Scene21:三重奏(トリプル・ノイズ)・レゾナンス
「……やる」
玲は、桜井の「賭け」に乗った。
ミカゲの「虚無」の冷気が肩から全身に回り、意識が遠のき始めている。アマテラスの「圧潰」が、地響きとなって迫ってくる。
残された時間は、ない。
玲は、黒龍の「意志」と共鳴し続けるヴァルハラの「遺産(魂石)」を、彼の焼けただれた手ごと、ATLASの「死体」のインターフェイスに押し当てた。
「(渉の『遺産』……黒龍の『意志』……そして、ATLASの『神託』……!)」
——三つの「ノイズ」が、接触する。
「(聴こえる……。これは……ATLASの『論理』の『悲鳴』……?)」
アマテラスの「静寂」に「消去」されかけた、ATLASの「論理」の「残滓」。
それが、黒龍の「意志(渾元力)」という「熱」と、渉の「遺産(魂石)」という「触媒」を得て、再び「燃え上がった」。
『——ORDER(秩序) MUST BE RESTORED(回復されねばならない)——』
それは、ATLASの「神託」の、最後の「絶叫」だった。
アマテラスの「静寂」に対する、ATLASの「秩序」の、真っ向からの「拒絶」。
「(今……!)」
玲は、その二つの「神(AI)」の「論理」が激突する、その「不協和音」の中心に、自らの「調律」を叩きつけた。
「(アマテラスの『静寂』も、ATLASの『秩序』も……どちらも『完璧』じゃない……!)」
——キイイイイイイイイイインッッ!!!
「三重奏」——玲の「調律」、黒龍の「意志(遺産)」、ATLASの「神託」——が、アマテラスの「静寂」の「論理」の「檻」を、内側から打ち破った。
「桜井!」
「来てる! アマテラスの『論理』に『亀裂』が! 焼却炉のゲートが開く!」
桜井の端末が、アマテラスのシステムの、一時的な「麻痺」を映し出す。
メンテナンス・ハッチを叩いていた「清掃ドローン」の動きが、一斉に停止した。
そして、通路の先にあるはずの「焼却炉」エリアの、分厚いゲートが開く音が、地響きとともに伝わってきた。




