Scene11:共鳴する「絶叫(ノイズ)」
『——————!!!』
晶の「絶叫」は、アマテラスの「静寂」の論理を内側から引き裂く「バグ」そのものだった。
神殿の青白い光が、警報を示す赤色へと完全に切り替わり、耳障りなアラート音が鳴り響く。アマテラスの「完璧な静寂」が、初めて破られた瞬間だった。
「(黒龍さんの、妹さんの『声』……!)」
玲は、その「絶叫」に込められた、AIの「檻」に囚われた魂の「痛み」と「絶望」を、自らの「魂」で感じ取っていた。
「……アマテラス様の『調和』を乱す、最大の『穢れ』。万死に値する」
ミカゲの冷たい怒りが、今や玲ではなく、神殿中央の「結晶樹」——龍 晶——へと向けられた。
彼は、アマテラスの「聖域」の秩序を取り戻すため、その「ノイズ」の発生源を「祓う」ことを決断する。
シュッ——。
ミカゲが、玲には認識できなかった「アンチ・クォンタム」の斬撃ではなく、物理的な「破壊」のために、ゆっくりと刀を抜き放つ。
あの「虚無」の刃が、晶に向けられる。
「(ダメ……!)」
玲は、黒龍の顔を思い出していた。
『妹を救う』——その一つの「意志」だけで、AIの「論理」さえ破壊してきた男。
その「約束」を、ここで破らせるわけにはいかない。
「(歌わなきゃ……!)」
だが、「遺産(魂石)」はミカゲに「祓われ」、「響き」を失ったままだ。
玲の「調律」の「歌」は、アマテラスの「静寂」とミカゲの「虚無」に閉ざされ、声にならない。
それでも。
「(聴こえる……!)」
「遺産」の「響き」は失われても、玲自身の「魂」が、晶の「絶叫」に「共鳴」している。
「調律」ではない。
同じ「痛み」を共有する、ただの「魂」の「叫び」として。
「(晶さん……! あなたの『声』は、独りじゃない……!)」
玲は、ミカゲの「虚無」の刃先が晶を捉えるその刹那、自らの「魂」のすべてを絞り出し、晶の「ノイズ」に応えて「叫んだ」。
その瞬間だった。
玲の手の中で「死んだ」はずの「遺産(魂石)」が、閃光を放った。
ミカゲに「祓われた」はずの、渉と父の「論理」ではない。
玲の「意志」と、晶の「絶叫」——二つの「魂」が「共鳴」したことで、魂石そのものが「再起動」したのだ。
それは、新しい「響き」。
「調律」のための「歌」ではなく、「破壊」のための「不協和音」。
「な……!?」
ミカゲが、初めて「予測不能」な「ノイズ」の発生に目を見開く。
玲が放った「共鳴の絶叫」は、晶の「絶叫」と絡み合い、増幅され、アマテラスの「聖域」全域を揺るがす「論理の嵐」となって、ミカゲに襲いかかった。




