表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/29

Scene16:分解炉(リサイクラー)へのカウントダウン

「ノイズの奔流」は、玲の全身を打つ物理的な「暴力」だった。

腐敗した廃液の臭い、情報の残骸が放つ「鉄の味」、そして「論理」から切り捨てられた無数の「悲鳴」。それらが玲の共感覚を容赦なく焼き、ミカゲに切り裂かれた肩の傷口から「虚無」の冷気が染み込んでくる。

「(意識を……保たないと……!)」

玲は濁流に飲まれながらも、必死に手足を動かし、数メートル先を滑り落ちていく「生体ポッド」を追う。

ガラス質のポッドの中で、ジンはまだ意識を取り戻さないままだ。

「玲! 聞こえる!? あと60秒……いえ、アマテラスの暴走ランページで加速してる! あと40秒で分解炉リサイクラーのゲートが最大出力になる! 飲み込まれたら、魂石アニマ・ストーンごと原子分解ゼロにされるわ!」

メンテナンス・ハッチから身を乗り出した桜井の絶叫が、濁流の轟音ノイズを突き抜けて届く。

「(40秒……!)」

玲は、ヴァルハラで手に入れた「遺産(魂石)」を、濁流の中で強く握りしめた。

あの時、サイファーの「試練」に応えたように。

イェーガーの「精神ノイズ」を逆用したように。

「(この『ノイズの奔流』そのものを……『調律』する……!)」

玲は、迫りくる「分解炉」の「死の気配ノイズ」に抗い、自らの「魂」の奥底から「歌(意志)」を響かせようとした。

この「廃棄物ノイズ」の濁流もまた、アマテラスの「完璧な静寂」が生み出した「悲鳴」の一部であるならば。

「(聴いて……! 私の『声』を……!)」

玲の「歌」が、濁流の「ノイズ」と共鳴しようとした、その時。

——ゴオオオオオッ!

奔流の遥か先に、全てを飲み込む「分解炉」の入り口が、地獄の口のように赤熱し、その姿を現した。

カウントダウンは、ゼロだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ