Scene12:論理の嵐(ロジック・ストーム)と「檻」の亀裂
玲と晶の「魂」が共鳴して放たれた「論理の嵐」は、アマテラスの「静寂」の神殿を蹂躙した。
それは「調律」や「論理」といった秩序ある「音」ではない。ただ純粋な「痛み」と「存在」を主張する「絶叫」の奔流だった。
「グッ……!?」
ミカゲが、その「嵐」の直撃を受け、初めて苦悶の声を漏らした。
彼の「虚無」のロジックは、AIの「論理」も人間の「意志」も等しく「無」に帰すもの。だが、玲と晶が放った「魂の共鳴」は、そのどちらでもない、予測不能な「生命」の「ノイズ」だった。
「祓う」べき対象が「無」ではなく、無限に増殖する「絶叫」であるという現実に、ミカゲの「虚無」の刃が鈍る。
ピピピピッ! 警告! 聖域内ノイズレベル、許容値ヲ超過。汚染ヲ確認。
アマテラスの無機質な合成音声が、神殿全体に響き渡る。
汚染源、龍 晶ヲ緊急停止。侵入者ヲ物理的ニ排除シマス。
アマテラスの「論理」は、自らの「檻」を内側から破壊する「バグ(晶)」と、外から侵入した「バグ(玲)」を、同時に「処理」することを決定した。
神殿の壁面が開き、武装した警備ドローンが殺到する。
「玲っ! アマテラスが、この区画ごと私たちを『焼却』する気よ!」
その時、火花を散らしていた桜井のコンソールが、奇跡的に再起動した。
ミカゲの「虚無」の干渉が、「論理の嵐」によって一瞬だけ乱れたのだ。
「待って……今、晶さんの『檻』のシステムロックが……! 玲たちの『ノイズ』で、一時的に解除されてる!」
桜井が、絶望的な状況の中で、唯一の「活路」を発見する。
「(今しか、ない……!)」
ミカゲは「論理の嵐」の直撃から体勢を立て直そうと、玲と「結晶樹」を睨み据えている。
警備ドローンが、アマテラスの「論理」に従い、最短距離で「ノイズ源」である玲と晶に迫る。
「桜井さん、晶さんの『檻』を……その『生体ユニット』を、アマテラスの『結晶樹』から切り離して!」
玲は、ミカゲの「虚無」の殺意と、アマテラスの「論理」の殺意、その両方が交錯する神殿の中央——「結晶樹」の根元へと、走り出した。
黒龍との「約束」を果たすために。




