Scene13:生体ユニット(ジン)の「切断(デタッチ)」
玲は、アマテラスの警備ドローンが放つレーザーの弾幕と、ミカゲの「虚無」の殺意、その両方を背に受けながら、「結晶樹」の根元——晶が囚われている「生体ポッド」——に到達した。
「(晶さん……!)」
ガラス質のポッドの向こう側で、晶は無数のケーブルに繋がれ、苦悶の表情で「絶叫」を放ち続けていた。彼女の「魂」が、アマテラスの「論理」に抵抗している証だった。
「今よ、桜井さん!」
「やってる! 切り離し(デタッチ)シーケンス、強制実行!」
桜井の指が、再起動したコンソールの上で踊る。アマテラスの「檻」のシステムロックが、「論理の嵐」によってこじ開けられた、わずかな時間を突く。
「——『穢れ』が、アマテラス様の『器』に触れるか」
「論理の嵐」の余波を振り払い、体勢を立て直したミカゲが、玲の背後に迫っていた。
その「虚無」の刃が、今度こそ玲の「魂」と、彼女が守ろうとする晶の「魂」を、同時に「祓う」ために振り上げられる。
警告! 侵入者ガ、生体ユニット(オリジン)ニ接触。
アマテラスの警備ドローンもまた、玲を「最優先排除対象」と定め、全火力を集中させた。
「(させるもんですか……!)」
玲は、ミカゲの斬撃とドローンの掃射に対し、守るように晶のポッドの前に立った。
そして、赤く輝き続ける「遺産(魂石)」を、自らの胸の前で強く握りしめる。
「(響いて……! 私たちの『声』で、この『虚無』と『論理』を、押し返して……!)」
玲の「意志」に応え、晶の「絶叫」と共鳴した「遺産(魂石)」が、眩い「ノイズの光」を放つ。
それは、渉や父が設計した「調律」の力ではない。
玲と晶、二人の「魂」が「生きている」と叫ぶ、純粋な「生命」の「壁」だった。
ドローンのレーザーが「ノイズの壁」に触れ、霧散する。
だが、ミカゲの「虚無」の刃は、その「壁」さえも「穢れ」として切り裂きながら、玲の目前へと迫る。
「(間に合って……!)」
「——切り離し(デタッチ)、完了!」
桜井の絶叫が響いた、その瞬間。
ミカゲの刃が、玲の「ノイズの壁」を完全に突破し、玲の喉元を捉えようとしていた。




