(……さむい……)」

ミカゲに斬られた右肩。 桜井が必死で巻いたジャケットの布は、とっくに「虚無」の冷気に侵され、まるで凍りついたように硬直している。 傷口から、物理的な「血」の代わりに、「黒い粒子」のような「虚無」の「ノイズ」が、玲の体内へと広がっていくのが、「味」として感じられた。

「(……『消える』……。私の『音』が……)」

「祓魔師」の「アンチ・クォンタム」。 それは、玲の「魂」そのものを「穢れ(ノイズ)」として、「虚無」に「祓おう」としている呪いだった。

「玲!しっかりして! 黒龍かれも……ジンちゃんも……助かったんだから!」

桜井が、玲の身体を抱き起こそうとする。 その傍らでは、ジンの「生体ポッド」が、辛うじて緑のランプを点滅させている。 そして、ATLASアトラスの「死体コンテナ」の台車の上で、黒龍は未だ意識を失ったままだ。 だが、彼の手は、玲の左手と、ヴァルハラの「遺産(魂石)」を、三つ巴で握りしめている。 黒龍の「意志」の「ノイズ」は、玲の「調律」と「遺産」の力によって、辛うじて「死」の「静寂」から繋ぎ止められていた。

「(……ダメだ……。このままじゃ、私も……黒龍かれも……『虚無』に……)」

玲の意識が、冷たい「闇」に沈みかける。

「桜井……」 玲は、最後の力を振り絞り、言葉を紡いだ。 「『遺産これ』を……ATLASアトラスの『神託コンテナ』に……もう一度……」

「え……? でも、アマテラスの『論理』は……」 「いいから……早く……!」

桜井は、玲の「覚悟」を決めた「ノイズ」に押され、震える手で、黒龍と玲が握りしめた「遺産(魂石)」を、再びATLASアトラスの「死体コンテナ」のインターフェイスに押し当てた。

「(……『三重奏トリプル・ノイズ』を……もう一度……)」

玲は、ミカゲの「虚無」の「呪い」と、黒龍の「瀕死」の「ノイズ」と、ATLASアトラスの「死体」の「論理」を、自らの「調律」の「歌」で、強引に「共鳴」させようと試みた。

「(私の『虚無ノイズ』も……黒龍かれの『ノイズ』も……全部、ATLASアトラスの『秩序ノイズ』に……喰わせてやる……!)」

それは、「調律」というよりも、「生」への「渇望」の「絶叫」だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ